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知らない筈…
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「着いたら先ずは――玄関とリビングダイニングの清掃…と。」
俺はニコニコエブリデーが所有する軽に乗り、天崎君のマンションに向かう途中…
赤信号の合間合間にやる事リストのメモをフムフムと頷きながら眺めていると
普段なら何とも思わないハズの一文が、俺の興奮を掻き立て…
「―――ベッドメイキング…?ベッドメイキングだと…!?」
―――昴君が普段寝ているベッドのメイキング…
きっとイイ匂いが………
「――ハッ!いかんいかんっ!!
何推しに対してやましい事考えてんだ俺はっ!仕事に集中しろっ!!」
浮かび上がったやましい考えを振り払う様に俺は頭を振ると
信号が青に変わったのを見て、逃げる様に車を発進させ…
「っまったく……何考えてんだ俺は…!
いいか?コレはあくまで仕事なんだからなっ?!余計な事は考えるな!」
運転しながら俺は自分に言い聞かせる様に独り言をブツブツ言い…
やがてメモに書かれていた住所に近づくにつれ――
俺の緊張もMAXに近づき…
―――もう……住所見なくても分かるな。
アレだろ…?昴君のマンションって…
再び止まった赤信号で俺は
十数メートル先の正面にそびえ立つ60階建てのタワーマンションを
車の中から見上げ…
―――っあそこが天崎君の…
星駆 昴君の住むマンション…
俺は知らずにゴクンッ…と生唾を飲み込み…
改めてハンドルを強く握りしめる。
―――大丈夫だ……昴君は今あそこにはいない…
俺はメモに書かれた依頼内容を他の所と同じように慎重かつ丁寧にこなし。
後はいつも通り仕事を終えたら部屋を後にするだけだ。
――簡単な事じゃないか…
何も怖がる必要はない。
俺は「フゥ~…」と大きく息を吐き出すと――
意を決した面持ちで天崎君のマンションへと車を走らせた…
※ ※ ※
―――だいじょうぶだいじょうぶだいじょうぶ…
俺は心の中でまるで念仏の様に大丈夫を繰り返しながら
共有玄関のオートロックを解除し、マンションの中に入ると
ぎこちない足取りでエレベーターに向けて歩き…
―――大丈夫だ。何の問題もない。
俺はいつも通りに仕事をする。ただそれだけだ…
エレベーターへと乗り込み…
俺はメモに書かれていた通り、預かっていた部屋の鍵を操作パネルに恐る恐る近づける。
するとエレベーターのドアが締まり…
見れば横の階数を押すボタンが自動で目的の階である38階でランプが灯り――
―――もう逃げられないぞ……気を引き締めないと…!
徐々に昇っていくエレベーターの中で…
俺は掃除道具などが入ったソフトコンテナを床に置き
気合を入れる為に両手で両頬をパンッ!と叩くと――
まるで計ったかのようにそれと同時にエレベーターどドアが開き…
「よしっ!行くかっ!」
俺は床に置いたソフトコンテナを持ち上げ、ショルダーテープをギュッと握りしめると
緊張した面持ちでエレベーターを降り、そのまま誰もいない廊下をズンズンと進み…
―――大丈夫。落ち着け~……落ち着け自分…
メモに書かれた部屋に近づくにつれて激しくなっていく鼓動に
俺は何度も深呼吸を繰り返しながら廊下を進むと
遂に部屋の前に到着し…
―――仕事をするだけ。大丈夫…大丈夫…
俺はスゥー…と息を吸い込み、持っていた鍵を鍵穴に挿し。
フゥ~…っと息を吐き出すと同時に鍵を回すと
ドアの鍵がカチッ…と開き…
「…よし。」
俺は今度こそ覚悟を決め、ドアの中に一歩足を踏み入れる。
すると誰もいない筈の廊下の奥から、誰かの話し声が聞こえ――
「………え、」
予想外の出来事に俺がその場で固まっていると
後ろのドアが勝手にパタン…と閉じ…
ビビリ散らかしていた俺はその音に思わずビクンッと跳ねながら悲鳴を上げそうになるが
何とか持ち堪えると
微かに聞こえる話し声に耳を澄ませ…
―――オイオイ待ってくれ…、今この家には誰もいないんじゃなかったのか…?
