【R18】白い結婚2年目に白ネコになったら、冷血王と噂の旦那様との溺愛生活がはじまりました

おうぎまちこ(あきたこまち)

文字の大きさ
7 / 18

4回表 sideユリア

しおりを挟む



 ヴァレンス様に連れられてから数日が経った。
 白猫姿のまま戻ることが出来なくなった私はと言えば、彼の部屋で暮らすことになった。
 王妃ユリアの失踪は表立っては隠されていて、諜報部の人間たちで捜索活動がおこなわれている状態だ。

(人間のユリアがいなくなっても、ヴァレンス様はヴァレンス様のまま……いなくなった当日、少し焦られていたような気がするけれども、それきりではある)

 そこはちょっぴり寂しいけれども……。

 それ以上に、白猫ユリアは幸福感で胸いっぱいだった。
 なぜならば、ヴァレンスが彼女にとっても優しいからだ。
 
(ヴァレンス様はネコのお世話がとっても得意でいらっしゃるわ。冷酷王という噂が嘘のようにネコの私に対して、とってもお優しい)

 部屋に帰るとすぐに、お昼寝用にのクッションやハンモック、水飲み場に爪とぎや隠れ場所にトイレなどなどを手配してくださった。
 いつもは暗いカーテンで窓を閉め切っているそうなのだが、明るい色のものに取り変えてくださったりもしたのだ。
 しかも、上質な布で出来た愛らしい魚の姿のを準備してくださったりもした。

 人間の食事だと濃すぎたり危険だからと、専用の食事を三食準備してもらえる。
 毛づくろいやブラッシングといったグルーミングを毎日してもらいながら、頭や顎をなでなでさせられると、思わずお腹を出してごろんと寝転がってしまったりもした。

(あとは、特に好きなのは……)

 元々低い声のヴァレンス様が少しだけ高い口調で声をかけてくるのが、意外だったし大人の男性なのに可愛らしくって、胸がきゅうっと疼くのだ。

(ネコの姿のままなのは気になるけれど、こんなに幸せで良いのかしら……?)

「にゃあ、にゃあん……(やっぱり、ヴァレンス様はネコが本当に好きでいらっしゃるのね……)」

 嫁いできて以来、どう彼に接して良いかわからなかった私は、王妃の部屋からネコと戯れる姿を見て、すごく驚いたのを覚えている。

(だからいっそネコになりたいと思っていたけれど……)

 今までのヴァレンスのことを振り返る。

(夫婦の営みこそないけれど……人間だった頃だって、ちゃんと三食準備してくださったし、見たこともないような美しい調度やドレスに装飾品を準備してくださっていたし、式典の際には妻として立ててくださっていた)

 ――今にして思えば、とても大事にしてくれていたような気がするのだ。

 ネコから人間の姿に戻ることが出来るのか、現時点では分からないが……。

(戻れたのなら、ちゃんと勇気を出してヴァレンス様に事情を聞いてみたい)

 この数日、ネコの姿で暮らしてきて、そんな前向きな気持ちになってきていたのだ。

 夜、部屋の中でゴロゴロしていると、ヴァレンス様が帰室してくる。

「ユリア、どうだ、不都合はないか?」

「にゃあん(大丈夫です)」

「そうか、それなら良かった」

 ふっとヴァレンスがこちらを見て微笑んできた。

(まるで私の言葉が分かっているみたい……)

 もう彼は寝間着に着替えていて、少し歩いた先にあるベッドの上に腰かけた。
 てててと彼に近づいて、すりすりとピンクの鼻先で少しだけざらついた頬に触れてみる。

「にゃにゃにゃ、なあん(ヴァレンス様……好き)」

 すっかりネコになりきってしまっていた私は、思わず相手に告白してペロリと相手の唇の端をなめてしまった。
 相手からの反応がない。

「にゃ……?」

 そこではっとする。

(私ったらネコ姿だからって、なんて大胆なことを……!)

 恥ずかしがっていると、なぜか目の前のヴァレンスも顔を真っ赤にして固まっているではないか――。

 わたわたしていた、その時――。

「にゃ?」

 一瞬、心なしかヴァレンス様の御姿が歪んで見えた気がする。

(気のせい? それとも自分に何かが起こっているのだろうか?)

