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迷い
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全ての始まりは、19年前この世に産まれた瞬間。運命はきまっていたのかもしれない。
少女の名前は花。中学三年生になり、受験のために、毎日塾に通い勉強をしていた。
部活動も、力をいれ常に県大会へ出場していた。全てが順調に進んでいた。でもそれは長くは続かなかった。
受験の願書提出が迫ったある日、花は母から
「受験をやめなさい。」
と言われた。花は親が本気で言っているのだとすぐに確信した。
なぜなら、花の家は離婚はしてないものの、父とは別居していた。花の父は、花を自分の子供と認めてくれて居なかった。
だから、養育費などは出してもらえて居なかった。
母は喘息もちでちょうどその時期物凄く辛い時期だった。だから、働いて居なかった。花達の生活費を出していたのは、姉たちだった。
花には四人の姉と、一人の兄がいた。
一番上の姉は皆とは父親が違った。姉は性同一性障害で、男になりたいと言い出て行った。花はあまり関わりをもたないまま、離ればなれになった。
二番目の姉は、中学卒業後すぐに働き始めて生活費を稼いでくれた。昼夜問わず働いてくれていた。だが、そんな生活が苦しくなり、ホストに狂い家をでて行ってしまった。花はこの姉が大好きだ。小さい頃から沢山可愛がってくれていた。
三番目は兄。兄は無口で何となく大きくなり、自然と家をでて行った。
四番目は、後に五番目の姉がでて行ったあと、生活費を稼いでくれた。姉はすでに結婚していて、旦那さんもいた。でも花の家が原因で離婚する事になる。
五番目の姉は、二番目の姉が出て行ったあと生活費を稼いでくれた。
花の家は高校にいかず、下の子の面倒をみるため、働きにでていた。
そして花の番が回ってきた。
でも、花は高校に行かせてもらえると言われていた。だから、三年間がむしゃらに頑張っていた。塾にも毎日欠かさず通っていた。だから、高校に行かないでと言われた時すぐには受け入れられなかった。でも、理由は分かっていた。姉がでていったからだ。そうなると生活をみてくれる人がいなくなる。理解は出来ていた。でも心がついて来なかった。三年間目標にしていたものが、一瞬で消えたのだから。中学生の花にはとても辛い事だった。花は何度か母にお願いした。
「どうしても、行けないの?嘘だよね?」
「あなただってわかるでしょ?高校にいったら誰が生活をみてくれるの?」
と言われた。このころ家には花と母、それから姉が出て行く時に置いていった姉の娘がいた。
花は泣いていた。そんな時母はこういったのだった。
「泣いてもしかたないでしょ!行けないものはいけない!泣いても変わらないこれからは貴方が生活をみてくれなきゃ。行きたくなったら、自分の力でいつからでも行けばいいでしょ。」
花は傷ついた。泣かずにはいられなかった。布団の中で毎日、声を殺して泣いた。
でも、花は母の最後の言葉を信じて、働く事を選んだ。
「自分の力で、いつからでも行けばいい」
先生達からは、止められた。だが花にはもうどうする事も出来なかったので、いつもこう言って卒業まできりぬけた。
「高校に行っても、やりたいことがないし、本当にやりたいことが見つかってからいきます。」と。
卒業後花は働き始めた。1つは姉の知り合いから紹介してもらった焼き肉屋さん、もう一つはコンビニ。
花は朝五時に起きて、夜十時に帰るという生活を送り始めた。初めは凄く楽しかった。新しい事を覚えて、出来るようになる。失敗も沢山した、でもオーナーがとてもいい方で、許して頂けた。