俺はたじろぎながらやっぱり帰ろうかと一瞬踵を返しかけるが――
流石に此処まで来て帰るのも気が引け、思いとどまると
恐る恐るタタキに近づきながら、ふとある考えが頭を過り…
―――ッ!まさか……泥棒が…?
いやでもエレベータは部外者の場合、受付のコンシェルジュに頼むか
住民の鍵がなきゃ動かないんじゃ…
俺はタタキで靴を脱ぎ、玄関ホールに上がり込むと
足音を立てないよう…慎重に廊下の奥へと足を進める。
すると話し声はどんどん大きくなり――
「何勝手にハウスキーパーを辞めさせてるんだお前はっ!」
「ッ!?」
俺がリビングの近くに差し掛かったその時。
突然男の怒鳴り声がリビングの中から響き渡り…
「何でお前はいつもそう勝手な事ばかりするんだ!」
「え~……別にいいじゃん!それくらい…」
「ッ!?!」
―――この声…っ、
「いいわけないだろう!ハウスキーパーの選別に
海良木(ウチ)がどれだけ神経を尖らせてるか分かってんのか!?」
「…だってさぁ~……あの人…気持ち悪かったし…」
「だってじゃない!しかも今度はウチに断りもなく
新たに自分で別のハウスキーパーを雇っただとっ?!
何考えてんだまったく…」
「え~…そんなに怒る事~? 大体――ここは僕の部屋なんだし…
僕の部屋を誰に掃除させるかくらい僕が決めたっていいじゃん!ケチ!」
「っケチって、お前なぁ…」
―――やっぱりそうだ!この声…
星駆 昴君…っ!?
「っマジかよ…」
余りの出来事に、俺がリビングの前で固まっていると
中からドタドタと足音が聞こえ…
「兎に角!僕の雇ったハウスキーパーを認めてくれなきゃ
僕今日仕事に行かないからっ!」
「あっ!コラ待ちなさいっ!!」
バンッ!!とリビングのドアが勢いよく開くと
リビングから天使が飛び出し…
あわや俺と天使はぶつかりそうになり――
「――あ。」
「っ危ない…!」
俺は咄嗟に持っていたソフトコンテナを手放し
そのままぶつかりそうになっていた天使を抱き留めると――
天使は暫く呆然と俺の顔を見た後、パァッ!と華やぐような笑顔と共にその口を開き…
「来てくれたんだ!僕の家政夫さん♪」
「えッ、あ…、あの…っ!
すみませんっ!勝手に上がり込んだりして…っ、」
「ううん!いいんだよ。そんな事…
それよりいらっしゃい!黛さん。待ってたよ!
あれから――小指の具合はどお…?」
「………え…」
その一言に、俺は昴君を見つめたまま顔をピキッ…と引きつらせると
後ろから眼鏡をかけた黒スーツの男が近づいてきて…
「コラ昴!まだ話は終わって――
…誰だ貴様は。」
俺の姿に気づいた眼鏡の男が剣呑な表情で俺を睨みつける。
すると昴君がガッチリと俺の腕にしがみつきながらその口を開き…
「僕の新しい家政夫さん!どお?カッコイイでしょ~!」
「…何?」
「ッ!?ちょっ、ちょっと昴君?!」
俺はしがみつく昴君の腕を振り払えないまま
アワアワしながら2人を交互に見やっていると
眼鏡の男がズイッと俺に顔を近づけ…
「コイツが――新しいハウスキーパーだとぉ~…?」
眼鏡の男は嫌味ったらしく眼鏡のフレームを片方持ち上げながら
如何にも高圧的な態度で上から下まで俺の姿を眺めると、最後にフンッ!と鼻を鳴らし…
「…駄目だ。こんな怪しい奴…
大体――ニコニコエブリデーなんて会社…聞いた事もないぞ。
そんな怪しいトコロから雇ったハウスキーパーより、やっぱりウチで――」
「い” や” だっ!!!」
「昴っ!」
「黛さんじゃなきゃ嫌っ!
