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幼気な理想と現実。
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その日の夕暮れ時、
秀はケースに入れたフレアのみを持ち、
あの日の草原へ向かった。
マーシャー君、少々出かける。
お買い物…では無いですね。
手に持っているヴァイオリンケースを見て言う。
練習ですか?
まぁ、そんなところだね。
僕もご一緒していいですか?
すまないが、これは私とフレアの対話なんだ。
フレアさん?
この子の名前だ。
小さな頃からいつも一緒だった。
楽器に名前を…!
詩的ですね!
自ずと、自分自身の望む音を奏でてくれるんだ。
名前には意味が有るだろう?
じゃあ…フレアさんの意味は…
炎とか…燃え上がるとかですかね?
確かにそう言ったニュアンスだ。
しかしながら…私は厳かで切ないメロディーを好んでいる。
だから、聴衆が私の旋律を聴いて、
フレア…燃え上がる…その様を見たいんだ。
へぇ……!
やっぱり貴方は真の音楽家ですね…!
じゃあ、もし公の場で秀さんが活躍してたら
僕が一番最初に燃えます!
本当にマーシャー君は面白いね…w
元気が出たよ。
笑ってくれた… !
最近秀さん元気そうだったけど笑顔は初めて見た…!
じゃあ、そろそろ行くよ。
8時をもっと良いものにするから待っていてね。
…!はい…!!!
あの日目覚めた草原にて。
夜風を可視化する短い草達が波立ってる。
秀はそれを眺めながら
あの日横目に見た少々大きな切り株に座った。
それは道中の歩き疲れを程よく回復している。
そして都合のいい事に、彼はいつも即興演奏ばかりするので
譜面台も楽譜も要らなかった。
そろそろ始めるか。
秀は立ち上がってケースを切り株の上へ置き、フレアを取り出した。
チューニングを済ませ、
演奏は始まった
いつも通りただひたすらに。切ないメロディを弾いている。
先程語って居た夢は幻想に近しいのかもしれない。
聴衆を盛り上げるどころか、
契約会社にクビ同然の扱いを受けたのだから。
愚痴を紡ぐ様にフレアに音を乗せる。
ガサ、
物音がした。
でも気にしない。
小動物だろうがなんだろうと対話を妨げることは不可能だ。
最後の32小節を弾き上げた。
ブラボー。貴方は称賛に値する人物だ。
…。
秀は聞こえなかった振りをし、フレアを休ませた。
がしかし。
その人物は近づいてきて、秀の左手を掴んだ。
受け取ってもらえるだろうか?
冷たい感触。
次第に秀とその人物の体温で温まる。
ただのチップですよ。
秀は隙をついて手元を見た。
金貨だった。しかも手の感触からして複数枚有る。
…。一体何を言ってらっしゃるのか。
そのままの意味ですよ。
秀は再び目を見ずにフレアを磨いて居た。
ヴァイオリンですか…。
巷では3才の頃に才能を見いだせないと
弾く事すら許されないらしいですよねぇ?
貴方は才能が多い様ですね。
…。
秀はフレアから視線を外した。
秀はケースに入れたフレアのみを持ち、
あの日の草原へ向かった。
マーシャー君、少々出かける。
お買い物…では無いですね。
手に持っているヴァイオリンケースを見て言う。
練習ですか?
まぁ、そんなところだね。
僕もご一緒していいですか?
すまないが、これは私とフレアの対話なんだ。
フレアさん?
この子の名前だ。
小さな頃からいつも一緒だった。
楽器に名前を…!
詩的ですね!
自ずと、自分自身の望む音を奏でてくれるんだ。
名前には意味が有るだろう?
じゃあ…フレアさんの意味は…
炎とか…燃え上がるとかですかね?
確かにそう言ったニュアンスだ。
しかしながら…私は厳かで切ないメロディーを好んでいる。
だから、聴衆が私の旋律を聴いて、
フレア…燃え上がる…その様を見たいんだ。
へぇ……!
やっぱり貴方は真の音楽家ですね…!
じゃあ、もし公の場で秀さんが活躍してたら
僕が一番最初に燃えます!
本当にマーシャー君は面白いね…w
元気が出たよ。
笑ってくれた… !
最近秀さん元気そうだったけど笑顔は初めて見た…!
じゃあ、そろそろ行くよ。
8時をもっと良いものにするから待っていてね。
…!はい…!!!
あの日目覚めた草原にて。
夜風を可視化する短い草達が波立ってる。
秀はそれを眺めながら
あの日横目に見た少々大きな切り株に座った。
それは道中の歩き疲れを程よく回復している。
そして都合のいい事に、彼はいつも即興演奏ばかりするので
譜面台も楽譜も要らなかった。
そろそろ始めるか。
秀は立ち上がってケースを切り株の上へ置き、フレアを取り出した。
チューニングを済ませ、
演奏は始まった
いつも通りただひたすらに。切ないメロディを弾いている。
先程語って居た夢は幻想に近しいのかもしれない。
聴衆を盛り上げるどころか、
契約会社にクビ同然の扱いを受けたのだから。
愚痴を紡ぐ様にフレアに音を乗せる。
ガサ、
物音がした。
でも気にしない。
小動物だろうがなんだろうと対話を妨げることは不可能だ。
最後の32小節を弾き上げた。
ブラボー。貴方は称賛に値する人物だ。
…。
秀は聞こえなかった振りをし、フレアを休ませた。
がしかし。
その人物は近づいてきて、秀の左手を掴んだ。
受け取ってもらえるだろうか?
冷たい感触。
次第に秀とその人物の体温で温まる。
ただのチップですよ。
秀は隙をついて手元を見た。
金貨だった。しかも手の感触からして複数枚有る。
…。一体何を言ってらっしゃるのか。
そのままの意味ですよ。
秀は再び目を見ずにフレアを磨いて居た。
ヴァイオリンですか…。
巷では3才の頃に才能を見いだせないと
弾く事すら許されないらしいですよねぇ?
貴方は才能が多い様ですね。
…。
秀はフレアから視線を外した。
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