特殊な学園でペット扱いされてる男子高校生の話

みき

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ご褒美 2

「来て」

放課後、主人にそう言われるまま着いていって、到着したのは保健室だった。
ノックもせず扉を開けた主人と共に中へ入る。
あの変態保健医の姿はなかったが、置かれたベッドを見て身体検査の時を思い出し、体が強張った。

主人は内側から入り口の扉の鍵をかけた。
カチャリと音が響く。
息を吞み、硬直した俺をそのままに、主人はベッドの方へ歩いていき、ボスッとマットレスに腰を下ろし、告げた。


「ご褒美、何がいい?」

「……、は、?」

褒美?

「昨日の俺と先生の会話聞いてたでしょ。試験頑張ったご褒美だよ。何が欲しい?」

…褒美に、何が欲しいか?……俺にそれを言う権利があるのか?いきなりそんなことを、言われても……

「…別に…何もいらない」

「はぁ……言うと思った。……座りなよ。」

主人は顎で自分の隣を示した。
俺は戸惑いつつベットの端に腰を下ろした。
主人はそんな俺を見つめ、静かに告げた。

「……靴脱いで、ベッドの上に寝て。頭はここ。」

主人はポンポンと自分の太ももを手のひらで叩いた。

…意味が、分からない。
頭はここ?…俺が主人の膝を枕にするのか?そんなことをして、許されるのだろうか。

「早く。」

焦れたような声色。
俺は恐る恐る言うとおりに靴を脱ぎ、ベットに横になった。そしてゆっくり、本当にゆっくりと、主人の膝の上に、頭を乗せた。

「………」
「………」

無言の時間が流れる。
居たたまれない。落ち着かない。こんな状況は本来であればあり得ない。
視線の置き場に、迷う。


「………君って、何が好きなの?」

「……は?」
「好きな食べ物は?」

再びの予想外すぎる質問に困惑し、主人を見上げる。主人の眼は真剣に俺を見下ろしていた。冗談では、ないらしい。
俺は少し考えて、頭に浮かんだ物を答えた。

「……チョコレート」

「!…へぇ……」

主人は瞠目した。

「…意外だね。君って甘い物とか食べないのかと思ってた」
「……甘すぎるのは…嫌いだ。けど苦めの…ビターチョコレートは好きだから、勉強の合間に…食べたりする」
「…そうなんだ。知らなかったな……じゃあ、学校がない日は部屋で何してるの?」
「…読書したり…寝たり……予習…」
「ふふ……真面目だね……兄弟は?いる?」
「……弟が、1人いる……」

趣味、良く聴く音楽、好きな本、得意教科に、家族構成……

とりとめの無い、パーソナルな質問を繰り返される。
俺はそれに、聞かれるままに答えていった。



……この体勢になってから何分経っただろうか。質問されて、答えて、単調なやり取り。
顔の下から感じる暖かな体温。時たま優しく頭を撫でる主人の手の感触。それがやけに心地よく思えて、横になりながらつい、うつらうつらとしてきてしまった。

「……眠いの?」
「……」
不意に尋ねられ、俺は素直に頷いた。
昨日は暑くて寝苦しく、あまり寝ていない。
快適な室温になるよう調整された保健室。柔らかなベットと主人の体温。おあつらえ向きな環境に、瞼が下がってくるのは必然で。

…ああ…だめだ…このままでは本当に眠ってしまう。
それはさすがにマズいと身を起こそうとした俺を、主人の手が制した。

「……?」
「……いいよ。眠いなら寝なよ。このまま」

「……この、まま?」
「そう。……言ったでしょ。ご褒美だって。…校舎裏で君にされた時、案外悪くなかったから、君にも体験させてあげる。
飼い主の膝で寝るなんて経験、めったに出来ないんだから、有り難く受け取りなよ」
「……」

意味が、分からない。分からないが、子どもを寝かしつけるように俺の頭を撫でる手つきは優しくて、主人の機嫌がいいときのソレだとわかる。
こうやって触れられることにはある意味で慣れてきてしまったし、不快感もない。

本当にこれが褒美なら、……いいか…寝てしまっても…。
たぶん…きっと仕置きもされないだろう、本人がいいと言っているのだから……それにもう、…眠気に…抗えない。

「……ん…」

もぞもぞと少し身じろぎして、寝やすいよう体の位置を整えて力を抜いた。
頭の重みを、主人の膝に預け、俺はゆっくりと目を閉じた。




「……………お休み、……奏多」


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