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内裏(※天皇の居住空間)に到着すると、朝霧が竜の姿から人の姿に戻った。
紫宸殿(※内裏の正殿)を抜けた先にある仁寿殿(※内裏の後殿)のさらに先――後宮にある常寧殿(※当初は皇后御所として建てられた殿舎)へと向かう。
その一室にある室内には生家とは違って煌びやかな調度たちが並んでおり、まるで夢の中にでも彷徨いこんだような気持ちになる。御帳台(※貴人の寝所)の中、褥の上に私はそっと座らされた。
竜から人に戻って裸のままだった朝霧は、近くに置いていた単衣に袖を通す。
「朝霧は、本当の本当に帝なのですね」
「そやで。まあ、俺は縁戚の春宮が帝になるまでの繋ぎやから、あいつが成人したら上皇になって、元々住んでた神社に戻って守護竜になる予定やけどね」
「そうなのですね」
「市井には知らせてないけども、この国は表は帝、裏は竜が支配してるんよ。昔の皇族たちがね、兄弟でそれぞれ分かれたんや。それで、俺は裏の方の血筋なんや。竜になれる裏の一族」
「そんなことが……」
朝霧が謎に包まれた今上帝だったというのは理解した。
そうして、本来は国の鎮護のための守護竜としての役割を持っているということも。
「そうそうほいでな、先代の白竜様が嫁さんと平和に暮らしたい言うて――ああ、俺の祖父母になるんやけどね――そこで俺が次代の守護竜になって神社を守るつもりやったんやけど、叔父貴たちに呼び戻されてしもうて、こないな目に遭うとるんよ。帝とか窮屈すぎて疲れてしゃあないわ……早うあんたを連れて故郷に戻りたい」
そんな風に胡坐をかいて天井を眺める朝霧は、とても偉そうな帝には見えなくて、思わずクスリと笑ってしまった。
ふと褥の上に正座していた私の両手を朝霧が掴んできた。
「ああ、寒空を飛んできたから冷とうなっとる」
最初に私がしてやったように、彼が私の手に息を吹きかけてくれて温めようとしてくれた。
そうして――
黄金の瞳で見つめられる。
「俺がこんな身の上やって知っとるさかい、妻を迎えてもそんなに色々は言われへん、どうやろう、あんたの気持ちだけが大事なんや。新月の夜に竜になったりしてまうけど、改めて俺の妻にはならへんか?」
しばらく相手に眼差しを送る。
「窮屈なのは好きじゃないのです」
「自由気ままにしてくれてかまへんから」
「でも遊んで暮らすのではなく何かの役に立ちたいです」
「俺の政務に意見してえや、女性の意見おもろいのが多いやん」
「妻は本当に私以外にはいませんか?」
「おらへんよ―ーあんた以外を娶る気にはならへんからな」
そこまで聞くとなんだか胸がときめいてきて――私は朝霧に向かって笑顔で返した。
「でしたら喜んで!」
「よっしゃあ、ありがとな!」
わりと怠惰な仕草が多い朝霧だったが、勢いよく私を抱きしめてきた。
(すごく嬉しそう……!)
抱きしめてくる強さがあまりにも強くて、心臓がドキドキして落ち着かない。
「さっそく――この間の続きをしてもええやろうか?」
真剣な眼差しで告げられるとドキドキして落ち着かない。
頬が赤くなるのを感じながらコクコクと頷いた。
すると、彼の手が帯に伸びてくる。
(あ……)
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