35 / 53
34 デート
しおりを挟む
ある日の勉強会。そう言えば予言はどれくらい解決したんだろうと気になった俺は、勉強が一息つくと同時に、グレンノルトに予言について尋ねた。
「時計塔と、大寿の新芽についてはもう解決していて……ああ、宝剣についてももうほぼ解決していますね。後は、大雨と川の氾濫、そしてリスの脱走ですね」
「重大そうなのと意味が分からないものが残りましたね」
「実は大雨も大体の予測はできているので、本当に何も分かってないのはリスだけなんです」
リスが残っちゃったんだ……何も分からないということに少し不安を感じるものの、起こることといえばリスが脱走することだけだし。うまく危機感が持てない。
「大雨はいつごろ来そうなんですか?」
「月の終わりごろに。明日にでも国全体に警戒する知らせが出るはずです」
月の最後の方に大雨が来るのか。なら、リスの脱走が大雨よりも先に来るのかな。
「やりたいことがあったら、今週中にやるべきですね」
「やりたいことか……グレンノルトは何かありますか? やりたいこと」
俺がそう尋ねると、グレンノルトは手元に落としていた視線を俺に向けた。嫌な予感、と言うべきか、グレンノルトがこんな顔をするときは、俺が彼の言葉に恥ずかしがるときだった。
「トウセイ、デートしましょう。見つかった大樹の新芽がとてもきれいで、あなたに見せたいんです。少し遠出にはなるのですが……ああ、宿を取って泊りで行ってもいいですね」
「ダメですか?」と尋ねられ、俺は「え、それは」と返事を迷ってしまった。だって、数日間グレンノルトとずっと一緒にいると言うことだろう。それは嫌じゃないけど、俺にとってとても大変なことだった。
「もしかして、嫌でしたか?」
「そんな! い、行きたいです。見たいです、新芽」
グレンノルトは「良かった」と微笑むと、出かける日時を簡単に決めてしまった。朝出発して移動し、大樹の新芽を見る。そして宿をとって次の日帰ると言う予定だ。デートじゃなく、これはもう短い旅行じゃないか? 楽しそうにするグレンノルトはを横目に、俺は大変なことになったとため息を吐いた。
*
さて、出かける当日になった。荷物を詰めたリュックを背負い、部屋を出る。服装は動きやすいものが良いと言われたから、着慣れたいつもの服を着た。
「トウセイ、地図を見てください。この森にある大樹に新芽が出ました」
グレンノルトは地図を広げ、そう言って南に位置する森を指さした。確かに、王都と森はかなりの距離離れている。グレンノルトは、徒歩を挟みながら馬車を乗り継いで森を目指すと説明してくれた。
「結構歩きますか?」
「もしかしてトウセイ、デートで疲れるの警戒してますか? あはは、大丈夫ですよ。途中町や村を通過する予定ですし、ほとんど馬車での移動ですから」
グレンノルトは、「前回のデートの最後、大変でしたもんね」と言って笑った。別にそんな考えがあって聞いたわけではない。ちょっと気になっただけなのに。
(というか、あれデートだったんだ……)
言われなかったぞ、デートって。いやでも最後に告白されたしな。デート……そっか、デートだったんだ。
「では出発しましょうか。あれ? 嬉しそうだけど、どうかしたんですか?」
「な、何でもないです!」
俺は、「さあ早く行きましょう」とグレンノルトの背を押した。
「時計塔と、大寿の新芽についてはもう解決していて……ああ、宝剣についてももうほぼ解決していますね。後は、大雨と川の氾濫、そしてリスの脱走ですね」
「重大そうなのと意味が分からないものが残りましたね」
「実は大雨も大体の予測はできているので、本当に何も分かってないのはリスだけなんです」
リスが残っちゃったんだ……何も分からないということに少し不安を感じるものの、起こることといえばリスが脱走することだけだし。うまく危機感が持てない。
「大雨はいつごろ来そうなんですか?」
「月の終わりごろに。明日にでも国全体に警戒する知らせが出るはずです」
月の最後の方に大雨が来るのか。なら、リスの脱走が大雨よりも先に来るのかな。
「やりたいことがあったら、今週中にやるべきですね」
「やりたいことか……グレンノルトは何かありますか? やりたいこと」
俺がそう尋ねると、グレンノルトは手元に落としていた視線を俺に向けた。嫌な予感、と言うべきか、グレンノルトがこんな顔をするときは、俺が彼の言葉に恥ずかしがるときだった。
