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21 予定のない日

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 突然異世界へと召喚された俺、宇久田冬晴は転移者と呼ばれ、貴族のような生活に身を置くこととなった。そして、異世界に来て2日目。俺は、すでにある問題に直面していた。それは___

「あの、何か手伝うことってありますか?」

 暇すぎる、と言うことだった。

 *

 廊下で執事のような人に仕事が無いか尋ね、丁寧に断られた俺は、当てもなく城の中をフラフラと歩く。部屋に帰る道は何となくわかってはいるが、それでも迷ってしまいそうなほどに城の中は広かった。
 昨日、グレンノルトから転移者の仕事について話されたとき、月に1日しか仕事がないのかと正直拍子抜けに感じていたが、同時に仕事がない日についても聞いておくべきだった。部屋に居てもすることはないし、かといって手伝いを申し出ても断られるし。城を出てテラスから見える町を探索することも考えたが、勝手に城を出ていいのか分からないし、そもそもお金を持っていない。何の予定もない午後、どう過ごそうかと考えていると後ろから名前を呼ばれた。

「トウセイ様!」
「グレンノルトさん、よかった! 探してたんです」

 鎧を脱いだ服装のグレンノルトが、「どうかしましたか?」と不思議そうに尋ねた。

「することがなくて、手伝えることを探してて……グレンノルトさんは今まで何を?」
「お見苦しい姿ですみません。修練場で体を動かしていました。なるほど、手伝いですか……」

 後に考えて気づいたことだが、多分この時の俺は異世界に慣れようと必死だったんだ。何も知らない世界に召喚され、居場所はあったものの、そこで馴染めるか心配で……転移者としての仕事はあるようでない状況だ。手伝いを通して人と関わり、相手を理解したり自分のことを知って欲しかったんだ。でも結局他の人に断られ続け、どうせグレンノルトも断わるんだろうと考えていると、彼は意外にも「それじゃあ部屋の片づけに手を貸してくれませんか?」とはにかみながら話した。

「片付け、ですか?」
「はい。騎士団長は、仕事部屋を与えられているのですが、長らく調べ仕事をしていたおかげで本や資料で散らかってしまい……メイドに掃除を頼もうにも少し事情があり、自分一人でやろうと考えていたんです」

 グレンノルトは、見た目からして完ぺきな人間のイメージがあったから、部屋が散らかっていると恥ずかしそうに話す姿にギャップを感じた。人間は、イケメンの少し抜けている部分に齢のだ。グレンノルトの話す「事情」が気になったが、俺は「手伝います」と伝えた。

「ありがとうございます。部屋は1階の北側にあります」

 グレンノルトは、中庭を挟み向こうにある部屋を指さした。城は、どうやら階や棟ごとにある程度部屋が割り当てられているらしく、例えば俺の部屋は西側の2階の西側にあり、近くの部屋は専らゲストルームである。反対に、1階は誰かの仕事部屋や執務室などが多い。部屋の場所は忘れてしまっても、どの階やどの棟にどんな部屋があるか覚えていれば、迷うことが減るんですと教えてくれたのはアリシアだ。他のメイドや執事が、俺に対してよそよそしい中で、彼女だけは普通に接してくれた。俺とグレンノルトは並んで話しながら部屋へと向かう。彼は話しかけやすく、一緒にいて気が楽だった。

 
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