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波乱の予感?3
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「――八咫(やた)…」
突然社長室に乱入してきた若い男性を見て
命が呟いた
「八咫…?――って、うわっ!」
「ん~…確かにコレやべーわ…」
椅子に座って命を見上げていた洋一の肩を
八咫と言われた男性が背後からガシッと掴むと
少しのけ反る形になった洋一に構わず、そのまま背後から屈む様にして
洋一の項や首筋の匂いを鼻先が着く勢いでスンスンと
まるで犬みたいに嗅いでくる
「ちょっ、止めてください…っ!くすぐった…、」
「――お前はココで何をしている…?八咫 雹(やた ひょう)…」
「うおっ?!」
命が夢中になって洋一の匂いを嗅ぐ雹の
プルオーバータイプのパーカーの襟首を片手でむんずと掴むと
そのまま後ろに引っ張る形で洋一から雹を強引に引き剥がした
「…っ、…これはこれは命様…お久しぶりでございます。」
「――何をしているのかと聞いている。」
命の表情があからさまに嫌悪に満ち
鋭い眼光で戯(おど)けた態度を取る雹を睨み付ける
「何って――俺も神代にちょっと用事が…
それより――」
雹が洋一を興味津々と言った感じに見つめ
微かに上唇を舐める
「何処で拾ってきたんです?その珍しいβ…」
「…人を犬猫拾ってきたみたいに言うな。
お前には関係無い事だ。無礼が過ぎるぞ八咫…」
命の雹を睨む視線に鋭さが増す
「これはとんだ失礼を…ところで――」
雹がもはやこの状況に怯えだしている洋一を値踏みするように眺めながら
とんでもない事を口走った
「幾ら出したらそのβ…譲ってくれる?」
「――ッ?!」
「お前まで……何だ?お前ら結託でもしているのか…?」
「結託だなんて…」
「そんなまさか…w」
3人のαの間に洋一を巡り、妙に殺気立った緊張が走る
そんな中、命が神代と雹を交互に見やりながら
この異様な雰囲気に、未だに席に座ったまま
その場から動けずにいた洋一の二の腕を掴み強引に椅子から立たせると
自分の背後に隠すように洋一を移動させ
2人の動向を伺いながら口を開いた
「――無礼な客人も訪れたようだし…
我々はもう、今日のところは帰らせていただく。行くぞ。2人共…」
「……は…はい…っ、」
「――かしこまりました。命様。」
命は洋一と佐伯を先にドアへと向かわせながら自分も後に続く
そこに背後から――
「命さん…先程の申し出――考えておいてください。」
「あ、俺のも~!」
「ッ、皆瀬は誰にもやらんっ!帰るぞっ!!」
命は背後に居る神代と雹の言葉に不快感を露(あら)わにしながら
2人に向かって吐き捨てると
最後に社長室ドアをバタンッ!と荒々しく閉じ、その場を後にした
命たちが去った社長室で――
「――なんだ…アンタ早速打診したのか…あのβをくれって鬼生道に。」
「…まあな。
しかしまさか同じ日にこのタイミングでお前まであのβを欲しがるとは
思いもしなかったがな…」
神代が呆れながら雹を見る
「だって…あの匂いはマズイって!
まさかあれほどだったとは――」
「…引き寄せられただろ?」
「ああ…アンタが言うようにあの匂いなら
Ωの発情フェロモンを上回ってるかもな…
でもだからって――アンタにしちゃあ…ちょっと早計だったんじゃない?
