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Ⅲ
しおりを挟むそれを見たのは本当に偶然であった。
図書館を出て、いつもどおり自室へと戻ろうとしたとき、ふと庭園が見えたのでよってみようと思った。
庭園へ入ろうとすると誰かの話し声が聞こえて、そっと覗いてみることにした。
「はは、そうなのか?」
「そうですよ?でも私のほうが得意なんですから!」
「そんなに必死に言わなくても、ミリィがそうなのは知ってるよ。」
くすくすと笑いながら男女が楽しそうに会話していた。
内容はよく聞こえなかったが、相当仲が深いことは伺えた。
私はそこで初めだ聞いたのだ。
ライナル様の笑う声を。
そこには私ではない女生徒に向かって見たこともない笑顔で微笑みかけているライナル様がいた。
ああ、そうか。
私は気づいてしまった。
ライナル様は私への好意があって贈り物をしてくれていたのではなく、婚約者の義務としてやっていたのだ。
お茶会もいつも私から伺っていたし、その間も会話することは殆どなかった。
ただいつも私の好みの花やプレゼントをしてくれていたことから私を見てくれていたのだと思っていた。
私は愛称で呼ばれたこともないのに。
よく考えれば私の好きなものなど調べなくても侍女が伝えているだろう。
ライナル様は用意されたプレゼントを私に渡していただけなのかもしれない。
そう思うと自分の自意識過剰ぶりが恥ずかしくなった。
お互いに会話などなくても想い合えるなんてとんだ勘違いだ。
私だけがそう思っていて、ライナル様ははじめから私を話したくないほど嫌悪していたのだ。
彼の優しさであのお茶会、ましてや婚約は成り立っていたのか。
いても立ってもいられず私はその場を逃げるようにあとにした。
彼が見ていることにも気づかず。
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