54 / 59
番外編
新しい命 【完】
王宮にて、うろうろと部屋を行ったり来たりしている人は、王太子であるルークだ。
チュリに陣痛が来てお産に入り、部屋の外で待つしかないのだ。
気になって気になって政務も行えないほどだ。
こういうとき男は何もできない生き物だと痛感する。
痛みを変わってあげられたらと思うが、難しい。
座っては立ち、彷徨いてからまた座り、その繰り返しで仕えている侍女もハラハラしている。
側近のエルが落ち着いてくださいと言っても、またすぐに戻ってしまって呆れている。
そんなやり取りをして数時間がたった頃、
部屋の中から産声が聞こえた。
バンッ!!!!
「チュリ!!!!!」
「王太子殿下、まだ中に入っては…」
静止を聞くことなく走っていく。
汗だくのチュリの腕の中には小さな生命が。
「ルーク、あなたに似た男の子です。ほら、」
「チュリ、ありがとう、お疲れ様。…ああ、チュリにも似てる。可愛いな。」
まだ二人の顔に似ているかもわからない赤ん坊を見て二人で笑う。
この子が幸せになれるような国をつくろう。
そしてこの子もまた国を守れるような子に育てよう。
そう誓い合う二人だった。
「リーク様!こちらにいらっしゃったのですね。さあ、お勉強のお時間ですよ。」
「お花を摘んでいたんだ!今日はお勉強のあと、かあさまがきてくれるの!」
「そうでしたね、ではお勉強頑張らないとですね。」
「うん!行こう!」
侍女と手を繋いで部屋に戻る。
家庭教師から勉強を教わる。
「リーク様は本当に飲み込みが早いです。さすがは王太子ご夫妻のお子様だ。」
「へへー。ありがとう。でももっともっといっぱい勉強して、父様と母様とこの国を守るんだ!だからいっぱい教えてね?」
「私の出来る限りすべてをお伝えしましょう。」
家庭教師も驚くような学力は両親譲り。
まだ、剣や体術は行っていないが、きっとそれも素晴らしいだろう。
もうすぐ4歳とは思えない頭の良さは、もはや天才としか言いようがない。
だが、自分の能力を過信せず、周りの力を借りつつ、しかし周りの言葉全てに左右されることもない信念を持っている。
そしてなにより、両親からの深い愛で素直で優しい子に育った。
城の誰もがこれからの未来の安定を信じてやまないだろう。
「リーク」
「あ、かあさま!!!」
「お勉強は終わりましたか?」
「はいっ!あ、かあさまにお花を摘んだんです!受け取っていただけますか?」
「もちろん。ありがとうリーク」
そして母親の前では普通の四歳児にみえ、思い切り甘えたい年頃だろう、抱っこをせがむ。
「リーク、母様は今抱っこができないから、代わりに私がしよう」
「とうさま!!!!」
そう言って部屋に入ってきたのは父親であるルークだった。
リークは思い切り抱きついて、ルークに抱き上げてもらう。
リークは忙しい両親が、自分のために時間をつくってくれているのを知っている。
そんな両親を尊敬し、大好きなのである。
「チュリ、きみはソファに座ろう。ほら、リーク、母様をソファに連れてってくれ。」
「はい!お手をどうぞ!!!」
「まあまあ、可愛い私の小さな騎士様、ありがとう。」
そう言ってソファに座る母親のチュリは、現在第三子を妊娠中だ。
第二子である王女はまだ2歳で、今はお昼寝中で乳母に任せている。
その間に我慢を覚えてきた息子を二人で可愛がるのが日課になっているのだ。
「あ!今動いた!」
「きっと早く会いたいと言っているのね。」
「私たちも早く会いたいな。次はリークが名前をつけようか。」
なんて三人でいつものようにお茶をしながら、今日あった出来事について話す。
そんな日常がこれからも続くように祈りながら。
あなたにおすすめの小説
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
【完結】病弱な妹に魔力を分け続け死ぬ寸前の私を、宮廷魔術師になった旧友が攫ってくれました。家族を捨てて幸せになっていいんですか?
未知香
恋愛
「あなたはもう十分楽しんだでしょう? 今度はミアーラの番よ」
膨大な魔力と知識を持ち、聖女候補とまで言われた、天才魔術師エリアーナ。
彼女は、病弱な妹ミアーラの為、家族に言われるまま自らの膨大な魔力を差し出すことにした。
「そうだ。私は健康で、今まで十分に楽しんできた。だから、あげるのは当然だ」
魔力を与え続けた結果、彼女は魔力を失い、容姿も衰え、社交界から姿を消してしまう事となった。
一方、妹ミアーラは姉から与えられた魔力を使い、聖女候補として称賛されるように。
家族の呪縛に縛られ、「今まで多くを貰いすぎていたのだ」と信じ、利用され続けるエリアーナ。
そんな彼女の前に現れたのは、かつての旧友であり宮廷魔術師となった青年だった。
ハッピーエンドです!
夫が運命の番と出会いました
重田いの
恋愛
幼馴染のいいなづけとして育ってきた銀狼族の族長エーリヒと、妻ローゼマリー。
だがエーリヒに運命の番が現れたことにより、二人は離別する。
しかし二年後、修道院に暮らすローゼマリーの元へエーリヒが現れ――!?
姉の方を所望していたと言った婚約者に、突然連れ帰られて気づいたら溺愛されています
もちもちほっぺ
恋愛
侯爵家の地下室に住み、姉の食べかけで飢えをしのぎ、婚約者には初対面で「老婆のようだ、姉の方がよかった」と言われた令嬢リリアーナ。
ある日その婚約者に問答無用で公爵邸に連れ帰られた。
庭の恵みを口にするたびに肌が輝き、髪が艶めき、体に力が満ちていく。首に巻いたお守りの秘密、十数年続く国の不作の真実、虐げられ続けた令嬢の出生の謎。
全てが明かされる時、地下室令嬢の逆転劇が始まる。
なお婚約者は今日も庭でグルメリポートを最後まで聞いている。
里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります>
政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています