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第10話 見られていた※
しおりを挟む「ここですわ、エルフの村の民達よ! わたくしの婚約者であるグラムを騙し、ハーフエルフの売女シレーナが、人間の海賊を小屋に連れ込んでいるのを見たのですわ――!」
甲高いカエルの鳴き声のような女性の声が、小屋の外から聴こえる。
小屋の中にいたシレーナとガウェインの二人に緊張が走ったのだった。
「ガウェイン……!」
ハーフエルフの少女シレーナは、ベッドの隣に座る――藍色の髪の青年ガウェインの姿を見やる。
彼の黄金の瞳が、光を宿した。
「シレーナ、あの女は知り合いか――?」
シレーナは首を縦に振った後、口でぱくぱくと伝えた。
(あの女性は、実質的な島の支配者出るフロッシュ様の一人娘であるラーナ様……)
ラーナは、父親に似てカエルのような顔をした女性である。
黒髪を豪奢な巻髪にしているのが特徴的な女性だ。
(たぶんグラムの幼馴染だからだし、ラーナ様が聖女様だからだろうけど――魔女である私のことを、ひどく嫌っていた……)
彼女にされた様々な嫌がらせ――くだらないものから、命にかかわりそうなものまで、色々な嫌がらせをシレーナは受けてきた。
しかし、だんだんと心を閉ざしていったシレーナは、そんな嫌がらせにも慣れていってしまっていたのだった。
(どうして、ラーナ様に見つかってしまったの?)
胸に両手を当て、シレーナは困惑していた。
「シレーナ。お前に嫌がらせを働いてきていたやつだろう? 外に出た時に、誰かに見られているような気配はなかった――」
(じゃあ、もしかして――ラーナ様が私を貶めるための嫌がらせ――?)
シレーナは黄金の瞳を真ん丸に見開いた。
彼女の考えを正確に読みとったガウェインは頷く。
「お前の考えている通り、ラーナとかいう女の思い付きの可能性が高いな――ひとまず、俺たちは隠れるぞ――モモ――」
そういって、ガウェインと飼いモモンガのモモは、暖炉の中へと身を潜めた。
ちょうどその時、エルフの民達がいっせいに山小屋の中に入ってくる。
小屋の主であるシレーナの許可なく、彼らは狭い室内の捜索をおこないはじめた。
(ガウェインのことがバレそうなものはなかったはず――)
そんなことを思っていると――。
「ラーナ様! いったい、何をなさっているのです!」
――エルフの美青年――金の長い髪に鼻筋の通った端正な顔立ちの青年――グラムが現れた。
「あら? グラムったら、わたくしに会いに来たのですか?」
嬉々とした甲高い声で、ラーナは婚約者の名を呼んだ。
「シレーナが人間の海賊を連れ込んでいないことは、私が調べたはずです。私のことが信用できないのですか、ラーナ様――」
すると、グラムの均整のとれた体に、ラーナは寄りかかる。
「グラムがそういうのでしたら――魔女であるシレーナが、よく貴方にちょっかいをかけるでしょう? わたくしは、それがすごく嫌なのです――彼女のように、人の婚約者にも色目をつかうような女なら、海賊の男を引き連れていてもおかしくはないなと思ったのでしてよ――」
やはり、ラーナは嘘をでっちあげて、シレーナに嫌がらせをしようとしていたようだった。
「……その、ラーナ様……前も言いましたが、シレーナに対しては何も思っていませんから――」
そういうグラムの表情はないに等しく、拳はぎゅっと強く握られていた。
(グラム……?)