「トウセイ、デートしましょう。見つかった大樹の新芽がとてもきれいで、あなたに見せたいんです。少し遠出にはなるのですが……ああ、宿を取って泊りで行ってもいいですね」
「ダメですか?」と尋ねられ、俺は「え、それは」と返事を迷ってしまった。だって、数日間グレンノルトとずっと一緒にいると言うことだろう。それは嫌じゃないけど、俺にとってとても大変なことだった。
「もしかして、嫌でしたか?」
「そんな! い、行きたいです。見たいです、新芽」
グレンノルトは「良かった」と微笑むと、出かける日時を簡単に決めてしまった。朝出発して移動し、大樹の新芽を見る。そして宿をとって次の日帰ると言う予定だ。デートじゃなく、これはもう短い旅行じゃないか? 楽しそうにするグレンノルトはを横目に、俺は大変なことになったとため息を吐いた。
*
さて、出かける当日になった。荷物を詰めたリュックを背負い、部屋を出る。服装は動きやすいものが良いと言われたから、着慣れたいつもの服を着た。
「トウセイ、地図を見てください。この森にある大樹に新芽が出ました」
グレンノルトは地図を広げ、そう言って南に位置する森を指さした。確かに、王都と森はかなりの距離離れている。グレンノルトは、徒歩を挟みながら馬車を乗り継いで森を目指すと説明してくれた。
「結構歩きますか?」
「もしかしてトウセイ、デートで疲れるの警戒してますか? あはは、大丈夫ですよ。途中町や村を通過する予定ですし、ほとんど馬車での移動ですから」
グレンノルトは、「前回のデートの最後、大変でしたもんね」と言って笑った。別にそんな考えがあって聞いたわけではない。ちょっと気になっただけなのに。
(というか、あれデートだったんだ……)
言われなかったぞ、デートって。いやでも最後に告白されたしな。デート……そっか、デートだったんだ。
「では出発しましょうか。あれ? 嬉しそうだけど、どうかしたんですか?」
「な、何でもないです!」
俺は、「さあ早く行きましょう」とグレンノルトの背を押した。
34
あなたにおすすめの小説
ちっちゃな婚約者に婚約破棄されたので気が触れた振りをして近衛騎士に告白してみた
風
BL
第3王子の俺(5歳)を振ったのは同じく5歳の隣国のお姫様。
「だって、お義兄様の方がずっと素敵なんですもの!」
俺は彼女を応援しつつ、ここぞとばかりに片思いの相手、近衛騎士のナハトに告白するのだった……。
《本編 完結 続編 完結》29歳、異世界人になっていました。日本に帰りたいのに、年下の英雄公爵に溺愛されています。
かざみはら まなか
BL
24歳の英雄公爵✕29歳の日本に帰りたい異世界転移した青年
小学生のゲーム攻略相談にのっていたつもりだったのに、小学生じゃなく異世界の王子さま(イケメン)でした(涙)
九重
BL
大学院修了の年になったが就職できない今どきの学生 坂上 由(ゆう) 男 24歳。
半引きこもり状態となりネットに逃げた彼が見つけたのは【よろず相談サイト】という相談サイトだった。
そこで出会ったアディという小学生? の相談に乗っている間に、由はとんでもない状態に引きずり込まれていく。
これは、知らない間に異世界の国家育成にかかわり、あげく異世界に召喚され、そこで様々な国家の問題に突っ込みたくない足を突っ込み、思いもよらぬ『好意』を得てしまった男の奮闘記である。
注:主人公は女の子が大好きです。それが苦手な方はバックしてください。
*ずいぶん前に、他サイトで公開していた作品の再掲載です。(当時のタイトル「よろず相談サイト」)
【第一部・完結】毒を飲んだマリス~冷徹なふりして溺愛したい皇帝陛下と毒親育ちの転生人質王子が恋をした~
蛮野晩
BL
マリスは前世で毒親育ちなうえに不遇の最期を迎えた。
転生したらヘデルマリア王国の第一王子だったが、祖国は帝国に侵略されてしまう。
戦火のなかで帝国の皇帝陛下ヴェルハルトに出会う。
マリスは人質として帝国に赴いたが、そこで皇帝の弟(エヴァン・八歳)の世話役をすることになった。
皇帝ヴェルハルトは噂どおりの冷徹な男でマリスは人質として不遇な扱いを受けたが、――――じつは皇帝ヴェルハルトは戦火で出会ったマリスにすでにひと目惚れしていた!
しかもマリスが帝国に来てくれて内心大喜びだった!
