βは蚊帳の外で咽び泣く

深淵歩く猫

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操りたい運命。

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「…では――無事に接触は果たしたわけだな?」
「はい…しかし例のβの匂いが強すぎた為か
 命様は一応の反応は示したものの水鏡様の誘いには乗らなかったようで…
 如何なさいましょう?」
「…構わん。今回は二人を接触させる事のみが目的だからな…
 “造られた運命"でも反応するかどうかの…
 分かった。もう下がっていいぞ。」
「かしこまりました。」

黒いスーツを着た男性が踵を返し、書斎を出て行く

「聞いてたな?
 お前の研究…実を結びつつあるぞ?嬉しいか?」

命の父、繋(けい)が自分の斜め後ろで本棚を漁る男性に
チラリと視線を送りながら声をかける

「ん~…まだ何とも言えないな。
 そもそも私の目的は運命を“造る”では無く“操る”事だから…
 でもまあ“運命を造る”事が立証出来たらそれはそれで
 我々αにとっても利点になるから問題は無いんだけど…
 知ら無いうちに実験対象にさせられちゃった
 命君と契君は気の毒におもうけどね。」

繋に向けて微かな笑みを浮かべ
たいして気の毒に思っていない口ぶりで
物腰の柔らかそうな男性は言葉を続ける

「…しかし自分の息子を実験に差し出す何て…
 私にはとても真似できないよ。繋…」
「…アレにもそろそろ番を見つけてもらわねば困るからな。
 要と桜子は“運命”では無いから出生率に不安が残るし…
 何より命は次の鬼生道を背負って立つ立場だ。子は早めに成してもらわねば…」

繋が眉を顰めながら窓の外に視線を向ける

「それにしても…洋一君の匂いは相変わらず凄いな…
 “造られた運命”とはいえ…それすらも遮るか…」
「…何しろあの大神のご老体が進めていた研究に関わっていたβかもしれんからな。
 只者ではないぞ。」
「それって昔…大神様がαの12血統会議の場で
 αにとって重要な研究材料になるとか言ってたあのβの事…?
 …だとすると――最近浩介の薬の切れが早くなってきているのは
 洋一君の匂いに原因が――」
「…どうかしたか?」
「え?あ…いや別に…ただ洋一君があの大神様の研究に関わっていた
 βなのだとしたら…是非一度私の手でキチンと調べてみたいと思ってね…」
「…手は打ってある。」
「それは…楽しみだね…」

男性は窓の外を見つめる繋の背に向けててそう呟くと
本棚から一冊の本を抜きとり、パラパラとその本を静かに読み始めた…
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