認めてくんなきゃ僕今日本当に新曲の収録とドラマの撮影すっぽかすからっ!!」
「ッ!?昴お前――」
「ハァァァ~~…」と男は額に手を当てながら、クソ長い溜息を吐き出すと――
俺の方を一瞬キッ!と睨みつけた後、諦めた様に目を伏せながら言葉を続け…
「…分かった。負けたよ…
ソイツを雇ってもいい。」
「ホントにっ!?やったぁ~!」
「っただし!そいつが少しでも妙な事をしたら、すぐさま警察に突き出すからなっ!
分かったか!?」
「ンもぉ~……相変わらず疑り深いなぁ~…青山ちゃんは…
黛さんは妙な事なんてしないよ。僕が保証する。
なんたって――黛さんは僕に“借り”があるもの…
ね~?そーだよね~?」
「、え…、えっ…?」
「…フンッ。まあいい…
兎に角もう部屋を出るぞ!新曲の収録に間に合わなくなるっ!」
「え~……もーそんな時間?嫌だなぁ~…」
そう言って昴君は固まる俺の頬にソっと触れると…
あの日の夜に逢ったような優しい笑みを俺に見せ…
「まだまだ黛さんとこうしていたいけど……僕もう行かないと。
じゃあね黛さん。お仕事頑張って!
ホラ行くよ?青山ちゃん!駆け足駆け足!」
「っお前なぁ~…」
そう言って二人は茫然としている俺を残して部屋から出て行くと
俺は固まったまま先ほどの昴君の言葉に冷や汗を流し…
「ッ…どうして…」
―――判るわけが無い……気づくはずが――
『小指の具合はどお?』
『黛さんは僕に“借り”が――』
―――だってあの時の俺はすっごいボロボロで…
髪はボサボサ……顔なんかも殴られた痕が酷くて目もろくに開かなくて…
その上髭だってボウボウで――
とてもあの時の俺が今の俺だなんて……昴君が知る筈が…、
「………」
昴君たちが出て行った後も、俺は暫くその場で立ち尽くすと…
やがてやらなきゃいけない事をぼんやりと思い出した俺は
床に置いていたソフトコンテナを拾い上げ…
やはりぼんやりとしたままリビングの方を振り向くと――
俺は呆然自失のままノロノロとリビングへと入っていった…
俺はニコニコエブリデーが所有する軽に乗り、天崎君のマンションに向かう途中…
赤信号の合間合間にやる事リストのメモをフムフムと頷きながら眺めていると
普段なら何とも思わないハズの一文が、俺の興奮を掻き立て…
「―――ベッドメイキング…?ベッドメイキングだと…!?」
―――昴君が普段寝ているベッドのメイキング…
きっとイイ匂いが………
「――ハッ!いかんいかんっ!!
何推しに対してやましい事考えてんだ俺はっ!仕事に集中しろっ!!」
浮かび上がったやましい考えを振り払う様に俺は頭を振ると
信号が青に変わったのを見て、逃げる様に車を発進させ…
「っまったく……何考えてんだ俺は…!
いいか?コレはあくまで仕事なんだからなっ?!余計な事は考えるな!」
運転しながら俺は自分に言い聞かせる様に独り言をブツブツ言い…
やがてメモに書かれていた住所に近づくにつれ――
俺の緊張もMAXに近づき…
―――もう……住所見なくても分かるな。
アレだろ…?昴君のマンションって…
再び止まった赤信号で俺は
十数メートル先の正面にそびえ立つ60階建てのタワーマンションを
車の中から見上げ…
―――っあそこが天崎君の…
星駆 昴君の住むマンション…
俺は知らずにゴクンッ…と生唾を飲み込み…
改めてハンドルを強く握りしめる。
―――大丈夫だ……昴君は今あそこにはいない…
俺はメモに書かれた依頼内容を他の所と同じように慎重かつ丁寧にこなし。
後はいつも通り仕事を終えたら部屋を後にするだけだ。
――簡単な事じゃないか…
何も怖がる必要はない。
俺は「フゥ~…」と大きく息を吐き出すと――
意を決した面持ちで天崎君のマンションへと車を走らせた…
※ ※ ※
―――だいじょうぶだいじょうぶだいじょうぶ…
俺は心の中でまるで念仏の様に大丈夫を繰り返しながら
共有玄関のオートロックを解除し、マンションの中に入ると
ぎこちない足取りでエレベーターに向けて歩き…
―――大丈夫だ。何の問題もない。
俺はいつも通りに仕事をする。ただそれだけだ…
エレベーターへと乗り込み…
俺はメモに書かれていた通り、預かっていた部屋の鍵を操作パネルに恐る恐る近づける。
するとエレベーターのドアが締まり…
見れば横の階数を押すボタンが自動で目的の階である38階でランプが灯り――
―――もう逃げられないぞ……気を引き締めないと…!
