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辺境の造船都市 クルトラカ
浮力の源
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俺たちはそれぞれ作成してほしい装備をヘットルに伝えた。へットルは俺たちの要望を静かに頷きながら聞いている。
ハクアレティスは自分の装備まで作ることができて本当に喜んでいるようだ。恩返しに、みっちり稽古をつけてあげる!と意気込んでいた。ありがたいが、彼女の強さを見た後だと少し心配になる。怪我はしたくない。
ヘットルに希望を伝え採寸を終えたところで、彼は口を開いた。
「なああんちゃん、そのカバンにはまだ鉱石が入ってるんじゃないか?ミスリルとは別の鉱石が」
街1番の鍛冶屋の嗅覚だろうか。ヘットルの言葉は間違いなく、俺がミスリルと同じ場所で見つけた、人の頭ほどの鉱石のことを指している。ここでヘットルに見せるべきか逡巡する。
結局俺は、リターナとハクアレティス、それからヘットルを信じることにした。それに、この石は今後も持って歩くには大きすぎる。
ミスリルを並べたカウンターに、鉱石を置く。ヘットルは目を見開き、口を二、三回開いては閉じる。それから鉱石の上に掌を置いて、深呼吸をした。
ヘットルが口を開く。
「あんちゃん。これはな、飛行石の原石だ。飛空艇の浮力の源だよ。しかしこの大きさと純度の原石は見たことがない。一刻も早く加工すべきだ」
「ユーリ、こんな物まで持っていたの」リターナがぽつりと言った。
「わたしが見つけたんだよ!」サティが胸を張ってリターナに言う。
飛行石。想像もしていなかった単語に驚く。これもあの神様からのプレゼントなのだろうか。いや、神様は機会をくれたに過ぎない。俺たちが見つけたんだ。
「俺、飛空艇を手に入れたいんだ。加工ってどうすればいいんだ?」
「飛行石は大地から掘り出すと少しずつ軽くなっていくんだ。加工できる時間は限られている。俺の兄が加工職人なんだが、ちょうど数日前から城で急用らしくてな、いつ帰ってくるのか分からないんだ」ヘットルが言った。
ヘットルの言葉を聞いて、リターナとハクアレティスは何やら小声で話し始めた。俺とサティには聞こえない。
少ししてから、リターナが話し始める。
「ヘットルのお兄さんのことは私たちに任せて。多分連れて来れると思う」
「本当か?俺にはどうしたらいいか分からないから、ぜひお願いしたい」一体リターナはこの街でどういう立場なのだろう。俺にはリターナを頼るしかなかった。
「よし、じゃあ飛行石は一旦返す。貴重な物だからここで預かるわけにもいかん。装備については俺に任せてくれ。ただ1週間はかかるぞ」
ヘットルとも話がついた。
ありがたいことにヘットルは、装備ができるまでの間、代わりとなる装備を貸し出してくれた。丸腰だった俺とサティは、武器と軽装を手に入れて、冒険者としては一人前の格好になった。
「これで稽古をつけてあげられるね!」リターナが満足そうに言った。
「何から何までありがとうな」
俺たちは鉄髭堂を後にすると、商業区の中心に戻りながら、残るミスリル鉱石を商人へ売った。
金貨1枚と交換だ。これで1か月は生活に困ることはないらしい。
商業区からさらに街の中心へと向かう。
いつの間にか陽は暮れ始め、四人の影が長くなる。
道をゆく人々は足早に居住区へと向かっていく。家路を急いでいるのだ。
俺たちはリターナがおすすめする宿へ向かっていた。
「ほら、着いたよ」リターナが連れてきたのは、商業区から行政区へと続く目貫通りに面した土地に建つ、煌びやかなホテルだった。そう、宿ではない、これはホテルと呼ぶのが相応しい。俺は直感していた。そして心躍っていた。どんな寝床が待っているのだろうか。
「こんなところ、泊まれるのか?」俺は念のためリターナに聞いた。
「もちろん。言ったでしょ、さっきの金貨1枚渡せば1か月は贅沢に過ごすことができるよ」
「私も遊びに来ようかな」ハクアレティスがまんざらでもない顔で言った。
「いつでも来てー!わたしもっと2人と遊びたい!」サティはすっかりリターナ達のことが気に入ったようだ。友達ができたようで俺も嬉しい。
「じゃあ私たちはここで。また明日ね」
リターナ達はそう言って、街の中心、行政区へと歩いていった。行政区には宿はない。城や公的施設があるだけだと聞いている。
ヘットルの兄をさっそく探しにいったのだろうか。
ホテルの中へと入る。入り口は大きな吹き抜けになっており、甘いいい香りがする。
受付らしき場所へおずおずと進む。
「お泊まりですか?」受付の女性は優しく微笑んで、俺たち二人を見る。
「はい。長期で泊まりたいのですが」そう言って先程手に入れた金貨を差し出す。
もったいないか、とも考えたがミスリル鉱石ひとつくらい探そうと思えば見つけられる気がしたのだ。
いつ他の転生者から狙われるか分からない。節約より、安全と快適を選ぶことにした。
「こちらですと、1か月はお泊り頂けます。よろしいですか?」ホテルの顔だけあって、受付の女性は整った顔立ちをしている。二十代後半だろうか。
「はい、お願いします」
