107 / 128
依頼。
しおりを挟む
「…良い匂い?」
とある使われていない廃倉庫の一角…
月明かりが破れたトタン屋根から薄暗い倉庫内に帯状に降り注ぎ
幻想的な光景を作り出す中
二人の男が壁に寄り掛かりながら話を進める
「そ。コイツからはΩのフェロモンみたいに
αにしか分からない良い匂いがしやがるんだ…」
一人の男がうっとりと…スマホ画面を見つめながら話す
「どれくらい良い匂い?」
「さぁな。人によるだろう…ただ――」
「…」
「俺が感じた限りだと…Ωの発情フェロモンよりは良い匂いだったな…ありゃ。
誰かさんのマーキング臭さえ混ざってなけりゃ
あの場に居た俺以外のαも我先にとこのβに群がっていただろうよ…」
「…そんなに…?」
「ああ…」
―――どーりで…ヒートフェロモンでは無かったにしろ
僕のフェロモンの匂いを嗅いでも僕よりもあのβを選ぶわけだ…
小柄な男性が2メートル近い長身の男性から自分の渡したスマホを受け取ると
無意識に左手の親指の爪をカリカリと苛ただし気に噛む…
「…しっかし…お前が俺の所にくんのは邪魔者を排除して欲しい時とはいえ…
ま~さか今回の依頼がそのβくんだったとは…世の中は狭いなぁ~…
そー思わねぇか?なぁ…契…」
「そーだね、狼…まさかこのβをキミが知ってるなんて思いもよら無かったよ…」
契がスマホを手提げ鞄に仕舞いながら隣の男…狼を見上げる
「…で?今回はどーして欲しいんだ?そのβくんを…」
狼が持っていた缶ビールをグイッと煽りながら契に聞く
すると契はその美しい顔にゾッとするような薄い笑みを浮かべながら
薄い唇を開く
「…出来ればこの世から消して欲しいトコだけど――」
「俺は人殺しはしねーよ?」
「知ってるよ。だから…」
契が瞳をスッと細くしながら隣に立つ狼を見つめる
「…汚して欲しい。滅茶苦茶に…」
普段は凛とした美しさを誇る契の顔が
自分に依頼を頼むと時はまるで童話に出てくる魔女の様に歪む契の顔に
狼は「おっかねーなぁ…」と呟くと、また一口缶ビールを煽る
「ん~…それは無理なんじゃねーかな。」
「どーして?」
「俺もこのβくんとひと悶着起こした後、色々調べたんだよ。
このβくんと…βくん囲ってる“命さん”について…」
狼が空になった缶を投げ捨て
缶はカンッ!カラカラカラ…とコンクリートで覆われた地面を
妙に音を大きく響かせながら倉庫内を転がっていく…
「…なんでもこの命さんとやら…
この国有数の財閥の一つ、“鬼生道財閥”の御曹司さまらしーじゃねーか…
こんなヤツに囲われてるβくんに手を出す何て…
この間俺と偶然遭遇した時みたいに
何かしらの理由で一人でうろついてでもしてくれない限り
手ぇ出すのは不可能だって。
…何より――βくん囲ってる命さん自体つえーしな…」
狼が忌々し気にチッと舌打をしてその表情を歪ませる
「その点なら問題ないよ。」
「あ?何が…」
「もうじきこのβは――命さんの傍に居られなくなる。」
「…どーしてそんな事が分かんだよ。」
「…分かるよ。僕が“仕掛ける”からね…
あの手のタイプは――ちょっと揺さぶればすぐに自信無くして折れちゃうから…
だから――」
契が寄り掛かっていた壁から背を離し、狼の正面に移動すると
零れる月明かりを背に、妖艶に微笑む
「僕が依頼したこのβが自信無くして命さんから離れたら…
僕から狼に連絡入れるからその時は――
止(とど)めにこのβ…無茶苦茶に犯してやってよ…
もう二度と命さんの前にその姿、現せなくなるくらいに…」
とある使われていない廃倉庫の一角…
月明かりが破れたトタン屋根から薄暗い倉庫内に帯状に降り注ぎ
幻想的な光景を作り出す中
二人の男が壁に寄り掛かりながら話を進める
「そ。コイツからはΩのフェロモンみたいに
αにしか分からない良い匂いがしやがるんだ…」
一人の男がうっとりと…スマホ画面を見つめながら話す
「どれくらい良い匂い?」
「さぁな。人によるだろう…ただ――」
「…」
「俺が感じた限りだと…Ωの発情フェロモンよりは良い匂いだったな…ありゃ。
誰かさんのマーキング臭さえ混ざってなけりゃ
あの場に居た俺以外のαも我先にとこのβに群がっていただろうよ…」
「…そんなに…?」
「ああ…」
―――どーりで…ヒートフェロモンでは無かったにしろ
僕のフェロモンの匂いを嗅いでも僕よりもあのβを選ぶわけだ…
小柄な男性が2メートル近い長身の男性から自分の渡したスマホを受け取ると
無意識に左手の親指の爪をカリカリと苛ただし気に噛む…
「…しっかし…お前が俺の所にくんのは邪魔者を排除して欲しい時とはいえ…