徐々に昇っていくエレベーターの中で…
俺は掃除道具などが入ったソフトコンテナを床に置き
気合を入れる為に両手で両頬をパンッ!と叩くと――
まるで計ったかのようにそれと同時にエレベーターどドアが開き…
「よしっ!行くかっ!」
俺は床に置いたソフトコンテナを持ち上げ、ショルダーテープをギュッと握りしめると
緊張した面持ちでエレベーターを降り、そのまま誰もいない廊下をズンズンと進み…
―――大丈夫。落ち着け~……落ち着け自分…
メモに書かれた部屋に近づくにつれて激しくなっていく鼓動に
俺は何度も深呼吸を繰り返しながら廊下を進むと
遂に部屋の前に到着し…
―――仕事をするだけ。大丈夫…大丈夫…
俺はスゥー…と息を吸い込み、持っていた鍵を鍵穴に挿し。
フゥ~…っと息を吐き出すと同時に鍵を回すと
ドアの鍵がカチッ…と開き…
「…よし。」
俺は今度こそ覚悟を決め、ドアの中に一歩足を踏み入れる。
すると誰もいない筈の廊下の奥から、誰かの話し声が聞こえ――
「………え、」
予想外の出来事に俺がその場で固まっていると
後ろのドアが勝手にパタン…と閉じ…
ビビリ散らかしていた俺はその音に思わずビクンッと跳ねながら悲鳴を上げそうになるが
何とか持ち堪えると
微かに聞こえる話し声に耳を澄ませ…
―――オイオイ待ってくれ…、今この家には誰もいないんじゃなかったのか…?
俺はたじろぎながらやっぱり帰ろうかと一瞬踵を返しかけるが――
流石に此処まで来て帰るのも気が引け、思いとどまると
恐る恐るタタキに近づきながら、ふとある考えが頭を過り…
―――ッ!まさか……泥棒が…?
いやでもエレベータは部外者の場合、受付のコンシェルジュに頼むか
住民の鍵がなきゃ動かないんじゃ…
俺はタタキで靴を脱ぎ、玄関ホールに上がり込むと
足音を立てないよう…慎重に廊下の奥へと足を進める。
すると話し声はどんどん大きくなり――
「何勝手にハウスキーパーを辞めさせてるんだお前はっ!」
「ッ!?」
俺がリビングの近くに差し掛かったその時。
突然男の怒鳴り声がリビングの中から響き渡り…
「何でお前はいつもそう勝手な事ばかりするんだ!」
「え~……別にいいじゃん!それくらい…」
「ッ!?!」
―――この声…っ、
「いいわけないだろう!ハウスキーパーの選別に
海良木(ウチ)がどれだけ神経を尖らせてるか分かってんのか!?」
「…だってさぁ~……あの人…気持ち悪かったし…」
「だってじゃない!しかも今度はウチに断りもなく
新たに自分で別のハウスキーパーを雇っただとっ?!
何考えてんだまったく…」
「え~…そんなに怒る事~? 大体――ここは僕の部屋なんだし…
僕の部屋を誰に掃除させるかくらい僕が決めたっていいじゃん!ケチ!」
「っケチって、お前なぁ…」
―――やっぱりそうだ!この声…
星駆 昴君…っ!?