花は学校と社会の違いを痛感していた。
そんな生活を一年続けていた。
そんなある日。花は中学の友達と連絡を取り合っていた。花は毎日仕事だったので、友達とは疎遠になっていた。話の流れで皆でご飯を食べる事になった。花は一年ぶりに友達と会える事になってとても嬉しかった。
そして約束当日。皆でお好み焼き屋さんに集まった。そのお好み焼き屋さんは、その日集まったメンバーの一人のバイト先だった。
「花~。元気だったー?」
「花!」
「花ー!大丈夫なのー?」
皆は花に思い思いの言葉をかけてくれた。
「元気だよ!皆も相変わらず元気そうだねー!」
花以外は皆別々だが、高校に通っていた。
「学校はどう?」
「うん。たのしいけど、勉強がちょっと大変なんだよね。」
「ゆりんの学校は頭いいもんねー。うちの学校は余裕だわー。」
「バカ高だもんねー。」
皆は笑いあった。一年前と変わらず、皆といると時間を忘れるほど楽しかった。
そのあとも沢山話した。女子特有の恋ばなだったり、会えなかった一年の出来事を皆で語り合った。
「ごめんね。明日仕事だから、もう帰らなくちゃ。」
「そっかー。そうだよね。ごめんね。遅くまで。」
「じゃあさ、最後に集合写真とろうよ!」
「いいね!いいね!」
「「はい!チーズ!」」
「皆今日はありがとう!とっても楽しかった‼」
「こちらこそ。ありがとう。花!」
「花、無理しすぎんなよ!」
「また会おうね」
花は皆にあいさつをして家に帰った。
家に着くなり、花は写真を眺めていた。
(皆楽しそうにやってたな。今日は本当に楽しかった。)
花は皆が楽しそうに暮らしている事が分かってとても嬉しかった。でも花はもう一つ思った事があった。
(私も高校に行ってたら、皆みたいに楽しくくらせていたかなー?制服きてお買いものとかしたかったな。)
花は皆の話を聞いて、高校に行きたかったと思っていた。でも花は決して口には出さなかった。今花が仕事をやめたら、母は頼れる人がいないと思っていたから。
でも、それからの花は高校に行きたいと言う気持ちが日に日にまして行った。
花はインターネットで通信高校を見つけた。
これなら働きながら行けるかもしれないと、資料を集めていた。だが入学金がどこも高く、母には言い出せなかった。
ちょうどこの頃花には夢が出来た。それはブライダルプランナーになる事だ。花は人の笑顔が大好きで、そんな笑顔が溢れる場所で働きたかった。二人の幸せの第一歩をおてつだいできるプランナーに憧れをいだいていた。
そんな気持ちを抑え、花はまた一年母のために働いた。仕事にも慣れてきていた。でも正直つらかった。
(いつまでこの生活が続くんだろう。)
花は度々母のあの言葉を思い出すようになっていた。
「自分の力でいつからでも行けばいい。」
(いつになったら行けるのだろう。本当にいけるのかな。)
そんな事を思うようにはなったが、決して口には出さなかった。母を見捨てる訳にはいかなかっから。
花は母によくこう言われていた。
「もう貴方しかいないの」
花はこんな母を放っておけなかった。
そして母たまに言った。
「夢はね、家族全員そろって食事をする事だったの」
そんな母の夢を聞くと、花ははますます母を放っておけなかった。そんな簡単な夢も叶わない母の心を思うと、花は自分が思っている事を言い出せなかった。
そして三年目。花は思いを母に伝える事なく三年が過ぎた。
花はまた友達と連絡を取り合っていた。
そして再会した。
どことなく皆大人になっていた気がした。
「ひさしぶり!」
「ひさしぶり!お好み焼き以来じゃん。」
「きゃー!花ー!」
皆再会を喜んだ。
「最近はどう?進路はどうすんの?」
花以外は皆高校三年生。進路選択の時期だった。
「私は大学に行こうと思ってる。」
