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歴史ある図書館の会議室を借りたら仔猫がいた夢。

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 こんな夢を見た。
 自分は学生でどこかの図書館の会議室を使いたいと思った。
 スマートフォンで近所の図書館を検索すると、予約だけすれば無料で使える会議室を発見した。
 そこは歩いて行ける距離にある、歴史ある図書館で明治風の茶色い立派な建物なのだが、きちんとメンテナンスされているのか、古さの中にも気品があって誰に訊いても、
「あそこの図書館は立派で綺麗だ」
 と答えるような建物だった。

※ちなみにこれは完全に夢なので、そんな建物は近くにはない。実際に見たこともない。

 出来るだけ早くその図書館の会議室を使いたいので予約をすると、ちょうどその日の放課後に会議室の予約が取れた。
「私も行きたい」
 とただの友人なのだが、可愛らしい女子生徒と僕とで歩いてその図書館に向かい、すぐに着いた。
 受付で会議室を予約していることを話すと、
「ああ。東岡(あずまおか)さんですね。これが鍵です。今から二時間で返却して下さい」
 と言われ、二階にある会議室まで階段を登って行く。
 ここに来るまで、女学生と自分は何か他愛のない会話をしていたのだが、今は全く覚えていない。
 預かった鍵で、会議室の扉を開けると、二十人くらいが授業を受けられそうな部屋だった。
 ホワイトボードには水性マジックで書かれたものを、消した跡が残っている。
「じゃあ、早速始めようか」
 と僕と女子生徒は好きな席で、各々学生鞄から教科書やノートや筆記用具をテーブルに置いて、自習をしようとすると、
 ニャ~。
 と言う声がはっきりと聞こえた。
「ねえ。今、ニャ~って聞こえなかった?」
「聞こえた?」
 するともう1回、
 ニャ~。
 と聞こえてくる。鳴き声の感じからして、仔猫だろう。
 二人は鳴き声がした、ホワイトボードの辺りを探してみると、ホワイトボードの裏には手を洗う洗面台があり、そこには白い毛並みに、向かって右耳に茶色いブチのある、目が空いたばかりくらいの、小さな仔猫がいた。
 女子学生は、
「まあ、可愛い」
 と言ったのだが、僕は正直驚いて『ギョッ』とした。
 その仔猫は使い古(ふる)されて小さくなった石鹸を、口に咥えていた。その様子はとても苦しそうで「ニャ~、ニャ~」と鳴いている。
「この石鹸を取ってやらないと」
 と思った僕は、子猫が咥えている石鹸を取ろうとしたが、その小さな石鹸はボロボロと崩れてしまい、その破片のほとんどは白い洗面台の上に落ちたのだが、一部の破片はその仔猫が飲み込んでしまったのだ。
「あ。飲み込んだ。これはマズイな」
 と一度、仔猫を洗面台の蛇口のスペース辺りに置いて、バラバラになった石鹸を流してしまおうとして、水を出した。
 崩れてバラバラになった石鹸を流し終わり、仔猫を見るとまた別の石鹸の破片を咥えていた。
「こいつ、もしかしてお腹が空いているのか?」
 と新しく咥えていた石鹸を口から取ると、
「ニャ~、ニャ~」
 と苦しそうにしている。
 女子学生が、
「石鹸なんて食べるから、苦しいのかしら?」
 と心配そうに言った。
 僕もどうしていいか、正直分からない。
 すると仔猫は「ゲー、ゲー」と吐き始めた。
「何だか苦しそう。ねえ、どうしたらいいの?」
 僕は心底困り果てた。 
「猫のことはさっぱり分からない。でもこのままという訳にもいかないし」
 と思い、時計を見るともうすぐ会議室を出なければいけない時刻が迫っていた。
 僕はスマートフォンで『猫 石鹸 食べる』で検索した。
 すると『猫に取って石鹸は害なので、少しでも早く無理矢理でも、水を飲ませて吐かせてを繰り返して下さい』と書かれているブログを見つけた。

※これはあくまでも夢で見たもので、実際にこのような行為を子猫に絶対にしないで下さい。

 確かにこのまま放置していたら、子猫の命が危ない。それに足元には『ミケ』と書かれたタオルの入ったダンボール箱が置かれている。
 字の感じからして小学生が秘密で飼っているような子猫なのだろう。
 僕は意を決して、
「この仔猫を助けたいから、ブログに書かれているように、水を飲ませて吐かせるよ」
 と僕は水道の蛇口の近くに、仔猫の口を持ってきた。可愛そうだが無理矢理口を開かせると、水道の蛇口をひねった。すると古い蛇口なのか凄い勢いで水が出てしまい、仔猫の口に勢いよく水が流れ込んだ。
 僕は急いで蛇口を止めた。
「ごめん、ごめん」
 と手を拭くためにぶら下がっていたタオルで、顔を拭いてやる。
 すると子猫は「ゲー」と吐き、石鹸の破片を出した。
「あ。これ、いけるかも」
 と次は注意しながら、水道のところに仔猫の口を再度持って行き、ゆっくりと水を出すと『ゴクゴク』と飲んでくれた。
 パンパンに膨れ上がったお腹を優しく押すと『ゲー』と水と石鹸の破片を吐き出す。
 だが、子猫は弱ってきたようでグッタリしてきた。
「次で終わりにしよう」
 と水を飲ませて吐かせると、今度は水しか吐かなかった。
「よし! これで大丈夫だろう」
 と水気をよく拭いてやって、仔猫を『ミケ』と書かれている段ボール箱に置くと、
「ニャ~」
 と鳴いて、目を閉じた。
「え? まさか、死んだ?」
 と焦ったのだが、お腹が動いていて眠ったようだった。
 すると、
「もう、時間だわ」
 と女子学生が言ったので、急いで会議室から出て鍵を閉めたところで。
 目が冷めた。 

終わり。

令和5年5月10日。
    
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