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決意。
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命side
命が自分の部屋で会社では処理しきれなかった書類の束を前に
ふと、携帯がない事に気づいて辺りを見回す
―――そういえば…
調べ物の為に書斎に行った際、机の上にスマホを置いたような…
命はその事を思いだし、スマホを取りに自分の部屋を出る
すると丁度洋一が自分の部屋へと戻ろうとしている所を見かけ
命は躊躇いながらも洋一に声をかけるが…
「洋一…」
「…何でしょう?命さん…」
自分の方を振り返った洋一の顔は微笑んではいてものの…
その目元は微かに赤く腫れていて…
それは直前まで洋一が泣いていた事を伺わせるもので――
「…今日一緒に――「ごめんなさい。」
「…俺…ちょっと一人で考えたい事があって…だから…、」
「…分かった。呼び止めてしまってすまないな…お休み…洋一。」
「…お休みなさい…命さん…」
洋一が躊躇いがちに自分の部屋へと入ろうとするその背後を
命は洋一の様子を伺うようにして通りすぎ
やがてドアがパタン…と小さく閉まる音がして命が後ろを振り返る…
「洋一…」
―――泣いて…いたな…
洋一は命に泣いていた事を悟られないようにする為か
俯いたりしてなるべく目元を見られないようにしていたが
命が洋一の涙の痕跡を見逃すはずもなく…
―――やはり…俺のせいか…
命の表情に苦渋が浮かぶ…
―――俺に…“運命の番”かもしれない契が現れたから…だから…
洋一は“また”…一人で泣いている…
「…ッ、」
命はギュッと拳を握りしめると、書斎へ向けて再び歩き始める
―――俺が不甲斐ないばかりに…洋一を苦しめている…
命は昼間、イタリアンの店での出来事を思いだし
その表情を更に険しくする…
―――あれだけ『運命に抗ってみせる』と洋一に豪語しておいて…
いざ運命が現れたらあのザマとは…
命は契に掴まれた手を辛そうにジッと見つめながら歩き続ける…
―――あの時俺は…何も出来なかった…
契が俺の手を掴んで何処かに連れて行こうとした時…
何も出来なかったんだ…
契に出会った瞬間
命の思考は停止し、周りの雑音が一瞬で消えさり…
まるであの場に自分と契の二人しかいないかの様な感覚に
今までどのΩにもそんな反応など示した事などなかった自分のその反応に
命自身が戸惑い
そして微かに恐怖する…
確かにそこに存在してしまった自分の“運命”に…
―――情けない話だが…
洋一があの時俺の手を引っ張ってくれていなかったら今頃俺は…っ
「くッ、」
命が見つめていた手をギュッと握りしめ
悔しさと情けなさからかグッと歯を食いしばって小さく呻く…
―――これ以上…洋一を悲しませる訳にはいかない…
その為にも俺自身が決着をつけないと…
自分の“運命”と
命が“運命”と対峙する決意を固め
いつの間にか辿り着いた書斎のドアノブに手をかけ、ドアを開けると
暗い書斎の中、正面の書斎机の上にポゥ…と微かな光を放つ物が見え
―――やはり此処に置き忘れていたか…
命が書斎の電気を点け、書斎机に近づきスマホを手に取ると
着信ランプが点滅しており、命が受信箱を確認する
するとそこには契からのメールが届いており――
―――契?何故俺のアドレスを…
命が不審に思いながらも契からのメールを開くと
そこには丁寧な文体で内容が示されていて
『命さん、今日初めてお会いしたばかりだというのに
このようなメールを送ってしまい…大変失礼に思われるでしょうが
是非、二人きりでお話したい事がございます。
明日、会っては頂けないでしょうか?』
という文面の下に日時と場所が記されており
命の表情に一瞬、困惑の色が浮かぶが
―――丁度いい…
直ぐにその表情をキッと引き締め、強い意志を宿した瞳で
契からのメールを見つめる
―――俺も契に会ってキチンと話しておかねばならないと思っていたところだ。
