【R18】使用人令嬢は堅物騎士団長に不器用に愛される 〜王太子殿下が義妹じゃなくて私を専属メイドとして契約するって本気ですか!?〜

おうぎまちこ(あきたこまち)

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第1章 残酷非道な騎士団長との出会い

第1話 蒼き月の下で出会う④

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 十五年前、イリスの実母ナターシャはラシーヌ侯爵と再婚した。侯爵には前妻との間に一人娘がいて、それがパンセだった。両親の再婚は、イリスとパンセが本当に小さい頃の話で、物心ついた時には仲睦まじい家族として一緒に過ごしていた。
 ナターシャは大層見目麗しく慈愛に満ちた女性であり、義父ラシーヌ侯爵は片時もそばから離さないといわんばかりに愛していた。

『しょうらい、おとうさまとおかあさまのように、なかのよい、ふうふになりたいわ』

『そうね、イリスねえさま』

 イリスとパンセも実の姉妹のように仲良く暮らしていたのだ。
 けれども――
 ある日、子どもの自分たちにとっては大事件が起きてしまう。
 きっかけは父母の大喧嘩。

『我が故郷シュトラール王国と我が国オセアン王国との国交が回復しました。どうか一度だけで良いので、生家に帰らせてください』

 それまで優しかったはずの父ラシーヌ侯爵だったが、妻であるナターシャの懇願を聞いて豹変した。

『故郷に帰るだと!? 前の夫の元へと帰るつもりか!?』

 母ナターシャは「それは違う」と説明したのだが、父は聞く耳を持たなかった。
 それ以来、母は屋敷の出入りを禁じられてしまった。敷地内では自由に過ごせたが、半ば軟禁状態と言っても差し支えない扱いを受けることとなったのだ。
 それに伴って、父の義娘イリスへの態度も一変した。ナターシャの前夫に似ているからといって、目の敵にするようになったのだ。

『イリス、母親のナターシャに全く似ていない……よほど父親に似ているのだろう。忌々しいやつだ。お前は儂の娘などではない』

 ラシーヌ侯爵は、実娘パンセと義娘イリスとで態度を一変させるようになったのだ。
 挙句の果てに、『どうしてもイリスを屋敷で育てたいというのなら、使用人としてなら置くのを許してやる』とまで宣ってきた。
 幼いイリスは、母ナターシャが嘆き悲しむ姿を見るのが辛かった。

『お母様、イリスは屋敷のお手伝いをするのは大好きです、だから、大丈夫ですから』

 こうして、まだ幼かったイリスは、ラシーヌ侯爵の義娘という立場にありながら、使用人としての暮らしを強いられることとなったのだ。


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