「うちは就職だなー。大学行くほど、頭ないし。」
「うち実は専門に行こうと思ってるんだ。キャビンアテンダントの。」
皆、しっかり自分をみつめて進路を決めていた。そのあとも楽しく過ごし、解散した。
花は家に帰り、一人静かな部屋で悩んでいた。
(皆はしっかり自分の進路を決めていた。私だけだ。卒業してから何も変わってないのは。)
花はたまに、違う友達とも会っていたが、友達に会うたび悩んでいた。自分だけ変わっていないと。
悩みながらも花は、働いていた。でも花は母に思いを伝える事に決めた。
バイトから帰り、母を呼んだ。
「あのさ、話があるんだ。」
「何。」
しばらく沈黙が続いた。母を前にすると言葉が詰まってでてこなかったのだ。
「早く言いなさい。何?」
「やっぱり高校に行きたい‼通信高校でいい、昼間は働くし、今までみたいに一緒にすむし。」
花は思っていた事を、涙ながらに母に伝えた。
「わかった。考えましょう。一緒に。」
母は、複雑な顔でそう言った。
花は少し心が軽くなった気がした。三年間心にしまっていた、本当の気持ちを母に伝える事ができたから。
そのあと花は、なるべくお金が掛からずにブライダルの道に進める方々はないか調べた。
そしてブライダルの専門学校を見つけた。その学校は夜間部があり、昼間は働ける花にぴったりの学校だった。だが、入学資格が花にはなかった。その専門学校の入学資格は、高校卒業または高校卒業程度の学力を有する者だった。
花は勿論高校には行っていないので、卒業など無理な話。高校卒業程度の学力を有する者、これは高卒認定試験の合格者ということだった。
花はすぐに高卒認定試験の事を調べた。
結果花は八科目合格しなければいけないことがわかった。花には中学を卒業して三年というブランクがあり、かなり難題だった。でも花は試験を受ける事に決めた。花は勉強の為週に一度休みをとった。はじめのうちは、一生懸命勉強していた。でも、3ヶ月を過ぎる頃には週に一度の休みは寝て過ごし、勉強などしていなかった。花もやらなくてはいけないと思いつつ、だらだらと一日を過ごしてしまっていた。
そんな花に母は言ったのだった。
「あの時の涙は嘘だったんだね」
花はハッとした。あんなにやりたかった事が今出来るのにやっていない。花は自分に落胆した。でも、花がやる気がなくなってしまうのも仕方なかったかもしれない。慣れない勉強をやり、分からなくても誰にも聞けない。
花はこのままではいけないと思い、まずは勉強に慣れる事から始めようと決めた。自分の興味のあるものなら、やるはずと思いカラーコーディネーターの資格をとる事に決めた。
カラーコーディネーターとはその人にどんな色が似合うかなどを見極める人の事だ。
花は勉強をして見事三級と二級に合格する事が出来た。
でも花は一級の試験を受ける事はなかった。
なぜなら、花が行きたいと思っている学校でその試験がカリキュラムに組み込まれていたからだった。
(一級は必ず学校に行ってからとろう!)
花は心の中でそう決めていた。
そして試験も終わり一息ついている所で、四年目の春がやってきた。
花はもうすぐ19歳になろうとしていた。そして花はまた悩んでいた。
冷静に考えて、三人の生活費を出し、学校に通う事は可能なのか?
やはり不可能に近かった。そして本当にブライダルプランナーになりたいのかさえ、分からなくなっていた。
(この生活から、ただ逃げたいだけで、プランナーは口述にすぎないのではないか?)
この気持ちは日に日にまして行くばかりだった。
そんなある日。ネットを見ていてあるバイトの求人に目が止まった。
「「結婚式のアフターパーティー」」
それは結婚式の二次会のパーティーのバイトだった。
そして花は決めた。ここで働いてみよう!