「っマジかよ…」
余りの出来事に、俺がリビングの前で固まっていると
中からドタドタと足音が聞こえ…
「兎に角!僕の雇ったハウスキーパーを認めてくれなきゃ
僕今日仕事に行かないからっ!」
「あっ!コラ待ちなさいっ!!」
バンッ!!とリビングのドアが勢いよく開くと
リビングから天使が飛び出し…
あわや俺と天使はぶつかりそうになり――
「――あ。」
「っ危ない…!」
俺は咄嗟に持っていたソフトコンテナを手放し
そのままぶつかりそうになっていた天使を抱き留めると――
天使は暫く呆然と俺の顔を見た後、パァッ!と華やぐような笑顔と共にその口を開き…
「来てくれたんだ!僕の家政夫さん♪」
「えッ、あ…、あの…っ!
すみませんっ!勝手に上がり込んだりして…っ、」
「ううん!いいんだよ。そんな事…
それよりいらっしゃい!黛さん。待ってたよ!
あれから――小指の具合はどお…?」
「………え…」
その一言に、俺は昴君を見つめたまま顔をピキッ…と引きつらせると
後ろから眼鏡をかけた黒スーツの男が近づいてきて…
「コラ昴!まだ話は終わって――
…誰だ貴様は。」
俺の姿に気づいた眼鏡の男が剣呑な表情で俺を睨みつける。
すると昴君がガッチリと俺の腕にしがみつきながらその口を開き…
「僕の新しい家政夫さん!どお?カッコイイでしょ~!」
「…何?」
「ッ!?ちょっ、ちょっと昴君?!」
俺はしがみつく昴君の腕を振り払えないまま
アワアワしながら2人を交互に見やっていると
眼鏡の男がズイッと俺に顔を近づけ…
「コイツが――新しいハウスキーパーだとぉ~…?」
眼鏡の男は嫌味ったらしく眼鏡のフレームを片方持ち上げながら
如何にも高圧的な態度で上から下まで俺の姿を眺めると、最後にフンッ!と鼻を鳴らし…
「…駄目だ。こんな怪しい奴…
大体――ニコニコエブリデーなんて会社…聞いた事もないぞ。
そんな怪しいトコロから雇ったハウスキーパーより、やっぱりウチで――」
「い” や” だっ!!!」
「昴っ!」
「黛さんじゃなきゃ嫌っ!
認めてくんなきゃ僕今日本当に新曲の収録とドラマの撮影すっぽかすからっ!!」
「ッ!?昴お前――」
「ハァァァ~~…」と男は額に手を当てながら、クソ長い溜息を吐き出すと――
俺の方を一瞬キッ!と睨みつけた後、諦めた様に目を伏せながら言葉を続け…
「…分かった。負けたよ…
ソイツを雇ってもいい。」
「ホントにっ!?やったぁ~!」
「っただし!そいつが少しでも妙な事をしたら、すぐさま警察に突き出すからなっ!
分かったか!?」
「ンもぉ~……相変わらず疑り深いなぁ~…青山ちゃんは…
黛さんは妙な事なんてしないよ。僕が保証する。
なんたって――黛さんは僕に“借り”があるもの…
ね~?そーだよね~?」
「、え…、えっ…?」
「…フンッ。まあいい…
兎に角もう部屋を出るぞ!新曲の収録に間に合わなくなるっ!」
「え~……もーそんな時間?嫌だなぁ~…」
そう言って昴君は固まる俺の頬にソっと触れると…
あの日の夜に逢ったような優しい笑みを俺に見せ…
「まだまだ黛さんとこうしていたいけど……僕もう行かないと。
じゃあね黛さん。お仕事頑張って!
ホラ行くよ?青山ちゃん!駆け足駆け足!」
「っお前なぁ~…」
そう言って二人は茫然としている俺を残して部屋から出て行くと
俺は固まったまま先ほどの昴君の言葉に冷や汗を流し…
「ッ…どうして…」
―――判るわけが無い……気づくはずが――
『小指の具合はどお?』
『黛さんは僕に“借り”が――』
―――だってあの時の俺はすっごいボロボロで…
髪はボサボサ……顔なんかも殴られた痕が酷くて目もろくに開かなくて…
その上髭だってボウボウで――
とてもあの時の俺が今の俺だなんて……昴君が知る筈が…、
「………」
昴君たちが出て行った後も、俺は暫くその場で立ち尽くすと…
やがてやらなきゃいけない事をぼんやりと思い出した俺は
床に置いていたソフトコンテナを拾い上げ…
やはりぼんやりとしたままリビングの方を振り向くと――
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