「ではお部屋へ案内します」1か月あればこのお姉さんと仲良くなれるかもしれないな、などと考えていると、何となくサティの俺を見る目が気になった。いかんいかん。
ホテルを紹介してくれたリターナに感謝をしながら、俺とサティは部屋へ向かった。
ハクアレティスは自分の装備まで作ることができて本当に喜んでいるようだ。恩返しに、みっちり稽古をつけてあげる!と意気込んでいた。ありがたいが、彼女の強さを見た後だと少し心配になる。怪我はしたくない。
ヘットルに希望を伝え採寸を終えたところで、彼は口を開いた。
「なああんちゃん、そのカバンにはまだ鉱石が入ってるんじゃないか?ミスリルとは別の鉱石が」
街1番の鍛冶屋の嗅覚だろうか。ヘットルの言葉は間違いなく、俺がミスリルと同じ場所で見つけた、人の頭ほどの鉱石のことを指している。ここでヘットルに見せるべきか逡巡する。
結局俺は、リターナとハクアレティス、それからヘットルを信じることにした。それに、この石は今後も持って歩くには大きすぎる。
ミスリルを並べたカウンターに、鉱石を置く。ヘットルは目を見開き、口を二、三回開いては閉じる。それから鉱石の上に掌を置いて、深呼吸をした。
ヘットルが口を開く。
「あんちゃん。これはな、飛行石の原石だ。飛空艇の浮力の源だよ。しかしこの大きさと純度の原石は見たことがない。一刻も早く加工すべきだ」
「ユーリ、こんな物まで持っていたの」リターナがぽつりと言った。
「わたしが見つけたんだよ!」サティが胸を張ってリターナに言う。
飛行石。想像もしていなかった単語に驚く。これもあの神様からのプレゼントなのだろうか。いや、神様は機会をくれたに過ぎない。俺たちが見つけたんだ。
「俺、飛空艇を手に入れたいんだ。加工ってどうすればいいんだ?」
「飛行石は大地から掘り出すと少しずつ軽くなっていくんだ。加工できる時間は限られている。俺の兄が加工職人なんだが、ちょうど数日前から城で急用らしくてな、いつ帰ってくるのか分からないんだ」ヘットルが言った。
ヘットルの言葉を聞いて、リターナとハクアレティスは何やら小声で話し始めた。俺とサティには聞こえない。
少ししてから、リターナが話し始める。
「ヘットルのお兄さんのことは私たちに任せて。多分連れて来れると思う」
「本当か?俺にはどうしたらいいか分からないから、ぜひお願いしたい」一体リターナはこの街でどういう立場なのだろう。俺にはリターナを頼るしかなかった。
「よし、じゃあ飛行石は一旦返す。貴重な物だからここで預かるわけにもいかん。装備については俺に任せてくれ。ただ1週間はかかるぞ」
ヘットルとも話がついた。
ありがたいことにヘットルは、装備ができるまでの間、代わりとなる装備を貸し出してくれた。丸腰だった俺とサティは、武器と軽装を手に入れて、冒険者としては一人前の格好になった。
「これで稽古をつけてあげられるね!」リターナが満足そうに言った。
「何から何までありがとうな」
俺たちは鉄髭堂を後にすると、商業区の中心に戻りながら、残るミスリル鉱石を商人へ売った。
金貨1枚と交換だ。これで1か月は生活に困ることはないらしい。
商業区からさらに街の中心へと向かう。
いつの間にか陽は暮れ始め、四人の影が長くなる。
道をゆく人々は足早に居住区へと向かっていく。家路を急いでいるのだ。
俺たちはリターナがおすすめする宿へ向かっていた。
「ほら、着いたよ」リターナが連れてきたのは、商業区から行政区へと続く目貫通りに面した土地に建つ、煌びやかなホテルだった。そう、宿ではない、これはホテルと呼ぶのが相応しい。俺は直感していた。そして心躍っていた。どんな寝床が待っているのだろうか。
「こんなところ、泊まれるのか?」俺は念のためリターナに聞いた。
「もちろん。言ったでしょ、さっきの金貨1枚渡せば1か月は贅沢に過ごすことができるよ」
「私も遊びに来ようかな」ハクアレティスがまんざらでもない顔で言った。
「いつでも来てー!わたしもっと2人と遊びたい!」サティはすっかりリターナ達のことが気に入ったようだ。友達ができたようで俺も嬉しい。
「じゃあ私たちはここで。また明日ね」
リターナ達はそう言って、街の中心、行政区へと歩いていった。行政区には宿はない。城や公的施設があるだけだと聞いている。
ヘットルの兄をさっそく探しにいったのだろうか。
ホテルの中へと入る。入り口は大きな吹き抜けになっており、甘いいい香りがする。
受付らしき場所へおずおずと進む。
「お泊まりですか?」受付の女性は優しく微笑んで、俺たち二人を見る。
「はい。長期で泊まりたいのですが」そう言って先程手に入れた金貨を差し出す。
もったいないか、とも考えたがミスリル鉱石ひとつくらい探そうと思えば見つけられる気がしたのだ。
いつ他の転生者から狙われるか分からない。節約より、安全と快適を選ぶことにした。
「こちらですと、1か月はお泊り頂けます。よろしいですか?」ホテルの顔だけあって、受付の女性は整った顔立ちをしている。二十代後半だろうか。
「はい、お願いします」
「ではお部屋へ案内します」1か月あればこのお姉さんと仲良くなれるかもしれないな、などと考えていると、何となくサティの俺を見る目が気になった。いかんいかん。
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