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こんにちは、止木ツバメです。いつものように大学に通い、帰ってきたら異世界に攫われてしまいました。助けてください。
「おい、外の鍋片付けとけ。水で洗うの忘れるなよ。あと魔法薬の依頼が来てるが、肝心の効果が曖昧だ。行って聞いてこい」
彼はノース・アプリコット。俺の方を見向きもせずに、偉そうに指示を出しています。俺をこの世界に召喚した魔法使いであり、この家の家主です。
「えっ、人攫いは?」
「奴らも明るいうちは出てこないだろう」
だろうって、本当に大丈夫なのか……? 俺は疑わしい目でノースを見るが、当の本人はどこ吹く風だ。こういう時、変に粘っても俺に勝ち目はない。諦めてさっさと仕事を終わらせようと、俺は腕まくりをして外に出た。
「はー、何なんだこれ。汚れも全然落ちないし……」
俺は井戸から水を汲んで運び、大きな鍋の中に流し込んでごしごしと汚れを落とした。この鍋で何を煮込んだのか知らないが、かなり強い力を入れても、うまく汚れが落ちない。一人暮らしを始めた当時、シチューを作ろうとした結果、見事焦げ付いて、泣く泣くスポンジで焦げを落としたことを思い出した。黒い焦げが入ったシチューは、美味しいはずなのになぜか悲しい味がしたことを覚えている。
「鍋、裏の小屋に置いといて良かったですか」
「ああ」
それなりに重い鍋を、よいしょよいしょと運び、再び家に戻ると、ノースは机に向かって何かを書いていた。俺が話しかけると、振り返って紙を一枚渡してくる。
「地図を描いた。まあ、川を沿って行けばすぐに着くが、お前には必要だろ。あとは___」
ノースは俺を見て視線を下から上に動かした。俺もそれに倣って自分の姿を見る。
「水で濡れちゃってるけど、多分乾きます!」
「そうじゃない。ここらじゃ見ない服だから目立つだろう。着替えていけ」
ノースはぽいぽいと服を投げて渡して来た。確かに、パーカーにジーンズという、現代日本の大学生が来ている服は、この世界では浮いてしまうだろう。俺は一応お礼を言って、服を拾って着替えることにした。
「……あの、もうちょっと小さ目の服ってないですか……?」
「は? あー、お前の小ささを考えていなかった。他も似たような大きさだ。それで我慢しろ」
ノースは俺を一瞥するとそう言って、すぐに自分の作業へと戻った。失礼だな、俺だって平均くらいの身長はある。一般的に、20代の男性の平均身長は170センチくらいだろう。なら、まあ、俺は四捨五入して170に届くので、平均的な高さと言っても過言では、
「何突っ立ってる」
いつまでたっても動かない俺に、ノースがしびれを切らした。改めて見てみると、ノースは顔が小さくて足がすらっと伸びていることに気づく。俗にいうモデル体型というやつなのか。顔のつくりも整っているし、俺のいた世界だったら、きっとモデルに俳優にと引く手数多だろう。そんな人が森の中で、一人で引きこもっていたんだから、不思議だ。呆れた顔をするノースに、俺は笑って誤魔化した。
「行ってきます、ノース」
興味なさげに視線を逸らしながら、「ん」と小さくノースが返事をする。何となくくすぐったかった。
「おい、外の鍋片付けとけ。水で洗うの忘れるなよ。あと魔法薬の依頼が来てるが、肝心の効果が曖昧だ。行って聞いてこい」
彼はノース・アプリコット。俺の方を見向きもせずに、偉そうに指示を出しています。俺をこの世界に召喚した魔法使いであり、この家の家主です。
「えっ、人攫いは?」
「奴らも明るいうちは出てこないだろう」
だろうって、本当に大丈夫なのか……? 俺は疑わしい目でノースを見るが、当の本人はどこ吹く風だ。こういう時、変に粘っても俺に勝ち目はない。諦めてさっさと仕事を終わらせようと、俺は腕まくりをして外に出た。
「はー、何なんだこれ。汚れも全然落ちないし……」
俺は井戸から水を汲んで運び、大きな鍋の中に流し込んでごしごしと汚れを落とした。この鍋で何を煮込んだのか知らないが、かなり強い力を入れても、うまく汚れが落ちない。一人暮らしを始めた当時、シチューを作ろうとした結果、見事焦げ付いて、泣く泣くスポンジで焦げを落としたことを思い出した。黒い焦げが入ったシチューは、美味しいはずなのになぜか悲しい味がしたことを覚えている。
「鍋、裏の小屋に置いといて良かったですか」
「ああ」
それなりに重い鍋を、よいしょよいしょと運び、再び家に戻ると、ノースは机に向かって何かを書いていた。俺が話しかけると、振り返って紙を一枚渡してくる。
「地図を描いた。まあ、川を沿って行けばすぐに着くが、お前には必要だろ。あとは___」
ノースは俺を見て視線を下から上に動かした。俺もそれに倣って自分の姿を見る。
「水で濡れちゃってるけど、多分乾きます!」
「そうじゃない。ここらじゃ見ない服だから目立つだろう。着替えていけ」
ノースはぽいぽいと服を投げて渡して来た。確かに、パーカーにジーンズという、現代日本の大学生が来ている服は、この世界では浮いてしまうだろう。俺は一応お礼を言って、服を拾って着替えることにした。
「……あの、もうちょっと小さ目の服ってないですか……?」
「は? あー、お前の小ささを考えていなかった。他も似たような大きさだ。それで我慢しろ」
ノースは俺を一瞥するとそう言って、すぐに自分の作業へと戻った。失礼だな、俺だって平均くらいの身長はある。一般的に、20代の男性の平均身長は170センチくらいだろう。なら、まあ、俺は四捨五入して170に届くので、平均的な高さと言っても過言では、
「何突っ立ってる」
いつまでたっても動かない俺に、ノースがしびれを切らした。改めて見てみると、ノースは顔が小さくて足がすらっと伸びていることに気づく。俗にいうモデル体型というやつなのか。顔のつくりも整っているし、俺のいた世界だったら、きっとモデルに俳優にと引く手数多だろう。そんな人が森の中で、一人で引きこもっていたんだから、不思議だ。呆れた顔をするノースに、俺は笑って誤魔化した。
「行ってきます、ノース」
興味なさげに視線を逸らしながら、「ん」と小さくノースが返事をする。何となくくすぐったかった。
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