ボクわるいスライムじゃないよ

唐土唐助

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スライム、踏まれたらすぐ死ぬ

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おかしいとは思わないか?

昨今、現代社会の人々が異世界に転移する話が人気を博しているらしい。
しかしおかしいとは思わないだろうか。
人が一人消えているのだ。時には高校生がクラス丸ごといなくなるなんてことも……。
質量にすれば人間1人60kgとして人クラス40人。
60kgかける40で、なんと2400kgの質量が消失しているのだ。
これだけたくさんの人がいなくなっているのは、世界にとって大きな問題ではないだろうか。

質量保存の法則により、世界の質量は大きく変化することはない。

確かに核爆発などの大きな力が加われば、その質量は変化するが、どんな大爆発であっても世界の質量は1gも変化はしないのだ。

そんな中で、いきなり一つの世界では質量が人間1個分、およそ60kgが増え、かたや一方の世界では質量が60kgが減るのだ。

いったいどれ程の副作用が起きるのか想像もできない。
地球が消滅するほどの大爆発が起きるか、はたまた全てを飲み込むブラックホールが生まれるか、まぁとんでもない事が起きるのは間違いないだろう。

ではなぜその様な事が起きないか。
答えは簡単、異世界からも同様の質量の物質がこの世界に送られて来ているのだ。

超有名漫画、鋼の錬金術師の主人公、エドワードエルリックの言葉を借りると、人間の材料として、概ね水35L、炭素20kg、アンモニア4L、石灰1.5kg、リン800g、塩分250g、硝石100g、イオウ80g、フッ素7.5g、鉄5g、ケイ素3g、少量の15の元素が必要との事だ。
そう、人間一人が転移する度に、異世界から上記物質が現代に送られるのである。

しかしこれは「概ね」の数値である。

たまには違うものも異世界からやってくるのである。
それは手違いか、はたまた奇跡か。

その日、現代世界にやってきたのは水およそ35リットルに加え、ほんの僅かな「水のようなもの」であった。

それは生まれたままばかりの魔物。僅か3cm程のスライムであった。

お察しの通り、これからこのスライムの話をしていく。
しかし、このスライムはもちろん魔物と呼ばれる野蛮な生き物だ。つまりは畜生であるから、このスライムには固有の名前等はもちろんない。

だが、このスライムについて語るにあたり、ただだだスライムと呼ぶのでは些か味気ない気がする。
その為私はこのスライムにショゴス(仮)という名前をつけることにする。

察しの言い方は勿論お気づきになられたと思うが、この名はかの有名なハワード・フィリップス・ラヴクラフトの書いた小説、クトゥルフ神話物語から付けた名前である。

さて、少し前置きが長すぎたようだ。
ショゴスの話を始めようか。

現代に召喚されたショゴスはこの世界のほとんどの生物より弱かった。

スライムという生物を簡単に分かりやすく説明するとすれば、アメーバのような生き物が知能を持ったと思ってくれ。
スライムは体内に核と呼ばれる球体を持っており、その核が破壊されるとスライムは死ぬ。

この核というのは、魔素という物の塊。魔素についてもできれば詳しく説明したいのだが、現代の言葉では説明しようがない。
何故なら魔素は、魔力と言われる現代科学では解明されていない力の源であるからだ。少々無責任かもしれないが、皆さんはこの魔素について、なんとなくこんな物かと空想しながら読み進めていってほしい。

魔素は大なり小なり全ての生き物に含まれている。それは現代世界でも例外ではない。人間や、犬、虫にだって魔素はある。

スライムは捕食と言う形でその魔素を体に取り込み、核を少しずつ大きくし、成長させていくのだ。

そんなスライムのショゴスにとって、召喚された場所と季節は非常に幸運であった。
場所は日本という国の、人通りのほぼ無い草むら。さらに季節は7月。

何が幸運かと言えば、僅か3cmのショゴスにも捕食できる、小さな虫達が草むらに沢山いたことだ。

ショゴスは本能の赴くまま、蟻や蝿を捕食した。

数日かけて、ショゴスは蝿や蟻の魔素を取り込み、核を成長させ、体長を3cmから5cmに成長させた。
たかが2cm大きくなっただけ、と思うかもしれないが、その体長は最初の倍近くだ。

さらにショゴスは、この数日で草むらから近くの畑に移動していた。この移動については故意ではない、ショゴスにそこまでの知能はまだなかったが、この移動は実に幸運なことであった。

畑には蟻や蝿よりも多くの魔素を持つ芋虫等が大量にいたのである。

芋虫は今まで捕食していた虫達と比べかなり大きい生物だったが、幸いにも芋虫は武器を持たない弱い生物だった。
ショゴスは難なく芋虫を捕食する。

こうしてショゴスは畑の芋虫を食らいつくし、それだけでは飽きたらず、さらにはバッタに手を出した。

バッタは芋虫と違い、噛みついたりし攻撃を加えてきたが、その攻撃も核には届かず、バッタ達は蹂躙されるのみであった。



これはある日の農家の話である。

この時期になるとバッタや芋虫による、作物への被害が目立つ。
芋虫はまだしも、バッタの退治はとても困難だ。毒を散布しても作物がいたんでしまったりする割に、バッタ達は平気な顔をしていたりする。

今年はどうしたもんかと、畑仕事をしていた彼は、その日奇妙な異変に気がつく。

今日1度もバッタや芋虫を見ていない。

ゾワリと背中をなぜられたような嫌な寒気を感じた。

ここでこの男が危険を察知し、なんらかの措置を講じていれば、ショゴスここで死んでいたかもしれない。

しかしそうはならなかった。

男は考えるのを止めた。

「よく分からんが、ラッキー」
その年の男が作った農産物は、質が高く豊作であったそうだ。


現在のショゴスの体長 10cm

レベル1

力 1

体力 2

魔力 2

素早さ 1

知力 2

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