まずは、その職業に触れてみよう!と考えたのだった。こうして花は三つ目のバイトを始めた。辛いなどはないと言ったら嘘になるが、自分のしたい事に少し近づけて、嬉しくてたまらなかった。そんな気持ちの方がはるかに大きかった。週に一度だけそのバイトに行った。分からない事だらけで、正直初めは辛かった。でも新郎新婦様から最後にお礼を言われるともの凄く嬉しかった。
何よりそこで働いている社員さんが、きらきらしてみえた。
今花は働き始めて半年を過ぎている。
まだ学校には行けていないが、その日を目指して毎日働いている。
そして高卒認定試験の結果を待っている。
結果が合格なら、母に学校へ行きたいと伝えるだろう。
花は決して夢を諦めないと心に誓った。きっと今もどこかで、夢に向かって走り続けていることだろう。
少女の名前は花。中学三年生になり、受験のために、毎日塾に通い勉強をしていた。
部活動も、力をいれ常に県大会へ出場していた。全てが順調に進んでいた。でもそれは長くは続かなかった。
受験の願書提出が迫ったある日、花は母から
「受験をやめなさい。」
と言われた。花は親が本気で言っているのだとすぐに確信した。
なぜなら、花の家は離婚はしてないものの、父とは別居していた。花の父は、花を自分の子供と認めてくれて居なかった。
だから、養育費などは出してもらえて居なかった。
母は喘息もちでちょうどその時期物凄く辛い時期だった。だから、働いて居なかった。花達の生活費を出していたのは、姉たちだった。
花には四人の姉と、一人の兄がいた。
一番上の姉は皆とは父親が違った。姉は性同一性障害で、男になりたいと言い出て行った。花はあまり関わりをもたないまま、離ればなれになった。
二番目の姉は、中学卒業後すぐに働き始めて生活費を稼いでくれた。昼夜問わず働いてくれていた。だが、そんな生活が苦しくなり、ホストに狂い家をでて行ってしまった。花はこの姉が大好きだ。小さい頃から沢山可愛がってくれていた。
三番目は兄。兄は無口で何となく大きくなり、自然と家をでて行った。
四番目は、後に五番目の姉がでて行ったあと、生活費を稼いでくれた。姉はすでに結婚していて、旦那さんもいた。でも花の家が原因で離婚する事になる。
五番目の姉は、二番目の姉が出て行ったあと生活費を稼いでくれた。
花の家は高校にいかず、下の子の面倒をみるため、働きにでていた。
そして花の番が回ってきた。
でも、花は高校に行かせてもらえると言われていた。だから、三年間がむしゃらに頑張っていた。塾にも毎日欠かさず通っていた。だから、高校に行かないでと言われた時すぐには受け入れられなかった。でも、理由は分かっていた。姉がでていったからだ。そうなると生活をみてくれる人がいなくなる。理解は出来ていた。でも心がついて来なかった。三年間目標にしていたものが、一瞬で消えたのだから。中学生の花にはとても辛い事だった。花は何度か母にお願いした。
「どうしても、行けないの?嘘だよね?」
「あなただってわかるでしょ?高校にいったら誰が生活をみてくれるの?」
と言われた。このころ家には花と母、それから姉が出て行く時に置いていった姉の娘がいた。
花は泣いていた。そんな時母はこういったのだった。
「泣いてもしかたないでしょ!行けないものはいけない!泣いても変わらないこれからは貴方が生活をみてくれなきゃ。行きたくなったら、自分の力でいつからでも行けばいいでしょ。」
花は傷ついた。泣かずにはいられなかった。布団の中で毎日、声を殺して泣いた。
でも、花は母の最後の言葉を信じて、働く事を選んだ。
「自分の力で、いつからでも行けばいい」
先生達からは、止められた。だが花にはもうどうする事も出来なかったので、いつもこう言って卒業まできりぬけた。
「高校に行っても、やりたいことがないし、本当にやりたいことが見つかってからいきます。」と。
卒業後花は働き始めた。1つは姉の知り合いから紹介してもらった焼き肉屋さん、もう一つはコンビニ。
花は朝五時に起きて、夜十時に帰るという生活を送り始めた。初めは凄く楽しかった。新しい事を覚えて、出来るようになる。失敗も沢山した、でもオーナーがとてもいい方で、許して頂けた。
