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本編
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しおりを挟むルークが家に来ることはお父様は知っていたみたい。
私を驚かせたくて黙っていたんですって。
ルークがお父様と話し終えたあと、私の部屋に来てもらった。
実はルークが私の部屋に来るのは初めてだ。
「チュリらしい、可愛らしい部屋だね。」
そう言ってくれた。
その後はソファに座って、お茶を楽しんだ。
ほぼ毎日顔を合わせているからそんなに話すことはないと思うが、今日のルークは少しおかしかった。
顔は笑っているけど心から笑っている感じがしない。
そしていきなり来ることも今までなかった。
「ルーク、何かあったの?」
「ん?どうして?」
「なんかに気を取られているような感じがしたから…。」
「チュリには隠し事はできないね。実はしばらく隣国に行くことになった。」
「え、どうして?」
「向こうの王子が婚約するそうなんだ。私は遊学していたときに少し仲良くなって、それで代表して私が行くことになった。」
隣国の王子もそういえば婚約者が長らく決まっていなかったなあ。
「それはおめでたいことですね。お気をつけていってらっしゃいませ。」
しばらく会えなくなるなあ、と思いながら話していると、
「…チュリ、一緒にきてくれる?」
「え?」
「私の婚約者なのだし、招待は受けているんだ。チュリさえ良ければ、私と一緒に行ってほしい。」
「も、もちろんです。一緒に行きます!」
ルークと一緒にいれるのは嬉しいし、何より初めて行く隣国に、どんな食べ物があるか期待してしまう。
「ありがとう。急なんだけど、出発は明後日になる。問題ない?」
私はルークとの結婚のための衣装合わせや周辺諸国への招待状を書くくらいで、やることは特にない。
「大丈夫です。あの、隣国に訪問した際は市場に行ってもよろしいのですか?」
「もちろん。視察も兼ねてるから、それが終われば少し旅行してから帰ろうか。」
「!!はいっ、ありがとうございます!」
「本当にチュリは食べ物に目がないね。妬けてしまうよ。」
クスクスと笑いながらルークは言う。
「私はルークのことが食べ物よりも大好きです。」
「…!困ったな。私の愛しい婚約者は私を誘惑するのが上手みたいだ。」
そう言って私を引き寄せキスをする。
「チュリ、わかってる?」
「…ぇ?」
キスをし終わったあと、ルークが私に問う。
「この旅行ではすべて私と同じ部屋だよ。離すつもりはない、いいね?」
「…はい。」
つまりはそういうことだろう。
とたんに恥ずかしくなってきて、俯いた。
「ふふ、それまでには覚悟しておいてね?」
覗き込むように話すから恥ずかしくて目をつぶったら、またキスをされた。
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