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第五章 亮介。日本セカンド培養カンパニーを訪問する。

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セカンドサピエンス─九条亮介・Sランク・シークレット・エージェント。SSA(エス・エス・エー)─

  東岡忠良(あずまおか・ただよし)

──1──

 九月二十一日午前八時三十分が過ぎた頃だった。
『日本セカンド培養カンパニー』に一人の来客が来た。
「社長と培養工場に詳しい担当者と話したい」
 という要件だった。
 窓口担当の女性社員はこの非常識な要求を、失笑を込めて、
「当社の取締役と役員の面談は事前予約した方のみとさせて頂いております」
 と断ると、
「分かった。ならシークレット・エージェント国際警察と日本の警察合同での社内捜査に入らせてもらうがいいか?」
 と言ってきた。
 その女性社員は呆れてしまった。
「お客様。ご冗談はおよし下さい。そのような権限を行使できるのは、世界で五人しかいない、Sランク・シークレット・エージェント。つまりSSA(エス・エス・エー)の方だけでございます」
 と外れクジを引いたような顔をした。
 すると、その男は言った。
「私がそのSSAのライセンスを持つ九条亮介と言う者だ」
 と名刺大の証明書を出した。
 窓口担当は初めて見るものだったのだろう。
「あのう。失礼ですが、その証明書が本物かどうか、資格確認のスキャンをしてみても構いませんか?」
 と聞いた。
「どうぞ」と亮介は差し出す。
「ただし」と亮介。
「コピー機能は切っておいてくれ。でないとそちらが犯罪者になるからな」
 と言う。
 窓口担当の女性は、
「時々、自分はSSAだと言ってくる人が居るんですよ。迷惑なんですよね。それでこちらが資格確認スキャンをすると言うと、やらせなかったり、誤魔化したりするのです」
 続ける。
「でも、こうしてスキャンさせて下さったのは、お客様が初めてです。しかしですね。そんな精巧な偽物を作って持って来ても、この機械は誤魔化せない……。ええっ!」
 と驚いた。九条亮介と名乗るこの人物が持っているSSAの証明書が、資格確認スキャンが本物だと言っていた。
「えっ……。あっ、あのう……」
 窓口担当の女性は慌てふためいている。
「SSAの九条亮介が来たと、急いで社長や幹部らに知らせてくれ。そうしないと、あなたが罪に問われることになる」
「えっ! しっ、しかしですね……。実は私、社長からSSAと名乗る人物が来ても、絶対に取次がないよう強く言われているのです」
「ほう。いつからですか?」
 今のこの受付の女性の言葉で、何も聞かされておらず、意味も分からないで亮介を門前払いしようとしたことが明白になった。
 用心深そうな彼女は俯き黙っている。
「正直に申しましょう。今までの会話は記録に残しています。SSAは会話を録音することは盗聴にならないのでね」
 と亮介。
 彼女も話では聞いていた。SSAの盗聴と盗撮は罪に問われないことを。
「私の質問に正確に答えてくれれば、あなたは罪には問われません」
「えっ……」
 と顔を上げた。
「もし、あなたを解雇しようとしたなら、解雇しようとした者を情報提供拒否罪で逮捕できます。ですが、このままあなたにだんまりをされると」
「黙っていたら、どうなるのですか?」
「SSA国際法により、あなたも補助罪の罪に問われます」
「そんな……」
 と女性は震えている。
「私、困るんです……。今月、結婚することになっているんです。そんな時にSA警察に逮捕されたら……」
「結婚は破断だな」