花は学校と社会の違いを痛感していた。
そんな生活を一年続けていた。
そんなある日。花は中学の友達と連絡を取り合っていた。花は毎日仕事だったので、友達とは疎遠になっていた。話の流れで皆でご飯を食べる事になった。花は一年ぶりに友達と会える事になってとても嬉しかった。
そして約束当日。皆でお好み焼き屋さんに集まった。そのお好み焼き屋さんは、その日集まったメンバーの一人のバイト先だった。
「花~。元気だったー?」
「花!」
「花ー!大丈夫なのー?」
皆は花に思い思いの言葉をかけてくれた。
「元気だよ!皆も相変わらず元気そうだねー!」
花以外は皆別々だが、高校に通っていた。
「学校はどう?」
「うん。たのしいけど、勉強がちょっと大変なんだよね。」
「ゆりんの学校は頭いいもんねー。うちの学校は余裕だわー。」
「バカ高だもんねー。」
皆は笑いあった。一年前と変わらず、皆といると時間を忘れるほど楽しかった。
そのあとも沢山話した。女子特有の恋ばなだったり、会えなかった一年の出来事を皆で語り合った。
「ごめんね。明日仕事だから、もう帰らなくちゃ。」
「そっかー。そうだよね。ごめんね。遅くまで。」
「じゃあさ、最後に集合写真とろうよ!」
「いいね!いいね!」
「「はい!チーズ!」」
「皆今日はありがとう!とっても楽しかった‼」
「こちらこそ。ありがとう。花!」
「花、無理しすぎんなよ!」
「また会おうね」
花は皆にあいさつをして家に帰った。
家に着くなり、花は写真を眺めていた。
(皆楽しそうにやってたな。今日は本当に楽しかった。)
花は皆が楽しそうに暮らしている事が分かってとても嬉しかった。でも花はもう一つ思った事があった。
(私も高校に行ってたら、皆みたいに楽しくくらせていたかなー?制服きてお買いものとかしたかったな。)
花は皆の話を聞いて、高校に行きたかったと思っていた。でも花は決して口には出さなかった。今花が仕事をやめたら、母は頼れる人がいないと思っていたから。
でも、それからの花は高校に行きたいと言う気持ちが日に日にまして行った。
花はインターネットで通信高校を見つけた。
これなら働きながら行けるかもしれないと、資料を集めていた。だが入学金がどこも高く、母には言い出せなかった。
ちょうどこの頃花には夢が出来た。それはブライダルプランナーになる事だ。花は人の笑顔が大好きで、そんな笑顔が溢れる場所で働きたかった。二人の幸せの第一歩をおてつだいできるプランナーに憧れをいだいていた。
そんな気持ちを抑え、花はまた一年母のために働いた。仕事にも慣れてきていた。でも正直つらかった。
(いつまでこの生活が続くんだろう。)
花は度々母のあの言葉を思い出すようになっていた。
「自分の力でいつからでも行けばいい。」
(いつになったら行けるのだろう。本当にいけるのかな。)
そんな事を思うようにはなったが、決して口には出さなかった。母を見捨てる訳にはいかなかっから。
花は母によくこう言われていた。
「もう貴方しかいないの」
花はこんな母を放っておけなかった。
そして母たまに言った。
「夢はね、家族全員そろって食事をする事だったの」
そんな母の夢を聞くと、花ははますます母を放っておけなかった。そんな簡単な夢も叶わない母の心を思うと、花は自分が思っている事を言い出せなかった。
そして三年目。花は思いを母に伝える事なく三年が過ぎた。
花はまた友達と連絡を取り合っていた。
そして再会した。
どことなく皆大人になっていた気がした。
「ひさしぶり!」
「ひさしぶり!お好み焼き以来じゃん。」
「きゃー!花ー!」
皆再会を喜んだ。
「最近はどう?進路はどうすんの?」
花以外は皆高校三年生。進路選択の時期だった。
「私は大学に行こうと思ってる。」
「うちは就職だなー。大学行くほど、頭ないし。」
「うち実は専門に行こうと思ってるんだ。キャビンアテンダントの。」
皆、しっかり自分をみつめて進路を決めていた。そのあとも楽しく過ごし、解散した。
花は家に帰り、一人静かな部屋で悩んでいた。
(皆はしっかり自分の進路を決めていた。私だけだ。卒業してから何も変わってないのは。)