彼は顔を上げると――わなわなと震えながら、シレーナに向かって声をかける。
「シレーナ……疑われるような行動は慎むべきだ――」
一言そういうと、彼はラーナと共に、姿を消したのだった。
静かになった山小屋の中――もう、エルフの民達も遠ざかっただろう頃合を見計らって、暖炉に隠れていたガウェインとモモが姿を現す。
「あのグラムとかいう男――窮屈な男だな――規律や規範、そういったものに縛られて、自分の本心を抑えつけて生きているようだ――俺とは、話が合いそうにない――」
(確かに、グラムは真面目だからガウェインとは合わないかも――? ガウェインも真面目だけど、本人にこだわりがあるところだけ真面目な感じがする――それ以外は、なんだか自由に私の身体を触ってきたりするし――う~~ん、人間流の挨拶なのかしら?)
シレーナの人間への勘違いは進んだ。
ぽつりとガウェインは呟く。
「しかし――女の好みは似ているかもしれないな――」
きょとんとする彼女を見て、ガウェインは不敵な笑みを浮かべた。
(は――! 小屋の中を荒らされたから、片づけなくちゃ――!)
突然思いついた彼女はガウェインに背を向け、ベッドの上に乗り上げて、シーツを綺麗にしようと試みる。
白いシーツのしわを伸ばそうとした、その時――。
「きゃっ……!」
後ろ手に、彼女の乳房が、彼の大きな手に覆われたのだった。
そのまま、彼の両手がぐにぐにと蠢く。
「あっ……はっ……あっ……あ……」
「シレーナ――」
首筋にガウェインの吐息がかかり、シレーナの身体はびくびくと反応する。
「ゃあっ……ガウェイン……あっ……あっ……」
手に力が入らなくなり、作業を中断されてしまった。
シレーナは声を上げ続けるだけになる。
「シレーナ――やはり無理を強いてでも、お前を島の外に連れ出すしかないな――あのエルフの男の元に、お前を置いてはおけない――」
ドレス越しに、乳首をくにくにと弄られ、シレーナは投げ出した脚をもじもじさせた。
「んっ……ガウェイン……あっ……んっ……」
「もうこんなに硬くなって――だいぶ厭らしい体になってしまったな――」
なんだか恥ずかしくて、シレーナの顔は林檎のように真っ赤になっていく。
彼の両手が乳房を離れ、彼女のスカートをたくしあげる。
シレーナとガウェインの元に、彼女の長くて白い脚が顕わになった。
そうして、彼が彼女の下着を膝まで降ろすと、長い指を狭穴に差し込んだ。
「やぁっ……んっ……あっ……」
彼の指が巧みに動き、彼女の膣内を弄る。
自身の脚の間で、彼の指が動くところを見て、シレーナの羞恥心は一気に煽られてしまった。
(やだ……すごく恥ずかしい……)
ガウェインの逞しい胸板が背に当たって、彼女はますますドキドキしてしまう。
彼の親指が、彼女のすでに硬くなっている芽を何度も何度も擦り上げてきて――。
「ああっ――――」
――シレーナは容易に達してしまった。
はあはあと息をする彼女の顎を、ガウェインの手が掴む。
そうして、後ろを向かされたシレーナの唇に、彼の唇がゆっくりと重なり、離れた。
「シレーナ……このままお前と二人で過ごせたら、とても幸せなんだろうがな――」
「ガウェイン……」
そうして、また二人は唇を重ね合わせる――。
閉ざされた島で、ガウェインとシレーナは、互いに離れがたい存在になっているのだった。
※※※
そんな二人を遠くから見ている者がひとり――。
「シレーナ……そんな……」
エルフの青年の心は黒く塗りつぶされていく。
「……本当に、人間の男を連れ込んでいたなんて――それに、そんな――」
身体をいじられ、頬を染め、人間の男と口づけを何度も交わす彼女の姿は、まるで彼の知らない――女性の顔をしていた。
「シレーナは、私と――僕と――」
混乱する彼の顔色は、徐々に失われていく。
「私はエルフの民のために――だけど――本当は、子どもの頃から君と――」
男は何かに気づいた様子をみせた。
「ああ、そうか、最初から、私は――」
建前と本音に挟まれ葛藤する男は――幽鬼のごとく、ゆらゆらと自身の村へと帰っていったのだった――。
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