「それだけは! それだけは許して欲しいんです」
 と訴える。
「分かりました。ではもう一度、お聞きします。いつからSSAが来たら、取次がないように命令されましたか?」
 と言った。
 受付の彼女は、
「九月十八日。えっと……。確か時間は午前中の十時頃だったような……」
 と震える小声で言った。
 実際その日にカークランド国連大使のセカンドが盗まれたのか、もしくは逃亡したと亮介は推測した。
 それにしても質が悪い。
 例え一時間でも早く、ニュー国際連合体、または亮介へ連絡していたらこんなにも大事にはならなかったはずである。
 この様子だと考えられることは二つある。
 一つはさっき考えたように、カークランド国連大使のセカンドが盗難にあった、と主張することである。
 だがこれは盜まれた日本セカンド培養カンパニーへの責任を強く求められる。それに盗難事件があったにも関わらず、警察やニュー国際連合体への連絡を怠ったという信用問題にもなりかねない。
 二つ目は九月十八日以前にカークランド国連大使のセカンドを装置不具合で培養失敗のため死亡させてしまった』とでも言い出す可能性だ。
 確かにそれなら、カークランド国連大使のセカンドサピエンスを引渡せなくても、罪は培養装置メーカーの責任に転嫁可能だ。会社への影響は最小限に抑えられる。
 九条亮介は日本セカンド培養カンパニーは、二つ目の偽造でこの難局を乗り越えるつもりなのだと悟った。
 ということは、すでにカークランド国連大使のセカンドの記録は書き換えられている可能性が高い。
 しかしメインのコンピュータからの記録を上手く改ざんしたとしても、多くの支社や工場の隅々までのパソコンまでの記録を書き換えることは不可能である。
 いくら本社のメインコンピュータのクラウドへ集中アクセスをする仕様になっていようとも、常に繋げていることはありえないからだ。
 それにもっとボロを出しやすい証拠もある。
「お嬢さん。悪いことは言わない。すぐに社長と直に面談したい。無理ならそれでも構わないが、それだと強制捜査に入らせてもらう。もちろん、お嬢さんも罪を逃れられないがな」
 と冷たく言った。
「しっ、しばらくお待ち下さい」
 と窓口担当の女性は、大急ぎで内線をかけた。受話器から男の怒鳴り声が聞こえた。それに何度も謝る彼女へ、
「私が変わろう」
 と右手を伸ばして受話器を取り上げた。
「日本セカンド培養カンパニーの社長ですね」
「そっ、そうだが! 君はまさか!」
「Sランクシークレットエージェントの九条亮介と申します」
「ほっ、本物のなのか!」
 と動揺を隠せないでいる。
「本物? ええ。そうですが……」
「そうかい。これは初めましてだな、九条君。悪いがね。今から重要なクライアントとの契約交渉があるんだよ」
 と意識して明るい声を、電話の向こうの社長は出していたが、
「そうですか。それは構いませんよ。では強制捜査に入らせて頂くまでですが」
 と亮介。
「まっ! 待ってくれ!」
 と社長は少し沈黙し、
「分かった。クライアントと会うのは中止する。今から会おうてはないか、九条君」
「懸命なご判断です、社長」
 と電話を切った。
「社長からの許可は下りた。社長室はどこですか?」
 と亮介は窓口担当の彼女に聞いた。
「このビルの最上階が社長室となっております」
 と答えた。
「分かった。ありがとう」
 と亮介が背を向けた時だった。
「あのう……。私はどうなるのですか?」
 と心配そうに亮介に声をかけた。
 亮介は振り返り、
「捜査へのご協力を感謝します」
 と微笑んだ。
 彼女は「あ。ありがとうございます」と立ち上がって、頭を深く下げた。
 亮介は誰も乗っていない社長室直通のエレベーターへ一人、乗り込んだ。
  
