βは蚊帳の外で咽び泣く

深淵歩く猫

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人から出された飲み物は――

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洋一が横山に連れられ、会場から少し離れたホテルの一室へと通される
そこには小さなバーカウンターなどが設置され
意外と広々とした造りになっており
洋一はフラつく足取りで横山に促されるまま、部屋の奥へと足を踏み入れる…

「ホラ、そこのソファーにかけなさい。」
「…すみません…」

横山は洋一をソファーに座る様促すと、バーカウンターで何やらゴソゴソと
大きな体を忙しなく動かしながら作業をしだす

「そう言えばコレは誰かに聞いた話なんだが――
 皆瀬くん、キミからは――αを惹きつける特殊な匂いがするんだって?」
「え…?あ…はい…そう…らしい…です…
 俺自身βなんで、一体どんな匂いなのかまでは分かりませんけど…」

洋一がソファーで項垂れながら片手で頭を押えていると
横山が手に琥珀色に輝くウィスキーの入ったグラスを二つ持ち
一つを洋一に差し出だしながら自分も洋一の隣に腰を下ろす

「…コレを飲むといい…少し落ち着くだろう…」
「あ…有難うございます…」

洋一が横山から差し出されたグラスを両手で受け取ると
グラス内で揺れる琥珀色の液体をボーっと眺める…

「…私もβだからキミからの匂いは分からないが――
 命さんといい…優秀なαを惹きつけるだなんて…実に羨ましい…」
「そう…でしょうか…?」
「そうだとも。優秀なαを捕まえる事が出来れば――
 会社だったらαの確保人数次第でいくらでも業績を伸ばす事が出来るし
 Ωだったらそれだけでもう、人生安泰だろうしな。」

ハッハッハッ!と横山が洋一の肩に手を回して豪快に隣で笑う

「はぁ…でも俺――βですし…」

洋一が俯きながらウィスキーを一口啜る

―――そう…俺はβで…しかも男だから…


『俺が嫌なんだ…
 お前が――他の誰かの目に触れるのが…』


―――ッ、だから…っ、俺が…命さんの想いに答える事は――

昨日、命が自分の瞳を真っ直ぐに見つめながら切なげに呟いた言葉を思いだし…
洋一が苦し気に眉を顰めると
グイッと手に持ったウィスキーを一気に飲み干す

「おおっ!良い飲みっぷりだねぇ~…どれ、もう一杯ついであげよう。
 …ところで――」

横山が洋一のグラスにウィスキーを注ぎ
何やら含みのある笑みをその口元に浮かべながら、静かに言葉を続ける

「巷(ちまた)では…
 αやβの身体を一時的にヒートを起こしたΩの様な状態にする薬が
 出回っているんだとか…」

マドラーでウィスキーを掻き回しながら、横山が洋一の方をチラリと見る
すると洋一はボーっとしたままほんのりと顔を赤く染め始め――

「そう…なんですか…?」

横山に一言返すのがやっとな感じで
息苦しそうにネクタイを片手で緩め始める…

「なんでもその薬は――
 最近魚のアマダイ科から発見された成分で出来ていているそうで…
 流石に子宮までは出来ないそうだが――
 アナルが女性器の様に濡れ始め…
 αやβの男でも、男を受け入れるのに適した身体に変えるんだとか…」

横山が肩を抱く洋一の身体をグッと自分の方へと引き寄せる…

「で、どうだい…?」 
「ッ、はっ、ぁ…?なにが…、ッ、です…?」

洋一がハァハァと苦し気に息を切らせ始め
急に火照り出した身体に戸惑いながら自分の肩を抱く横山の方を見つめる

「そろそろ――濡れてきたんじゃないのかな…?」
「…?」
「アナル。」
「―――――え?」

横山から出たその一言に洋一は絶句する

「いやぁ~…実はキミがさっき飲んだウィスキーに混ぜておいたんだよ…





 例の薬。」
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