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22 最終話

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俺の家の使用人は変わってる。

だがそのおかしな言動は、全て俺への好意から来るものだったらしい。

伊月に告白された日。
あの日から伊月は、また少し変わった。

俺への愛?情熱?みたいなのを隠さず口にするようになった。

「本日も大変麗しいです。要様」

以前にもまして笑顔が眩しくなった。
笑う回数も増えた。犬だったら全力で尻尾を振っているような感じでテンションも高い。

「寝癖がついていますよ」

朝家を出るとき、髪に触れて整えてくれる。
こういう物理的な距離も近くなったし、色気みたいなのも全開で出してくるようになった気がする。メイドたちがきゃあきゃあ騒いでた。

ああ、そういえば風呂場で遭遇する回数は極端に減った。
それを指摘したら俺が疑わないのをいいことにわざと覗きに来ていたことを白状した。
「故意では二度と致しません」と深々と頭を下げて謝ってきたから許してやった。


「要様」

俺の名前を嬉しそうに呼ぶ伊月。
こんな格好いいやつが俺のこと好きなんて、まだ全然実感が沸かない。

告白はされたけど、伊月は返事を求めてはこない。
「私の気持ちを知っていてもらうだけで十分です。」
「貴方のお側にいられるだけで私は本当に幸せです」とか言ってる。

俺自身、伊月のことを恋愛対象として見れるのかどうかも、まだはっきりと答えられずにいる。
俺は伊月の言葉に甘えて、もう少し時間をもらって考えようと思うんだ。


「好きですよ。要様」

ただ、真っ直ぐな瞳で真剣にそう告げられるのは悪い気はしなくて。

「大好きです!」

満面の笑みを浮かべて愛を伝えられると、最近はなんか、胸がドキドキするようになってしまった。


これはまだ、伊月本人には言っていない。

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