──2──

 亮介は上昇するエレベーターの中で、日本セカンド培養カンパニーの現社長のプロフィールを空間転写のスマートフォンで確認していた。
 もちろん、内容は一般人が見ることのできない極秘資料である。
「二代目取締役社長。初代社長の一人息子か」
 高級外車を数台持ち、自宅の屋敷には大勢の若いメイドを囲っている。
「メイドの中には未婚の母になって高額の生活費をもらう者もいる、か……」
 下手にこの二代目を怒らせて生活費を止められるくらいなら、黙ったまま愛人として生きていく選択をする者がほとんどのようだった。
「友人にはしたくないタイプの男だな」
 とつぶやくと、エレベーターは最上階に着いた。
 廊下の向こうには彫刻が施された木製の扉があった。
 高級ホテルのスイートか?
 と言うよりこの扉はまさかオール木製ではあるまいな。こんな扉、強盗でもその気になれば簡単に破られる。
 デザインの趣味の悪さにもうんざりする。
 そのドアの中央には、金に輝く輪を咥えたライオンの顔のドアノッカーがあった。
 エチケットとしてそれを使ってノックする。
「どうぞ」
 と中から声がした。
 扉を開ける。やはり金属が入っていそうな重みを感じない。
 まさかの完全木製か。セキュリティって言葉を知っているのか?
 と内心は呆れている。
 室内に入ると、黒い本皮製の椅子に座っている男が、くるりと回転してこちらを向いた。
 窓、いやオールガラスの壁から、朝日が入ってきていて眩しい。
 ガラス張りの社長室だと……。情報漏洩などのセキュリティは考えないのか? こんなの小型ドローンを飛ばされたら、それまでではないか。
 と亮介は、この男が仕事熱心とは程遠い人物だということを、うんざりするほど感じた。
「一体、この私に何の要件かね? 大口のクライアントとの交渉を先延ばしてまでも、話したいこととは何だね? 日本にいる唯一のSランクシークレットエージェントの九条亮介さん」
 とこちらに歩いてくる。
「初めまして。日本セカンド培養カンパニーの槇村(まきむら)社長」
 と軽く礼をする。
「私は忙しいんだ。なんせ、君と違って大会社の社長だからね」
 と嫌味を込めて言う。
「分かりました。では担当直入にお聞きしましょう」
「ああ」
「現在、瀕死の重傷のために、集中治療室にいるアリス・青山・カークランド国連大使のセカンドサピエンスの行方を教えて頂きたい」
 と言うと、
「ああ。そのことかね」
 と背中を向けた。
「今日、ニュー国際連合体へ報告するつもりだったのだがね。実は彼女のセカンドだが、残念ながら培養に失敗してね。また、一から培養中なのだよ」
 と亮介の考えた一つの可能性通りの答えが返ってきた。
「そうなのですか」
「ああ。全く困ったものだよ。おかげで我が社への信頼はガタ落ちだ。なので今はニュー国際連合体への培養失敗による補償の件と、培養装置のメーカーとの訴訟のことで大忙しなのだよ」
「そうですか」
「そうなんだよ」
 と余裕の笑みを二代目社長は見せた。
 しばらくの沈黙があったか、
「ではお聞きしますが、培養失敗の報告を三日も経った今日、報告とはどういう理由ですか?」
 と訊いた。
「それなんだよ、君」
 と社長は大きくため息をついた。
「それが困ったものでね。カークランド国連大使のセカンドの培養が失敗していることをだね。担当者が今まで隠していたんだよ」
 と額に右手をやり、首を振った。
「ほお」と亮介。
「最重要人物の培養に失敗したとなると、懲戒免職ものだからね。怖くなった社員が巧みに見つからないよう、禁止されているデータ改ざんまでしていてね」
 と大げさに言い、
「お恥ずかしい話、本社が気づくのがかなり遅くなってしまったのだよ」
 とわざとらしく、またため息をついた。
「そうでしたか。ではその不正を働いたという社員はどうしましたか?」
 と亮介。
「もちろん、懲戒免職つまりクビさ。事実が判明してすぐに辞めてもらったよ。全く、最近の若い者は誠実さがなくていけない」
 と言った。
「そうですか」
「そうなんだよ。なので九条亮介君。君の仕事はここにはないんだよ。お引取り願おうかね。さあ、お客様のお帰りだ」
 と手を二回叩くと、美人秘書が二人現れ、あの木の扉を開けた。
 すると、
「もう、おっしゃることは何もないですか?」
 と亮介。
「はあ? 君も分からない男だね。今、すべての真実を話したではないか」
 と自分は被害者で、困った客が来たとでもいう風に語る。
「分かりました」
「分かればいい」
「では今から、シークレット・エージェント国際警察と日本の警察合同による社内捜査を開始します。槇村社長あなたを含めた全社員。本社も支社も工場すべてに通告して下さい」
 槇村社長が驚きの表情になった。
「その場から一切、動かないように。デジタルデータの改ざん削除はもちろん紙資料の破棄も禁止します。まあ、やって頂いても構いません。即、現行犯逮捕なので、ある意味一番話が早い」
 すると槇村社長は、
「そんな……。君」
 と槇村は亮介に一歩、近づこうとした。
「それ以上動かないで。即刻、逮捕しますよ」
 と亮介は警告した。 
 