花はたまに、違う友達とも会っていたが、友達に会うたび悩んでいた。自分だけ変わっていないと。
悩みながらも花は、働いていた。でも花は母に思いを伝える事に決めた。
バイトから帰り、母を呼んだ。
「あのさ、話があるんだ。」
「何。」
しばらく沈黙が続いた。母を前にすると言葉が詰まってでてこなかったのだ。
「早く言いなさい。何?」
「やっぱり高校に行きたい‼通信高校でいい、昼間は働くし、今までみたいに一緒にすむし。」
花は思っていた事を、涙ながらに母に伝えた。
「わかった。考えましょう。一緒に。」
母は、複雑な顔でそう言った。
花は少し心が軽くなった気がした。三年間心にしまっていた、本当の気持ちを母に伝える事ができたから。
そのあと花は、なるべくお金が掛からずにブライダルの道に進める方々はないか調べた。
そしてブライダルの専門学校を見つけた。その学校は夜間部があり、昼間は働ける花にぴったりの学校だった。だが、入学資格が花にはなかった。その専門学校の入学資格は、高校卒業または高校卒業程度の学力を有する者だった。
花は勿論高校には行っていないので、卒業など無理な話。高校卒業程度の学力を有する者、これは高卒認定試験の合格者ということだった。
花はすぐに高卒認定試験の事を調べた。
結果花は八科目合格しなければいけないことがわかった。花には中学を卒業して三年というブランクがあり、かなり難題だった。でも花は試験を受ける事に決めた。花は勉強の為週に一度休みをとった。はじめのうちは、一生懸命勉強していた。でも、3ヶ月を過ぎる頃には週に一度の休みは寝て過ごし、勉強などしていなかった。花もやらなくてはいけないと思いつつ、だらだらと一日を過ごしてしまっていた。
そんな花に母は言ったのだった。
「あの時の涙は嘘だったんだね」
花はハッとした。あんなにやりたかった事が今出来るのにやっていない。花は自分に落胆した。でも、花がやる気がなくなってしまうのも仕方なかったかもしれない。慣れない勉強をやり、分からなくても誰にも聞けない。
花はこのままではいけないと思い、まずは勉強に慣れる事から始めようと決めた。自分の興味のあるものなら、やるはずと思いカラーコーディネーターの資格をとる事に決めた。
カラーコーディネーターとはその人にどんな色が似合うかなどを見極める人の事だ。
花は勉強をして見事三級と二級に合格する事が出来た。
でも花は一級の試験を受ける事はなかった。
なぜなら、花が行きたいと思っている学校でその試験がカリキュラムに組み込まれていたからだった。
(一級は必ず学校に行ってからとろう!)
花は心の中でそう決めていた。
そして試験も終わり一息ついている所で、四年目の春がやってきた。
花はもうすぐ19歳になろうとしていた。そして花はまた悩んでいた。
冷静に考えて、三人の生活費を出し、学校に通う事は可能なのか?
やはり不可能に近かった。そして本当にブライダルプランナーになりたいのかさえ、分からなくなっていた。
(この生活から、ただ逃げたいだけで、プランナーは口述にすぎないのではないか?)
この気持ちは日に日にまして行くばかりだった。
そんなある日。ネットを見ていてあるバイトの求人に目が止まった。
「「結婚式のアフターパーティー」」
それは結婚式の二次会のパーティーのバイトだった。
そして花は決めた。ここで働いてみよう!
まずは、その職業に触れてみよう!と考えたのだった。こうして花は三つ目のバイトを始めた。辛いなどはないと言ったら嘘になるが、自分のしたい事に少し近づけて、嬉しくてたまらなかった。そんな気持ちの方がはるかに大きかった。週に一度だけそのバイトに行った。分からない事だらけで、正直初めは辛かった。でも新郎新婦様から最後にお礼を言われるともの凄く嬉しかった。
何よりそこで働いている社員さんが、きらきらしてみえた。
今花は働き始めて半年を過ぎている。
まだ学校には行けていないが、その日を目指して毎日働いている。
そして高卒認定試験の結果を待っている。
結果が合格なら、母に学校へ行きたいと伝えるだろう。
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