特殊な学園でペット扱いされてる男子高校生の話

みき

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変化 1

目覚ましの音で、目を開ける。
憂鬱な、朝の始まり。

気怠い身体を起こし、朝のいつものルーティンを行う。
粗方登校の準備を終えたとき、部屋のインターホンが鳴った。閉められた部屋の鍵を開ける。
毎朝の迎えで分かったことだが、主人は朝が早い。

「おはよう。」
「…おは、よう」

ほとんど準備は終わっていたが、首輪をまだ付けてない。
入り口近くの棚に置かれた首輪に手を伸ばすと、先に主人の手がそれを掴んだ。

「?」

「付けてあげるよ」

「…いや…自分で…」

「いいから」

「…」

言われ、仕方が無いので、立ったまま主人と向き合う。
しかし、自分から付けてやると言ったくせに、主人の手はなぜか動かない。
見ると、主人の目線は俺の顔より下の方を見ていた。

「…消えてるね…ここ」 

「は?…、っ!」

いきなり主人が俺の首に顔を寄せてきた。
そのまま首筋に口付けられ、肌を吸われる。

「んっ…!」

首筋から鎖骨の方へ、主人の顔が移動していき、何度も強く吸い付かれる。
その度主人の髪の毛がさわさわと首に当たって、くすぐったさに思わず身を引く。
すると逃がさないとでも言うように主人の手が腰に回され、グッと引き寄せられた。

「っ…」

主人の腕に抱き締められ、密着したまま動けない。
触れた部分から主人の体温を感じ、ふわりと主人の使うシャンプーの香りがした。


「……、……(……なんなんだよ……)」

何がしたいのか分からないが、ペットである俺に、主人の行為を拒む権利はない。

しばらくの後、主人は吸い付いた部分を見て満足げにふふっと笑い、俺から体を離した。

そしてそのまま首輪を手に取り、そっと俺の首にはめてきた。
隙間を確認するように、指が首と首輪の間に入りこむ。

「苦しくない?」

「…ああ」

主人はまた少し笑うと部屋のドアを開けた。 

「じゃあ…行こうか」

主人の言葉に頷き、かばんを持って、部屋を出た。


寮のある棟から校舎へ向かって歩いて行く。

いつものように主人の背を見ながら付いていくと、不意に主人が立ち止まった。

「あ、そうだ。これ。」
「?」

主人はこちらを振り向き自身の鞄に手を入れると、中から手のひらサイズのものを取り出した。

「たまたま手に入れたからあげる。いらなかったら捨てていいから」

見ると、市販されているチョコレートの箱菓子が、主人の手に握られていた。

「……(……俺の好きな菓子やつ……)」
「はい。」
「……」

戸惑いながらも、差し出されたそれを受け取る。

「それと、君が前に好きだって言った本」
「?」
「読んだんだけど。」
「…読んだ、のか……(……わざわざ…?)」
「普段本なんて読まないから時間はかかったけど、新鮮で面白かったよ。小説も案外悪くないね」
「……そう、…か。」

それだけ言って、ふいっとすぐに前を向いて歩き出した主人。


「……(……今日は一段とワケわかんねぇな…)」


主人の態度がどこか変わったように思うのは、1週間前のあの日、褒美だと称したあの一件からだ。

結局あの後主人の膝の上で寝たが、特に何をされるでもなく、起きてからも頭を撫でられ続けただけで、もちろん仕置きもされなかった。

今まで一緒に居ても会話なんてろくにしなかったのに、先ほどのようにたまに話しかけられるようにもなった。
ただの気まぐれか。一緒にいる時間が増えて、無言に飽きてきたのか。

「……(……あんなふうに、腕に抱かれたのも初めてだ……まぁ…なんにせよ学業に支障がないなら…別にいいか……)」

主人から渡されたチョコレートを鞄の中に仕舞い、俺は主人の背を追った。


校舎に着く。
主人と共に中へ入り、階段を登って教室に向けて廊下を進んでいく。
すると前方から、見知った顔の生徒が歩いてきた。

「…あ……」

相手もこちらに気付き、立ち止まる。

「…一条さん…」


この学園内では俺と同じ立場の人間ペット、藤白だ。

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