──3──

「まっ! 待ってくれ!」
 一気に余裕がなくなった槇村は、 
「きっ、君は何なんだね! そんな横暴が通用するとでも思っているのか!」
 と大声で訴えた。
「横暴とは?」
「横暴じゃないか! 私はきちんと説明したはずだ。セカンドの培養に失敗したのだと!  なのになぜ、強行捜査を受けなければならないんだ!」
 と言い終わると、肩で息をしていた。
亮介は逆に静かに、
「それは槇村社長いやこの日本セカンド培養カンパニー全体がウソまみれだからですよ」
「な!」
 槇村社長の歯ぎしりが聞こえた。
「何を根拠にそのようなデタラメを言うんだ! 私達を無実の罪に落とそうとでもするつもりか!」
 と激怒した。
「ではお話ししましょう」
 と亮介は右手の人差し指を立てた。
「一つ。あなた方は培養に失敗したとのことですが、ニュー国際連合体からカークランド女史のセカンドサピエンスの搬送依頼の連絡が九月二十日午後十時前にあったはずです」
「ああ。あったとも」
「すぐに返事をしなかったそうですね」
 槇村社長は呆れるように笑い、
「それはそうだろう。なんせ、カークランド女史のセカンドを培養している工場へ、現状を確認しなけれはならないからね。時間はかかるだろう」
「時間がかかる?」
「そうだとも」
「まあ、そうでしょうね。カークランド女史は国家首長クラスの最重要セカンドになります。培養の失敗でも、もしものことを考えて、必ず持ち主または管轄者に連絡をしなければならない義務がある」
「うっ」
「にも関わらず、その返事がなかったということは」
 槇村社長の指先が震え始めた。
「セカンドは逃亡または盗難にあったと考えるのが普通でしょう」
 それを聞くと、槇村社長は高らかに笑い始めた。それが収まると、
「九条君と言ったね。君の想像力は素晴らしいよ。その豊かな想像力はこんなことに使うのではなく、そうだな。どこかに物語として書いて見てはどうかね。きっと陰謀論の好きな連中から支持されるだろうよ」
 とバカにするように言った。
「それはどうも。では一つお願いがあります」
「ほう。なんだね、未来の作家志望くん」
「あなたのパソコンでもいい。ここ一週間以内の減給者と退職者リストを見せて頂きたい」
「退職者リストかね?」
「ええ。あなたの言うことが本当なら、培養に失敗した社員を減給また退職させているはずですからね」
 槇村社長が一瞬、ニヤリと笑った。
「ああ。お安い御用だ。さあ、こちらに来たまえ。私のパソコンを見るといい」
 とパソコンの電源を入れた。さすがに大会社の社長が使うノートパソコンである。すぐに立ち上がった。
「では出して頂けますか?」
 と亮介。
「なんだ、君自身が操作するんじゃないのかね?」
 と少し安堵を込めた言い方をした。
「いえ。社長、出して下さい」
「分かったよ。この一流企業の社長である私に操作させるなんて、もし我々に何の問題もなかったなら、業務妨害と名誉毀損で訴えさせてもらうからな」
 と言うと豪華な木製扉に立っている美人秘書二人がクスクスと笑った。
 画面はすぐに出た。
 減給者はおらず、退職者は二人いた。
 一人は定年退職を迎えた本社勤務の男性社員だった。
 そしてもう一人は、古賀美佐(こがみさ)という三十五歳の女性だった。熊本県にある廃村に建てられた培養工場に勤めていたとあった。
「この古賀美佐の資料を見せて頂きたい。履歴書と詳しい退職理由が知りたい」
 槇村社長は苦笑し、
「九条君。君ね。我々としては社員の個人情報は守らないといけない義務になっているのだよ。それを教えろなどと……」
 と言い終わる前だった。
「この古賀美佐ですか? セカンドの培養に失敗したのは?」
 と亮介は言った。
 槇村は「しめた」という表情になり、
「そうなんだよ。困った社員でね」
 とわざとらしくまた大きなため息をした。
「この社員はね。自分が担当したカークランド女史のセカンドの培養の失敗を誤魔化そうとしたんだ」
 と言い続けた。
「機械トラブル? それとも操作ミスかはこれから調べる手はずになっている。いや~。素直に話せばよいものを、失敗をこうして誤魔化そうとするから、こうして懲戒解雇になってしまうんだよ。いや、全く困ったものだ」
 と言った。
「早く古賀美佐の資料を出して下さい」
「まあ、そう焦りなさんな。若いSSАさん」
 と言うと、すぐに表示された。
 古賀美佐(こがみさ)。学歴の後の項目には年齢三十五歳。離婚歴あり。家族に三歳の娘とある。
 二年前に熊本県へ新たに建てられたセカンドサピエンス培養工場の操業時から勤めている。仕事は管理とある。
 だが、実際は見回りと日誌を書くだけの簡単な仕事なのは、亮介は理解していた。
 簡単な仕事だが、何か問題があった時は、すべての責任を押しつけられることも知っていた。
「いやいや。この社員はウソを延々と上司に報告し続けていたようだ。それを本社としてはきちんと調べるために、ニュー国際連合体への報告が九月二十日の午後十時前の時点では不可能だったのだよ。いやあ、参ったよ」
 と槇村は言う。
「ほお。つまり九月二十日の午後十時時点では、問題のセカンドサピエンスがどういう状況なのかは分からなかったということになりますね」
 と亮介が言うと、槇村は「うんうん」と何度も頷き、
「やっと分かってくれたかね。君は理解が遅いよ。まあ、私は心の広い経営者だからね。それくらいは水に流そう。さあ、九条さん、お疲れ様でしたねえ」
 と涼介の肩を叩いた。
 だが亮介はズバリ、槇村社長の矛盾点を指摘した。
「下の受付の女性から聞きました。槇村社長。あなたは九月十八日午前十時に、その女性に言ったそうですね」
「ん? 私が受付の彼女に何を言ったのかね?」
 その矛盾に全く気づいていない様子である。
「SSАの者が来ても、決して取次がないようにと」
 槇村は少し考えて、その矛盾に気づいたようだった。
「九月二十日の午後十時に何も分からない状態の者が、どうしてそれよりも約三日も早い九月十八日午前十時に、SSАを止める指示を受付の女性に出せるのですか?」
 槇村の顔色が青ざめていく。
「あなたはすでに九月十八日午前十時の時点で何かを知っていた。私に絶対に知られたくない事実を隠す時間が欲しかったのだ!」
 槇村は唇を噛んでいる。
「事実に基づかない報告を私、SSАにした時点で強制捜査の対象なのです」
 と言い、亮介はシークレット・エージェント国際警察と日本の管轄の警察呼んだ。
 事前に亮介から依頼することを聞かされていた両組織は、速やかに日本セカンド培養カンパニーの中央のデータ管理室を占拠し、パソコンから携帯端末すべての解析を開始した。
  
