特殊な学園でペット扱いされてる男子高校生の話

みき

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ちょっかい

主人に噛みつかれ、所有印を残されてから数日が経った。
“極力一緒にいるようにする”という宣言通り、主人と共に居る時間が増え、今では登校も下校も教室を移動する時も一緒である。

チャイムが鳴って一旦授業が終わるが、次の教室移動も恐らく主人と一緒に行くのだろう。

「トイレ行ってくる。少しここで待ってて」
「…分かった」

そう告げて主人が教室から出て行く。
他の生徒達も続々と席を立ち、俺も次の授業の支度をしようと視線を机に落とした。
直後、隣の席の椅子が引かれる。

さすがに戻ってくるのが早すぎないかと顔を向けると、そこに居たのは主人ではなかった。

「やっほ。久しぶり、奏多くん」

「!…ま、みや…」
「名前知ってくれてるんだ。嬉し。前は喉奥まで突っ込んじゃってごめんなー」
「っ……」

最近は間宮の相手をさせられることもなく、こいつがここにいることが予想外すぎて、席を立って離れようとしたがそれは叶わなかった。

「俺もいるぜ。奏多ちゃん」
「っ!!」

いつの間にか背後から来た男、黒沼にガッと椅子の背を握られ、椅子を引いて立ち上がることを阻止される。

「な…、」
「遊ぼうぜ」
ペロリと舌なめずりをする黒沼。

「相変わらずめっちゃ美人だよなー♡」
そう言って近寄ってきた間宮は俺の髪を一束掴んだ。

「髪めっちゃサラサラだしいい匂い…これ寮のシャンプー?じゃないよな?」
「…っ…」
「…あれ?てかこれ…首のとこ、薄いけどキスマーク?」
「あ?まじか」
「数やば…凪に付けられた?」
「…ッ、…」
「痕まで付けるとか、竜前アイツもかなり執着してんなぁ……でもま、こんだけ美人なら愛でたくもなるか……」

黒沼に首輪と肌の隙間に指を差し入れられて、上に向けて引っ張られる。
必然的に黒沼を見上げる角度になり、細められた瞳が間近に迫る。

「…あー…やっぱいいなお前…まじでソソる……」
「っ…」

そのまま寄せられる顔に、身を固くしたその時、

「ちょっと。」

苛立ったように眉根を寄せた主人が、足早に駆け戻ってきた。

「うげ。」
「あはは、バレちゃった。戻ってくんの早いって凪ー。」

黒沼が首輪から手を離し、間宮が軽快に笑う。
主人は二人を睨みつけ、ため息をついた。

「まったく…油断も隙も無いね君たち。早く奏多から離れてよ」
「チッ」
「ちぇー残念。それにしたって凪、痕まで付けちゃって最近奏多くん独占しすぎじゃね?何で前みたく貸してくれねーの?」

「…俺の勝手でしょ。欲求不満なら自分のペット相手にしなよ。」

「んー、俺のペットは従順すぎてつまんないっつーか、もうそんなに燃えないんだよなー」
「右に同じ。すぐ泣いて怯えやがるし、こいつくらい強気じゃねーとヤリ甲斐がねぇ」

ニヤリと笑ってこちらを見る黒沼。それが至極不快で、視線から逃れるように目を逸らす。

「…で?いつまでここにいるわけ?玲も黒沼も早く自分の教室に戻りなよ。ウザい」
「はは。辛辣。んじゃまたね奏多くん。いつでも俺らの教室遊びに来ていいからさ」
「じゃーな奏多。また来る。今度好きな物教えろよ。次来るとき持ってきてやるから」

「二度と来ないで。早く消えてよ」

主人がシッシッと追い払う仕草をすると、間宮と黒沼は笑いながら扉の方へ向かって行った。

苛立った様子で二人の背を睨む主人。俺は席に座ったまま動けない。
二人が去り、姿が完全に見えなくなると主人は再びため息をつき、無言で俺を見下ろした。

「……」
「……」

…沈黙が恐ろしい。とりあえず弁明しなければ…。

「…あいつらの方から勝手に来たんだ。命令通り会話もしてない。連絡は…する暇がなかったから出来なかっただけで、」
「……大丈夫、わかってるから。君に怒ってるわけじゃないよ」
「っ…」

ぽん…と頭の上に手を置かれる。
先ほど間宮が触れていた部分に重なるように、主人の手が移動する。
そのまま俺の髪をすく手つきは、優しかった。

「…触られたのは、ここだけ?」
「……ああ」
「…玲も黒沼も、いくら言っても訊かないから、ほんっとどうしようもないね。君は俺の命令ちゃんと守れて偉いじゃん…いい子だね……」
「…、ん…っ…」

首筋をくすぐるように撫でられて、思わず声が出た。

「…ふふ……そろそろ試験が近いから、しばらく調教は休みにしようか。
玲達がまたちょっかいかけに来る可能性もあるし、授業が終わったら今日も部屋まで送るよ。帰らずに待ってて。」
「…分かった」

頷くと微笑まれ、褒めるように何度か頭を撫でられる。
…雰囲気が、先ほどまでと違う気がする。
苛立ちや怒りは鳴りを潜めて、主人が醸し出す空気は、どこか穏やかだ。

「ふふっ…」
「……(…何なんだ……調子が狂う…)」 

人に無理矢理噛み痕を付けたかと思えば急に優しくしたりして、主人の言動は全くもって、理解不能だ。

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