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しおりを挟むその光景は、軽い衝撃を彼に与えた。
薄桃と茶色が混ざった、ココアみたいな髪色。角度が変わると苺色になる、オレンジの瞳。
身長が低めだからか、余計に少し不健康にも見える手足の細さは、普段の彼女の大人しい様子も相俟って、見る者によっては魅力的に感じられるアンバランスさを齎した。
不思議と庇護欲を駆り立てられないのは、彼女自身が、人の手を借りる事をあまり良しとしない自立心から来るものかもしれなかった。
そんな彼女が、子供の様に手を伸ばした先が、自分で無かった事に寒ささえ覚える。吹き付けた涼しい風の所為で、自分の心に空いた穴があった事に、サクは遅からず気が付いた。
部屋を出る際に、双子の兄の様子を確認したカグロとは違って、一度も此方を振り向きもしなかった所がカレンらしい。
だけど、そんな彼女らしさも、今となっては、余計に、僅かな心の痛みを加速させるだけだった。
いつからだ?いつからだった。
この心に、穴が空いていたのは。
「何だよそれ。」
妹が兄に抱っこされている。文面からすると、何の違和感も無いが、そこに注釈で、高二の妹と高三の兄と付ければちょっと可笑しいと誰でも思う筈だ。
何よりも、今朝、仕事の方でいつもなら有り得ないミスをして、気分転換にと行こうとしたついでに誘ったら妹に断られて、しかも、そんな時に、弟に妹との心温まるエピソードを聞かされた。
天然気味な所があるとは昔から思ってはいたが、寧ろ、聴く側の胸の内が凍える話をするなんて。流石に無いだろ。
話をし終わったらそれはそれで、此方の反応を見ずに立ち去る辺り、兄妹だなとも思う。
気を紛らわせる為に、適当にテレビを付けた後、ソファーに座った。
見る訳でもないが、何の音もない場所で何もしないでいるのは気が狂いそうだった。
ふと、そうして、ぼんやりとしている間に、記憶の蓋が開いた。
過去に従妹との会話で、自分とよく似た容姿ーー黒髪青目の弟なんかよりも、よっぽど双子らしい俺そっくりの色合いーーの女がこんな事を言っていた。
「ウチに来ない、って言ってたっけ。」
それが養子なのか、果たして、婿入りかは分からないが。
当時は考えもしなかった、選択肢の一つに入れてしまえる程には、今日の事が、傷になっていた様だった。
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