つづく。

登場人物。
九条亮介(くじょうりょうすけ)
 世界に五人しかいないSランクシークレットエージェント。通称SSA(エス・エス・エー)の工作員。
 この特別な資格は例えば、機密文章閲覧の自由や、相手が死刑や終身刑に値する者なら殺人許可も下りる。
 シークレット・エージェント国際警察と日本の警察による強制捜査の権限を持つ。
 ただし亮介はある事情からSSAの資格を持ちながら、五人の中で唯一一人だけ世界に出て行かず、狭い日本でのみ仕事を行っていた。
 二十八歳。  

柏木ミオ(かしわぎみお)
 現在、中学三年生。亮介が後見人になっている親友の一人娘。受験を控えているので、亮介としては出来るだけ勉強に集中して欲しいと思っている。
 コンピューターやネット関係に強く知識はトップクラス。

古賀美佐(こがみさ)
 三十五歳の離婚歴のある女性。三歳の一人娘がいる。
 二年前から熊本県にある廃村に建設されたセカンドサピエンス培養工場に勤めている。   
 普段は見回りと日誌を書くだけの簡単な仕事にも関わらず給料が高く、今回の事件が起きるまではこんな楽な仕事はないと思っていた。

セカンドサピエンス・ナンバー『A111989』
古ガミサ
 見た目の年齢は一六歳くらい。美しい顔立ちで、大きな目とそれにぴったりの輝く瞳。鼻の高さはちょうど良く、口元のバランスは大き過ぎず小さ過ぎない。髪はダークブロンド。白人とアジア系のハーフに見える。
 身長は一七〇センチ。大きく形の良い胸と大きめの腰に、スラリと長い足が特徴。美佐の合羽と身分証明書を持って逃亡。『古ガミサ』と名乗る。武田和人のことを「和人」と呼ぶ。

武田和人(たけだかずと)
 背は一六八センチ。ミサよりも少し小柄。筋肉質の身体の持ち主。年齢は十七歳である。
 両親は他界し、祖父と二人暮らし。『古ガミサ』のことを「ミサ」と呼ぶ。一人称は「僕」。

武田和人の祖父。
 体格は和人と同じくらいだが、短髪で白髪そして白い髭の老人。自分のことを「わし」と言う。
 祖父は和人のことを「和坊(かずぼう)」と呼ぶ。和人は祖父のことを「じいちゃん」と呼ぶ。
 和人の唯一の家族。

アリス・青山・カークランド国連大使。
 ニュー国際連合体の仲介役。
 スタイルは良く、かなりの美人。年齢は四十七歳。
 今まで中東情勢やアフリカなどの紛争や戦争を、何度も回避と停止をさせてきた実績がある。

堂本。
ニュー国際連合体日本支部の支部長。

日本セカンド培養カンパニー。
セカンド・サピエンスを専門で培養している世界でも指折りの大企業。

シークレット・エージェント国際警察。
 通称『SA警察』。シークレット・エージェントの権利を保障している組織。
 情報を素早く的確に調べ上げ、どのようなコンピュータでもセキュリティを突破し、解析できる能力を持つ。
 その国の警察や軍隊よりも国際的地位は高い。

槇村(まきむら)
 日本セカンド培養カンパニーの二代目社長にして、先代社長の息子。


2022年月24日
※この小説へのご意見・ご感想・誤字脱字・等がありましたら、お気軽にコメントして下さい。お待ちしています。

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 また、まとめサイト等への引用をする場合は無断ではなく、こちらへお知らせ下さい。許可するかを判断致します。

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