ほんとうは溺愛したいが、溺愛しすぎはかっこよくない……。苦悩する皇帝ヴェルハルト。
皇帝陛下のラブコメと人質王子のシリアスがぶつかりあう。ラブコメvsシリアスのハッピーエンドです。
ざこてん〜初期雑魚モンスターに転生した俺は、勇者にテイムしてもらう〜
キノア9g
BL
「俺の血を啜るとは……それほど俺を愛しているのか?」
(いえ、ただの生存戦略です!!)
【元社畜の雑魚モンスター(うさぎ)】×【勘違い独占欲勇者】
生き残るために媚びを売ったら、最強の勇者に溺愛されました。
ブラック企業で過労死した俺が転生したのは、RPGの最弱モンスター『ダーク・ラビット(黒うさぎ)』だった。
のんびり草を食んでいたある日、目の前に現れたのはゲーム最強の勇者・アレクセイ。
「経験値」として狩られる!と焦った俺は、生き残るために咄嗟の機転で彼と『従魔契約』を結ぶことに成功する。
「殺さないでくれ!」という一心で、傷口を舐めて契約しただけなのに……。
「魔物の分際で、俺にこれほど情熱的な求愛をするとは」
なぜか勇者様、俺のことを「自分に惚れ込んでいる健気な相棒」だと盛大に勘違い!?
勘違いされたまま、勇者の膝の上で可愛がられる日々。
捨てられないために必死で「有能なペット」を演じていたら、勇者の魔力を受けすぎて、なんと人間の姿に進化してしまい――!?
「もう使い魔の枠には収まらない。俺のすべてはお前のものだ」
ま、待ってください勇者様、愛が重すぎます!
元社畜の生存本能が生んだ、すれ違いと溺愛の異世界BLファンタジー!
何故よりにもよって恋愛ゲームの親友ルートに突入するのか
風
BL
平凡な学生だったはずの俺が転生したのは、恋愛ゲーム世界の“王子”という役割。
……けれど、攻略対象の女の子たちは次々に幸せを見つけて旅立ち、
気づけば残されたのは――幼馴染みであり、忠誠を誓った騎士アレスだけだった。
「僕は、あなたを守ると決めたのです」
いつも優しく、忠実で、完璧すぎるその親友。
けれど次第に、その視線が“友人”のそれではないことに気づき始め――?
身分差? 常識? そんなものは、もうどうでもいい。
“王子”である俺は、彼に恋をした。
だからこそ、全部受け止める。たとえ、世界がどう言おうとも。
これは転生者としての使命を終え、“ただの一人の少年”として生きると決めた王子と、
彼だけを見つめ続けた騎士の、
世界でいちばん優しくて、少しだけ不器用な、じれじれ純愛ファンタジー。
転生したら親指王子?小さな僕を助けてくれたのは可愛いものが好きな強面騎士様だった。
音無野ウサギ
BL
目覚めたら親指姫サイズになっていた僕。親切なチョウチョさんに助けられたけど童話の世界みたいな展開についていけない。
親切なチョウチョを食べたヒキガエルに攫われてこのままヒキガエルのもとでシンデレラのようにこき使われるの?と思ったらヒキガエルの飼い主である悪い魔法使いを倒した強面騎士様に拾われて人形用のお家に住まわせてもらうことになった。夜の間に元のサイズに戻れるんだけど騎士様に幽霊と思われて……
可愛いもの好きの強面騎士様と異世界転生して親指姫サイズになった僕のほのぼの日常BL
【本編完結】落ちた先の異世界で番と言われてもわかりません
ミミナガ
BL
この世界では落ち人(おちびと)と呼ばれる異世界人がたまに現れるが、特に珍しくもない存在だった。
14歳のイオは家族が留守中に高熱を出してそのまま永眠し、気が付くとこの世界に転生していた。そして冒険者ギルドのギルドマスターに拾われ生活する術を教わった。
それから5年、Cランク冒険者として採取を専門に細々と生計を立てていた。
ある日Sランク冒険者のオオカミ獣人と出会い、猛アピールをされる。その上自分のことを「番」だと言うのだが、人族であるイオには番の感覚がわからないので戸惑うばかり。
使命も役割もチートもない異世界転生で健気に生きていく自己肯定感低めの真面目な青年と、甘やかしてくれるハイスペック年上オオカミ獣人の話です。
ベッタベタの王道異世界転生BLを目指しました。
本編完結。番外編は不定期更新です。R-15は保険。
コメント欄に関しまして、ネタバレ配慮は特にしていませんのでネタバレ厳禁の方はご注意下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる