王太子から婚約者のフリを頼まれたが、本当は溺愛されてました。

ゆいまる

文字の大きさ
9 / 59
本編

9



それから、いくつかの重要施設を案内してもらった。

その中でわかったのは、王宮内は色々な国の伝統を受け継いでつくられていることが多いことだった。
ルークによると、かつての王族は様々な国から妃を娶っていたので、その時の妃が過ごしやすいようにつくられているそうだ。
より多くの国の伝統を受け継ぐことで、他国からの賓客も喜ばれるそうだ。
また、そこから新しいビジネスが始まることも少なくないらしい。

初めての王宮はとても興味深かった。
ただ、案内されるときに多くの人とすれ違う際、なぜか私を紹介してくださるのが不思議だった。
私とは一時だけの関係のはずなのに…

「すごく勉強になりました。けど仮初の婚約者なのにここまで内情を知っていてもよろしいのですか?それに私のことはあまり広まらないほうがよろしいのでは…」

「ああ、今後王宮に来ることも多くなると思うからむしろ知っておいてほしい。何かあったときも顔がわかると対応しやすいしね。」

なるほど。確かに私の顔がわかっていたほうが、もし何かあったときルークに繋げることができる。

「わかりました。お気遣いありがとうございます。」


ルークは曖昧な顔をして微笑む。
少しずつ、けれど着実に外堀を埋められているのだが、チュリが気づくことはなかった。

「じゃあ、お待ちかねの厨房へいこうか。」

「!!!はいっ!」

王宮も興味深かったが、チュリの一番の目的は料理である。

どんな料理が私を待っているのだろう…
わくわくが止まらないチュリであった。

「ついたよ。」

「わぁ…」

王宮の厨房なだけあってチュリの家の厨房の数倍の広さだった。

「ロン。こちらがリーヴェン侯爵令嬢で私の婚約者のチュリだ。チュリ、こちらはうちの料理長を努めているロンだ。」

「はじめまして。チュリ・リーヴェンです。宜しくお願い致します。」

「ご丁寧にありがとう御座います、チュリ様。ロンと申します。厨房に来たときは何なりとお申し付けください。」

一通り挨拶が済み、ルークが話す。

「ロン、頼んでおいたものを。」

「かしこまりました。ただいま。」

そう言ってロンが持ってきたのは、まだ見たことがない異国の料理。

茶色くてドロドロした液体の中に野菜や肉がゴロゴロと入っていた。
初めて見る料理に驚いていると、

「こちらは南西から伝わって来たルゥと言うものに野菜と肉を入れて煮込んだものです。パンと合わせて食べられると美味しいです。どうぞ」

一般的にはこんなドロドロした液体など好んで食す人はいないでしょう。
だから私が選ばれたのね。
見た目がどんなに食べれるものじゃなくても一度は口にしてみたいと思うもの。

「いただきます。…!!これはすごく辛味が聞いてて、でもお野菜が甘くてとても美味しいわ!!」

「っ!!ありがとうございます!」

「これはロンの創作なんだ。何も言わず食べてくれたのはチュリが初めてだよ。」

「まあ、こんな美味しいものを見た目だけ判断して食べないだなんておかしいですわ。」

「ああ、そうだね。チュリはやっぱり素敵な人だ。」

そう言ってルークは目を細める。

「?」


話が噛み合ってないと思うが、チュリは目の前にある食べ物に夢中でそこまで考えることができなかった。



感想 23

あなたにおすすめの小説

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

夫が運命の番と出会いました

重田いの
恋愛
幼馴染のいいなづけとして育ってきた銀狼族の族長エーリヒと、妻ローゼマリー。 だがエーリヒに運命の番が現れたことにより、二人は離別する。 しかし二年後、修道院に暮らすローゼマリーの元へエーリヒが現れ――!?

もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります> 政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

 怒らせてはいけない人々 ~雉も鳴かずば撃たれまいに~

美袋和仁
恋愛
 ある夜、一人の少女が婚約を解消された。根も葉もない噂による冤罪だが、事を荒立てたくない彼女は従容として婚約解消される。  しかしその背後で爆音が轟き、一人の男性が姿を見せた。彼は少女の父親。  怒らせてはならない人々に繋がる少女の婚約解消が、思わぬ展開を導きだす。  なんとなくの一気書き。御笑覧下さると幸いです。

【完結】「元カノが忘れられないんでしょう?」と身を引いた瞬間、爽やか彼氏の執着スイッチが入りました

恋せよ恋
恋愛
「元カノが忘れられないなら、私が身を引くわくべきよね」 交際一周年、愛するザックに告げた決別の言葉。 でも、彼は悲しむどころか、見たこともない 暗い瞳で私を追い詰めた。 「僕を捨てる? 逃げられると思っているの、アン」 私の知る爽やかな王子の仮面が剥がれ落ち、 隠されていた狂おしいほどの独占欲が牙を剥く。 🔶登場人物・設定は筆者の創作によるものです。 🔶不快に感じられる表現がありましたらお詫び申し上げます。 🔶誤字脱字・文の調整は、投稿後にも随時行います。 🔶今後もこの世界観で物語を続けてまいります。 🔶 『エール📣』『いいね❤️』励みになります!

婚約者は妹のような幼馴染みを何より大切にしているので、お飾り妻予定な令嬢は幸せになることを諦めた……はずでした。

待鳥園子
恋愛
伯爵令嬢アイリーンの婚約者であるセシルの隣には『妹のような幼馴染み』愛らしい容姿のデイジーが居て、身分差で結婚出来ない二人が結ばれるためのお飾り妻にされてしまうことが耐えられなかった。 そして、二人がふざけて婚姻届を書いている光景を見て、アイリーンは自分の我慢が限界に達そうとしているのを感じていた……のだけど!?