異世界に攫われた俺はイケメンで性格の悪い魔法使いと同居することになりました

だいず

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11話

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「それ、ツバメさん何も悪くないですよね」
 
 自分が異世界から来たことをリディアに伝えた俺は、どんな経緯で来ることになったかを説明した。その一連の話を聞き終え、リディアが言い放ったのが上記の言葉だ。俺は、「えっと、」と反応に困ってしまった。
 
「ノースさんが召喚に失敗して、間違えてツバメさんを喚んだんですよね? なんでツバメさんが怒られて、召し使いみたいなことやらされてるんですか?」
 
「それは、俺が無理やり同居をさせてもらってるお礼と言うか……」
 
「お礼も何もなくないですか? ツバメさんがこっちに来た件は、ノースさんが被害者でツバメさんが加害者ですよね。普通なら、ノースさんが謝罪してから、元の場所に戻る方法が分かるまで面倒を見るってなりますよ」
 
 「まあ、ノースさんの性格から無理な話か」とリディアはため息を吐いた。俺は何と言えばいいのか分からず、ただあたふたとしてしまう。こちらに攫われたとき、ノースのあまりの態度に怒ったことはあるが、ノースに自分が異世界に来てしまったことの原因を責めたことはなかった。だって、自分の名前が「ツバメ」だったことがそもそもの原因じゃないか? リディアにそう伝えようとしたけど、話が面倒くさくなりそうな気がして止めておいた。ふわふわと飛んでいる白い花弁がゆっくりと落ちてきた。なんとなく俺はそれを手に受け、それを見つめた。
 
「……でも俺、不満ないです。ノースとの暮らしに。聞いても教えてくれないことあるし、そのたびに隠されてるんだなって、ちょっとだけ悲しくなるけど、でも優しいところもあって。あっ、今日の花祭りで使うお金もお願いしたら、ノースがくれたんです」
 
 招待状を譲ってくれたこともノースの善意だ。でも、だからってノースは優しくて良い人だとは言い切れないしないし、反対に悪い人だとも思わない。性格がひねくれてて、素直になれないのがノースで、そんなノースを俺は好ましく思っていた。
 
「ツバメさんって……はぁ、いいです。とりあえずノースさんは、召喚に失敗した結果、来たのがツバメさんで良かったって思わなきゃ」
 
 「そうですかね」と照れ笑いを浮かべる俺に、リディアは腕組みをしてうんうんと頷いている。ノースが俺のことをどう思っているかなんて、考えたこともなかった。まあ、便利な雑用くらいの認識なんだろうな。そんなことを考えていると、一瞬だけ強い風が吹いて、手の平に乗せていた白い花弁を攫って行ってしまった。
 
「……なんか話し込んじゃってすみません。どこか見に行きますか?」
 
「うーん、ツバメさんは行きたいとこありますか?」
 
 俺は少し考えて、ノースにお土産を買いに行きたいなと思った。それなら向こうに、雑貨のお店があるし、広場の方にも良さそうな出店があったとリディアは教えてくれた。食べ物を買って帰るよりは、形として残るものが良いなと思ったけど、いまいちノースの欲しいものが分からない。店を見て回りながら考えようと、俺たちはその場を後にした。
 

 
 ノースにお土産を買うために再び訪れた広場、そこで俺たちはマディナたちとばったり再開してしまった。
 
「ちょっと、お姉ちゃん!」
 
「きゃっ! 逃げなきゃ、ツバメさん!」
 
 そうは言っても、周囲にはたくさんの人がいるんだ。思うようには動けない。反対にマディナは人波を強引にかき分け、ずんずんと歩いて俺たちの元に向かってきている。その後ろには、困った様子で着いてきているヴァントの姿もあった。どうしよう、逃げれないと、リディアと2人であたふたしていると、ついにマディナは俺たちの前に立ちふさがった。見つかってしまった時点で、もう逃げることはできなかっただろう。そう思うくらい、マディナの顔は怖かった。
 
「探したんだけど!?」
 
 リディアが考えた「2人ずつで見て回ろう」という言い訳に、マディナは納得しなかったようだった。あなたたちをデートさせるためだったんですとも言えず、「はい、ごめんなさい……」と甘んじて彼女の言葉を受け入れる。ヴァントがタイミングを見計らって仲裁に入ってくれるまで、マディナはどれだけ俺たちのことを探したのかをくどくどと話し続けた。
 
「まあまあ、人が多いのは事実だし、4人じゃ思うように動けなかっただろ? 2人で動くってのもいい案だと思ったよ。もうちょっとしっかり話してから分かれたかったなって気持ちもあるけど」
 
 ヴァントの言葉にマディナも思うところがあったのか、「まあ、そうだけど……」と口ごもる。うまいな、ヴァントさん。リディアももう一度謝り、姉妹の喧嘩がうまく収束していくのを見ていると、「ツバメさん」とヴァントに名前を呼ばれた。
 
「パーティの時間って何時だったか分かる?」
 
 時間……夕方だと記憶してるが、詳しい時間は招待状に書いてあったはずだ。「待ってくださいね」と伝えて、鞄のなかを漁る。確か、ここら辺に入れてたはず……いや、底の方かな。始めは片手だけを鞄に入れて招待状を探していたが、どんどん嫌な予感がしてきて、今度は鞄の中を覗き込み、最後には財布やらなにやらをかき回した。
 
「ツバメさん?」
 
 ヴァントだけじゃなく、リディアやマディナまでもが俺の異変に気付き、どうかしたのと様子を聞いてくる。俺は深呼吸をしてゆっくりと顔を上げ、へたくそな笑顔を浮かべた。
 
「招待状、なくしちゃったみたいです……」
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