荒廃した都市で

久遠輪

文字の大きさ
3 / 3

第3話

しおりを挟む
「私たちさ患者が着る服じゃん流石に着替えない」
そういえばそうだった。病院にあったのは食料と水だけで衣服は何一つ無かった。
「近くに大きな服を売ってたところがあるからそこで買えばいいんじゃない?」
服屋の場所に着くとそこには周りと同じように壁が植物に蝕まれていた。でも店の中は、誰かが毎日掃除しているかのように、綺麗だった。
「これからたくさん歩くんだから歩きやすい服装にしとけよ」
「わかってるってそんなに言わなくても」
予備の服をリュックに詰めていると後ろから井浦に呼ばれた。
「この服どう?」
そこには今時の女子が着るようなコーデをした井浦が立っていた。しかも、服に加えてサンダルを履いていた。
「いくらなんでも歩きにくいだろ。これからまだまだ歩くんだぞ。そんなサンダルで歩いて足の裏が悲鳴あげても知らないぞ。」
僕がそう言うと井浦は少し不貞腐れて。別の服を見に行った。
結局あの後、井浦が服を選ぶのにかなりの時間を要し歩くのを再開したのは太陽が真上に上がっていた。少し歩くと銀座の大通りに出た。道路には多くの車が乱雑に放置されていて、その上に木の幹が乗っていた。
「ところで今まで聞いてなっかったけど、渋谷の行き方わかる?」
「国道246号線を真っ直ぐ歩いていけば渋谷に着くハズだよ」
銀座を出て国道246号線を歩き始めた頃には朝日が昇り、朝日で照らされ緑に染まった都市は幻想的な雰囲気を醸し出していた。
 内閣府の前を通ると一枚の紙が落ちていた。紙には、パソコンで打たれたであろう無機質な文字で書かれていた事に二人は驚いた。
『5月12日 植物供給システムが崩壊。それに伴い全国で植物の異常成長が見られる。最終目撃地点は渋谷。
同時に渋谷での捜索を開始する』
ただそう書いてあった。紙に書かれた文を読み終わり二人で顔を見合わせ、驚いた。数秒間、無言が続いた後、井浦が口を開いた。
「まだ、人が全員死んだわけじゃないよね?」
井浦は顔を蒼白にしていたがそれを、見せまいと我慢をしていたが、明らかに声は震えていた。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

航空自衛隊奮闘記

北条戦壱
SF
百年後の世界でロシアや中国が自衛隊に対して戦争を挑み,,, 第三次世界大戦勃発100年後の世界はどうなっているのだろうか ※本小説は仮想の話となっています

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

処理中です...