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ペット達 2
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二人で中へ入り扉を閉める。
靴を脱ぎ、勉強机の前に置かれた椅子に生徒を促すと、そいつは恐縮したようにそこへ腰掛けた。
「…突然押しかけてしまって、すみません一条さん。あ、僕、藤白っていいます。藤白楓。黒沼様の…ペットです」
「…ああ」
俺と同じ黒い首輪は、同学年のペットの証。
「…俺の部屋と名前、知ってたんだな」
「え?あ、…はい。一条さんって、ペットの間では結構有名ですから…」
「有名?」
身に覚えがない。
藤白は少し照れくさそうに告げた。
「…一条さんは、すごく綺麗な方だから…」
「っ!………綺麗とか、男に使う言葉じゃねぇだろ」
「でも実際僕も…そう思いますし。」
にこりと微笑む顔には邪気がない。
飼い主達に言われるのと違って、率直に容姿を褒められるのは少し気恥ずかしい。
そういえば、同じ立場の人間とこうやって話すの…久しぶりだな…
「…それで、俺に何か話があるんだろ?あんまり時間がないから、手短だと助かる」
「あっ、はい!…黒沼様が謹慎中の間に、どうしてもお礼と、謝罪がしたくてきました…」
「礼と謝罪?」
藤白は居住まいを正し、俺に向かって頭を下げた。
「先日僕を守ってくれたお礼が言いたくて。あの後竜前様にひどいことされなかったかも、心配で……僕のせいで巻き込んでしまって、本当にすみません」
「…お前が謝ることじゃないだろ。平気だ。お前の方こそ大丈夫か?殴られたりとかしてないか?」
「…謹慎中は服従の必要はないって、担任には言われて…だからこの3日間は黒沼様に会っていないんです。なので、今は…平気です」
含みのある言い方が、気になった。
「“今は”って……普段は?」
「………黒沼様はいつも、…あんな感じなので…」
「……」
「あ…でもほんとに殴られたりすることは少ないんです。脅されることはしょっちゅうですけど、それに、従順にしてれば優しいときもあるし、僕がちゃんと命令通りにすればお仕置きも、」
「…なぁ、藤白」
「っ…」
「…今は、俺たちしかいないから……俺の前で、無理する必要ない」
「……、あ…」
そう告げた直後、藤白の瞳に、涙の膜が張る。
膝の上に置かれたこぶしが何かをこらえるように、キュッと握られた。
「…く、黒沼様は…」
藤白の声が震える。
「あ……あの人は……とても恐ろしい人、…だから…」
「…ああ」
「…も、物みたいに、扱われます…こ、怖くて…でも抵抗出来なくて…っ……れ、レイプされるのも、つらくて…っ」
「ああ……わかるよ」
ポタポタと瞳から落ちる涙がこぶしへと落ちていく。
「……」
俺も、こいつと一緒だ。
今はまだ犯されたり、衆人環視の中辱められることはないが、いつ主人の気が変わって同じ目に遭うかも分からない。
この狂った学園の中で、俺たちペットは飼い主の玩具で、…奴隷だ。
藤白の嗚咽が、部屋に響く。
「……藤白。…スマホ持ってるか?」
「…ぇ…?」
俺は机に置かれたノートにペンを走らせ、一部をちぎってそれを渡した。
「…これ、…」
「俺の連絡先だ。 …どうしても辛いときは、連絡していいから。」
「っ…いち、じょう…さん…」
「…俺も…お前と一緒なんだ…」
俺たちに出来ることは、せいぜい従順なフリをして、機嫌を損ねないように気をつけて、媚びを売ること。
そうやって“壊され”ないように学園生活を送って、そうやって生き抜いて…
「卒業まで耐えれば…俺たちは自由になれるんだ…」
靴を脱ぎ、勉強机の前に置かれた椅子に生徒を促すと、そいつは恐縮したようにそこへ腰掛けた。
「…突然押しかけてしまって、すみません一条さん。あ、僕、藤白っていいます。藤白楓。黒沼様の…ペットです」
「…ああ」
俺と同じ黒い首輪は、同学年のペットの証。
「…俺の部屋と名前、知ってたんだな」
「え?あ、…はい。一条さんって、ペットの間では結構有名ですから…」
「有名?」
身に覚えがない。
藤白は少し照れくさそうに告げた。
「…一条さんは、すごく綺麗な方だから…」
「っ!………綺麗とか、男に使う言葉じゃねぇだろ」
「でも実際僕も…そう思いますし。」
にこりと微笑む顔には邪気がない。
飼い主達に言われるのと違って、率直に容姿を褒められるのは少し気恥ずかしい。
そういえば、同じ立場の人間とこうやって話すの…久しぶりだな…
「…それで、俺に何か話があるんだろ?あんまり時間がないから、手短だと助かる」
「あっ、はい!…黒沼様が謹慎中の間に、どうしてもお礼と、謝罪がしたくてきました…」
「礼と謝罪?」
藤白は居住まいを正し、俺に向かって頭を下げた。
「先日僕を守ってくれたお礼が言いたくて。あの後竜前様にひどいことされなかったかも、心配で……僕のせいで巻き込んでしまって、本当にすみません」
「…お前が謝ることじゃないだろ。平気だ。お前の方こそ大丈夫か?殴られたりとかしてないか?」
「…謹慎中は服従の必要はないって、担任には言われて…だからこの3日間は黒沼様に会っていないんです。なので、今は…平気です」
含みのある言い方が、気になった。
「“今は”って……普段は?」
「………黒沼様はいつも、…あんな感じなので…」
「……」
「あ…でもほんとに殴られたりすることは少ないんです。脅されることはしょっちゅうですけど、それに、従順にしてれば優しいときもあるし、僕がちゃんと命令通りにすればお仕置きも、」
「…なぁ、藤白」
「っ…」
「…今は、俺たちしかいないから……俺の前で、無理する必要ない」
「……、あ…」
そう告げた直後、藤白の瞳に、涙の膜が張る。
膝の上に置かれたこぶしが何かをこらえるように、キュッと握られた。
「…く、黒沼様は…」
藤白の声が震える。
「あ……あの人は……とても恐ろしい人、…だから…」
「…ああ」
「…も、物みたいに、扱われます…こ、怖くて…でも抵抗出来なくて…っ……れ、レイプされるのも、つらくて…っ」
「ああ……わかるよ」
ポタポタと瞳から落ちる涙がこぶしへと落ちていく。
「……」
俺も、こいつと一緒だ。
今はまだ犯されたり、衆人環視の中辱められることはないが、いつ主人の気が変わって同じ目に遭うかも分からない。
この狂った学園の中で、俺たちペットは飼い主の玩具で、…奴隷だ。
藤白の嗚咽が、部屋に響く。
「……藤白。…スマホ持ってるか?」
「…ぇ…?」
俺は机に置かれたノートにペンを走らせ、一部をちぎってそれを渡した。
「…これ、…」
「俺の連絡先だ。 …どうしても辛いときは、連絡していいから。」
「っ…いち、じょう…さん…」
「…俺も…お前と一緒なんだ…」
俺たちに出来ることは、せいぜい従順なフリをして、機嫌を損ねないように気をつけて、媚びを売ること。
そうやって“壊され”ないように学園生活を送って、そうやって生き抜いて…
「卒業まで耐えれば…俺たちは自由になれるんだ…」
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