お前とは…番えない――と…
命が自分の部屋で会社では処理しきれなかった書類の束を前に
ふと、携帯がない事に気づいて辺りを見回す
―――そういえば…
調べ物の為に書斎に行った際、机の上にスマホを置いたような…
命はその事を思いだし、スマホを取りに自分の部屋を出る
すると丁度洋一が自分の部屋へと戻ろうとしている所を見かけ
命は躊躇いながらも洋一に声をかけるが…
「洋一…」
「…何でしょう?命さん…」
自分の方を振り返った洋一の顔は微笑んではいてものの…
その目元は微かに赤く腫れていて…
それは直前まで洋一が泣いていた事を伺わせるもので――
「…今日一緒に――「ごめんなさい。」
「…俺…ちょっと一人で考えたい事があって…だから…、」
「…分かった。呼び止めてしまってすまないな…お休み…洋一。」
「…お休みなさい…命さん…」
洋一が躊躇いがちに自分の部屋へと入ろうとするその背後を
命は洋一の様子を伺うようにして通りすぎ
やがてドアがパタン…と小さく閉まる音がして命が後ろを振り返る…
「洋一…」
―――泣いて…いたな…
洋一は命に泣いていた事を悟られないようにする為か
俯いたりしてなるべく目元を見られないようにしていたが
命が洋一の涙の痕跡を見逃すはずもなく…
―――やはり…俺のせいか…
命の表情に苦渋が浮かぶ…
―――俺に…“運命の番”かもしれない契が現れたから…だから…
洋一は“また”…一人で泣いている…
「…ッ、」
命はギュッと拳を握りしめると、書斎へ向けて再び歩き始める
―――俺が不甲斐ないばかりに…洋一を苦しめている…
命は昼間、イタリアンの店での出来事を思いだし
その表情を更に険しくする…
―――あれだけ『運命に抗ってみせる』と洋一に豪語しておいて…
いざ運命が現れたらあのザマとは…
命は契に掴まれた手を辛そうにジッと見つめながら歩き続ける…
―――あの時俺は…何も出来なかった…
契が俺の手を掴んで何処かに連れて行こうとした時…
何も出来なかったんだ…
契に出会った瞬間
命の思考は停止し、周りの雑音が一瞬で消えさり…
まるであの場に自分と契の二人しかいないかの様な感覚に
今までどのΩにもそんな反応など示した事などなかった自分のその反応に
命自身が戸惑い
そして微かに恐怖する…
確かにそこに存在してしまった自分の“運命”に…
―――情けない話だが…
洋一があの時俺の手を引っ張ってくれていなかったら今頃俺は…っ
「くッ、」
命が見つめていた手をギュッと握りしめ
悔しさと情けなさからかグッと歯を食いしばって小さく呻く…
―――これ以上…洋一を悲しませる訳にはいかない…
その為にも俺自身が決着をつけないと…
自分の“運命”と
命が“運命”と対峙する決意を固め
いつの間にか辿り着いた書斎のドアノブに手をかけ、ドアを開けると
暗い書斎の中、正面の書斎机の上にポゥ…と微かな光を放つ物が見え
―――やはり此処に置き忘れていたか…
命が書斎の電気を点け、書斎机に近づきスマホを手に取ると
着信ランプが点滅しており、命が受信箱を確認する
するとそこには契からのメールが届いており――
―――契?何故俺のアドレスを…
命が不審に思いながらも契からのメールを開くと
そこには丁寧な文体で内容が示されていて
『命さん、今日初めてお会いしたばかりだというのに
このようなメールを送ってしまい…大変失礼に思われるでしょうが
是非、二人きりでお話したい事がございます。
明日、会っては頂けないでしょうか?』
という文面の下に日時と場所が記されており
命の表情に一瞬、困惑の色が浮かぶが
―――丁度いい…
直ぐにその表情をキッと引き締め、強い意志を宿した瞳で
契からのメールを見つめる
―――俺も契に会ってキチンと話しておかねばならないと思っていたところだ。
お前とは…番えない――と…
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