 ヴァレンス様も一瞬目を真ん丸に開いていた。だが、咳ばらいをしたかと思うと――。

「ユリア……俺も……その……」

 だが、すぐに彼がごろんと横になった。

(機嫌を損ねてしまったかしら?)

 そんなことを思っていると――。


「ユリア……ほら、こちらにおいで」


 彼が片腕を差し出して、私を手招く。

(腕枕……!)

 じーんと感動しながら、私は彼の筋肉質な腕の上に寝転んだ。

「ユリア、良い夢を……」

(ああ、なんて幸せなの……)

 ――部屋の中に開かずの間がなぜかあるのは気になるけれど、それすらどうでも良いぐらいに、とってもとっても幸せな心地で眠りに就くことができたのだった。



***


 翌朝。
 日中の真っ白な光で目が眩みそうだ。
 ぽかぽかした中、ひなたぼっこをしていると、心がほっこり温かくなっていく。

(やっぱり目の前が歪むような気がする……?)

 そんな中――。

(あれは……ヴァレンス様!!)

 目の前に夫の姿を見て、気分が一気に高揚する。

 嬉しくなって茂みから飛び出そうとしたけれども――。


「まだ事を成していないのか?」

 彼の目の前には――妖艶な黒髪長髪の人物が立っていた。

(……ヴァレンス様と噂の公爵令嬢……?)

 ――ズキンと胸が痛む。

「早くしないと……時間がないぞ……お前がその調子では私も心配でしょうがない……」

「ああ、あなたが心配するようなことは何もない。安心してほしい。ちゃんとユリアの件に関してはカタをつけるつもりだ――だが、俺からユリアに口づけることはないだろう――なぜなら……」

 苦悩に満ちた表情を浮かべたヴァレンスのセリフを聞いてしまい、胸がズキンと痛んだ。
 それ以上の彼の言葉が頭に入ってこない。

(あ……)

 うるうると目の前が潤んでくる。

(ヴァレンス様は私にキスをしたいとは思われないのね……やはり女性としては愛せないということなのね……)

 ――こうなったらもう一生ネコの姿のままでいて私はペットとして飼われたまま過ごしていたい。

 そうして、正妃には公爵令嬢になってもらって……。

(だけど……ヴァレンス様が私以外の女性に腕枕をしたりするのは……)

 なんだか切ない気持ちになって、私が茂みでまごついていると、さっと影が差す。

(何……?)


「にゃあんっ……!」


 体の上に何か重みを感じる。


「にゃにゃにゃにゃん」


 なんと――いつもヴァレンス様と一緒に見かける黒いネコに白猫の私は組み伏せられてしまったのだった――!!


しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

夫が運命の番と出会いました

重田いの
恋愛
幼馴染のいいなづけとして育ってきた銀狼族の族長エーリヒと、妻ローゼマリー。 だがエーリヒに運命の番が現れたことにより、二人は離別する。 しかし二年後、修道院に暮らすローゼマリーの元へエーリヒが現れ――!?

側妃は捨てられましたので

なか
恋愛
「この国に側妃など要らないのではないか?」 現王、ランドルフが呟いた言葉。 周囲の人間は内心に怒りを抱きつつ、聞き耳を立てる。 ランドルフは、彼のために人生を捧げて王妃となったクリスティーナ妃を側妃に変え。 別の女性を正妃として迎え入れた。 裏切りに近い行為は彼女の心を確かに傷付け、癒えてもいない内に廃妃にすると宣言したのだ。 あまりの横暴、人道を無視した非道な行い。 だが、彼を止める事は誰にも出来ず。 廃妃となった事実を知らされたクリスティーナは、涙で瞳を潤ませながら「分かりました」とだけ答えた。 王妃として教育を受けて、側妃にされ 廃妃となった彼女。 その半生をランドルフのために捧げ、彼のために献身した事実さえも軽んじられる。 実の両親さえ……彼女を慰めてくれずに『捨てられた女性に価値はない』と非難した。 それらの行為に……彼女の心が吹っ切れた。 屋敷を飛び出し、一人で生きていく事を選択した。 ただコソコソと身を隠すつもりはない。 私を軽んじて。 捨てた彼らに自身の価値を示すため。 捨てられたのは、どちらか……。 後悔するのはどちらかを示すために。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。

下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。 またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。 あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。 ご都合主義の多分ハッピーエンド? 小説家になろう様でも投稿しています。

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

処理中です...