あのβを手に入れようとしたの…
これで完全に鬼生道は俺達を警戒しだすぞ…」
「…確かに早計だったかもな。
しかしあのβが鬼生道の傍に居たら計画が儘(まま)ならんのは確かだし
それに――」
「それに?」
「単純に私が欲しかっただけだ。皆瀬洋一を。」
「…アンタ冷静そうに見えて意外とそーゆーところあるもんな。なる程納得。」
雹は未だ微かに残る洋一の残り香に心奪われている神代を眺めながら
気づかれない様小さな溜息を吐いた…
一階へと降りていくエレベーター内にて
「さ…先程乱入されてきた方は…?命さん…ご存じだったようですけど…」
「ああ…ヤツは八咫 雹…古くから鬼生道と関わりのある名家の一つで次期当主だ。
それより皆瀬。」
「はい。」
「今すぐお前の引っ越しの準備をするぞ。」
「…はい?」
「お前を俺の住むマンションに移す。今日中に。」
「え…?は??待って下さい!そんな急に――」
「佐伯、今すぐ手の空いている者を皆瀬のマンッションに向かわせろ。
俺達も今から向かう。それと――」
「これからの予定は全てキャンセルですね?了解いたしました。」
戸惑う洋一を他所に、佐伯はスマホ片手に次々と命からの指示を的確に熟していく
「皆瀬。」
「はっ…はい…?」
「安心しろ。お前は誰にも渡さん。」
突然社長室に乱入してきた若い男性を見て
命が呟いた
「八咫…?――って、うわっ!」
「ん~…確かにコレやべーわ…」
椅子に座って命を見上げていた洋一の肩を
八咫と言われた男性が背後からガシッと掴むと
少しのけ反る形になった洋一に構わず、そのまま背後から屈む様にして
洋一の項や首筋の匂いを鼻先が着く勢いでスンスンと
まるで犬みたいに嗅いでくる
「ちょっ、止めてください…っ!くすぐった…、」
「――お前はココで何をしている…?八咫 雹(やた ひょう)…」
「うおっ?!」
命が夢中になって洋一の匂いを嗅ぐ雹の
プルオーバータイプのパーカーの襟首を片手でむんずと掴むと
そのまま後ろに引っ張る形で洋一から雹を強引に引き剥がした
「…っ、…これはこれは命様…お久しぶりでございます。」
「――何をしているのかと聞いている。」
命の表情があからさまに嫌悪に満ち
鋭い眼光で戯(おど)けた態度を取る雹を睨み付ける
「何って――俺も神代にちょっと用事が…
それより――」
雹が洋一を興味津々と言った感じに見つめ
微かに上唇を舐める
「何処で拾ってきたんです?その珍しいβ…」
「…人を犬猫拾ってきたみたいに言うな。
お前には関係無い事だ。無礼が過ぎるぞ八咫…」
命の雹を睨む視線に鋭さが増す
「これはとんだ失礼を…ところで――」
雹がもはやこの状況に怯えだしている洋一を値踏みするように眺めながら
とんでもない事を口走った
「幾ら出したらそのβ…譲ってくれる?」
「――ッ?!」
「お前まで……何だ?お前ら結託でもしているのか…?」
「結託だなんて…」
「そんなまさか…w」
3人のαの間に洋一を巡り、妙に殺気立った緊張が走る
そんな中、命が神代と雹を交互に見やりながら
この異様な雰囲気に、未だに席に座ったまま
その場から動けずにいた洋一の二の腕を掴み強引に椅子から立たせると
自分の背後に隠すように洋一を移動させ
2人の動向を伺いながら口を開いた
「――無礼な客人も訪れたようだし…
我々はもう、今日のところは帰らせていただく。行くぞ。2人共…」
「……は…はい…っ、」
「――かしこまりました。命様。」
命は洋一と佐伯を先にドアへと向かわせながら自分も後に続く
そこに背後から――
「命さん…先程の申し出――考えておいてください。」
「あ、俺のも~!」
「ッ、皆瀬は誰にもやらんっ!帰るぞっ!!」
命は背後に居る神代と雹の言葉に不快感を露(あら)わにしながら
2人に向かって吐き捨てると
最後に社長室ドアをバタンッ!と荒々しく閉じ、その場を後にした
命たちが去った社長室で――
「――なんだ…アンタ早速打診したのか…あのβをくれって鬼生道に。」
「…まあな。
しかしまさか同じ日にこのタイミングでお前まであのβを欲しがるとは
思いもしなかったがな…」
神代が呆れながら雹を見る
「だって…あの匂いはマズイって!
まさかあれほどだったとは――」
「…引き寄せられただろ?」
「ああ…アンタが言うようにあの匂いなら
Ωの発情フェロモンを上回ってるかもな…
でもだからって――アンタにしちゃあ…ちょっと早計だったんじゃない?
あのβを手に入れようとしたの…
これで完全に鬼生道は俺達を警戒しだすぞ…」
「…確かに早計だったかもな。
しかしあのβが鬼生道の傍に居たら計画が儘(まま)ならんのは確かだし
それに――」
「それに?」
「単純に私が欲しかっただけだ。皆瀬洋一を。」
「…アンタ冷静そうに見えて意外とそーゆーところあるもんな。なる程納得。」
雹は未だ微かに残る洋一の残り香に心奪われている神代を眺めながら
気づかれない様小さな溜息を吐いた…
一階へと降りていくエレベーター内にて
「さ…先程乱入されてきた方は…?命さん…ご存じだったようですけど…」
「ああ…ヤツは八咫 雹…古くから鬼生道と関わりのある名家の一つで次期当主だ。
それより皆瀬。」
「はい。」
「今すぐお前の引っ越しの準備をするぞ。」
「…はい?」
「お前を俺の住むマンションに移す。今日中に。」
「え…?は??待って下さい!そんな急に――」
「佐伯、今すぐ手の空いている者を皆瀬のマンッションに向かわせろ。
俺達も今から向かう。それと――」
「これからの予定は全てキャンセルですね?了解いたしました。」
戸惑う洋一を他所に、佐伯はスマホ片手に次々と命からの指示を的確に熟していく
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