ま~さか今回の依頼がそのβくんだったとは…世の中は狭いなぁ~…
そー思わねぇか?なぁ…契…」
「そーだね、狼…まさかこのβをキミが知ってるなんて思いもよら無かったよ…」
契がスマホを手提げ鞄に仕舞いながら隣の男…狼を見上げる
「…で?今回はどーして欲しいんだ?そのβくんを…」
狼が持っていた缶ビールをグイッと煽りながら契に聞く
すると契はその美しい顔にゾッとするような薄い笑みを浮かべながら
薄い唇を開く
「…出来ればこの世から消して欲しいトコだけど――」
「俺は人殺しはしねーよ?」
「知ってるよ。だから…」
契が瞳をスッと細くしながら隣に立つ狼を見つめる
「…汚して欲しい。滅茶苦茶に…」
普段は凛とした美しさを誇る契の顔が
自分に依頼を頼むと時はまるで童話に出てくる魔女の様に歪む契の顔に
狼は「おっかねーなぁ…」と呟くと、また一口缶ビールを煽る
「ん~…それは無理なんじゃねーかな。」
「どーして?」
「俺もこのβくんとひと悶着起こした後、色々調べたんだよ。
このβくんと…βくん囲ってる“命さん”について…」
狼が空になった缶を投げ捨て
缶はカンッ!カラカラカラ…とコンクリートで覆われた地面を
妙に音を大きく響かせながら倉庫内を転がっていく…
「…なんでもこの命さんとやら…
この国有数の財閥の一つ、“鬼生道財閥”の御曹司さまらしーじゃねーか…
こんなヤツに囲われてるβくんに手を出す何て…
この間俺と偶然遭遇した時みたいに
何かしらの理由で一人でうろついてでもしてくれない限り
手ぇ出すのは不可能だって。
…何より――βくん囲ってる命さん自体つえーしな…」
狼が忌々し気にチッと舌打をしてその表情を歪ませる
「その点なら問題ないよ。」
「あ?何が…」
「もうじきこのβは――命さんの傍に居られなくなる。」
「…どーしてそんな事が分かんだよ。」
「…分かるよ。僕が“仕掛ける”からね…
あの手のタイプは――ちょっと揺さぶればすぐに自信無くして折れちゃうから…
だから――」
契が寄り掛かっていた壁から背を離し、狼の正面に移動すると
零れる月明かりを背に、妖艶に微笑む
「僕が依頼したこのβが自信無くして命さんから離れたら…
僕から狼に連絡入れるからその時は――
止(とど)めにこのβ…無茶苦茶に犯してやってよ…
もう二度と命さんの前にその姿、現せなくなるくらいに…」
0
あなたにおすすめの小説
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
家事代行サービスにdomの溺愛は必要ありません!
灯璃
BL
家事代行サービスで働く鏑木(かぶらぎ) 慧(けい)はある日、高級マンションの一室に仕事に向かった。だが、住人の男性は入る事すら拒否し、何故かなかなか中に入れてくれない。
何度かの押し問答の後、なんとか慧は中に入れてもらえる事になった。だが、男性からは冷たくオレの部屋には入るなと言われてしまう。
仕方ないと気にせず仕事をし、気が重いまま次の日も訪れると、昨日とは打って変わって男性、秋水(しゅうすい) 龍士郎(りゅうしろう)は慧の料理を褒めた。
思ったより悪い人ではないのかもと慧が思った時、彼がdom、支配する側の人間だという事に気づいてしまう。subである慧は彼と一定の距離を置こうとするがーー。
みたいな、ゆるいdom/subユニバース。ふんわり過ぎてdom/subユニバースにする必要あったのかとか疑問に思ってはいけない。
※完結しました!ありがとうございました!
人気アイドルが義理の兄になりまして
三栖やよい
BL
柚木(ゆずき)雪都(ゆきと)はごくごく普通の高校一年生。ある日、人気アイドル『Shiny Boys』のリーダー・碧(あおい)と義理の兄弟となり……?
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人
こじらせた処女
BL
幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。
しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。
「風邪をひくことは悪いこと」
社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。
とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。
それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる