白石斗羽の苦悩 ー移りゆく色ー

優月ジュン(ゆづき じゅん)

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10 ちょっと眠ってて。



今日のお昼は洋食屋さんに来ていた。
オムライスを注文した。
そこで僕はまた葵のことを思い出していた。


「葵の好きなごはんは何?」
「…オムライス。」
「僕もオムライス大好き。ケチャップとデミグラスどっちが好き?」
「…どっちも。」
「じゃあ明日のお昼は僕が葵のためにオムライスを作るね。」
「…料理できるの?」
「僕ん家のキッチン、料理する人のキッチンでしょ?調味料も調理器具も揃ってるでしょ?」
「見たことなかったら。料理してるところ。」
「買って帰った方が、こうやって葵を早く抱けるからね。」
「んあっ…ぁあっ…」

僕はそう言うと動きはじめた。
葵の中に入ったまま話してたから。

「明日は家にあるもので作るから、ケチャップにするよ?」
「んっ…はぁっ…あっ…」
「葵の分は僕がケチャップでハートを描くから、僕の分は葵がやってね。」
「あっ…あっんっ…」
「葵はふわとろの卵としっかり焼きどっちが好き?」
「あっ…ぁあっ…」
「ねぇ…どっち?」
「…どっちもっ…」
「じゃあ明日はケチャップだからしっかり焼きにするね」

それから僕は自分が満足するまで葵を抱き続けた。

次の日も朝から葵を抱いていた。葵の限界がきたからゆっくりと寝かせておいた。僕は早速キッチンに立って食材を切って準備だけしておいた。

それが終わるとまた葵のところへ戻り抱きしめる。しばらくすると僕も寝てしまった。
目が覚めて隣を見る。葵はまだ寝ていた。
ふふっ、かわいい…。

「葵、起きて。」
「…んー…」

ほんとにかわいいな…。
僕は思わず葵のほっぺにちゅっとキスをした。

「起きて。」
「…うん…。」

葵が起き上がると僕は葵を抱きしめた。

「おはよ。」
「…おはよう…。」
「今日のお昼はオムライスだからね。」
「…うん…。」

それから僕は葵にオムライスを振る舞った。

「どう?葵の口に合う?」
「…美味しい…」
「ほんと?」
「うん。ありがとう。」

葵は少しだけ笑いながらそう言った。

葵が…笑った…。

僕に向けられた笑顔だ。
葵が僕に向かって笑いかけてくれた。

それがすごく嬉しかった。

だから僕はその夜も葵のためにごはんを作ることにした。

「ねぇ、夜は何食べたい?」
「…まだわかんない。」
「唐揚げでもハンバーグでも何でも作るよ?」
「作ってくれるの?」
「うんっ。僕が作るよ。」
「…。」
「何がいいか考えておいてね。」

それから2人で食べ終わって少しゆっくりすると、僕は葵を捕まえベッドへと向かった。


結局…葵にごはんを作ったのは数回だった。
もっと作りたかった。
葵が美味しそうに食べていたから。
少しだけ笑顔になるから…。

そんなことを思い出していたら、オムライスが運ばれてきた。僕は目の前のオムライスをゆっくりと口へ運んだ。




今日は桃井さんと飲みにきていた。

桃井さんは今日あった出来事や、仕事のことを色々話してくれた。
コロコロと笑いながら話す桃井さんは可愛かった。それにやっぱり声が優しい。
その声が耳に心地よく響く。お酒が入った桃井さんは楽しそうにしていた。
僕も楽しいけどやっぱり葵を重ねてしまう。
僕はそれが嫌だった。
いつも2杯でやめているお酒を今日は5杯も飲んでしまった。
酔った僕の目に映る桃井さんの姿は、完全に葵になっていた。

葵…
かわいい…

僕の…僕の葵…

葵はゆっくり抱かれるのが好きだったよね。
僕のが奥に届くたびに小さく震えて、僕が与える刺激に対して必死に受け止めていたよね。
その姿がすごくかわいかった…。
今日は帰ったらそうやって抱いてあげるね。
葵が気持ちのいいように…。
ゆっくり、ゆっくりと…そうやって抱いてあげるからね…。

だからそんな葵のかわいい姿を僕にたくさん見せて?かわいい声をたくさん聞かせて?
僕いっぱい葵のことが好きだって伝えるからね。
君を抱きながら、いつものようにたくさん僕の愛を伝えるからね…。
葵を僕でいっぱいにしてあげる。
だからちゃんと僕の愛を受け止めて…。

「白石くん、大丈夫?今日はいつもよりも飲んでるみたいだけど。」

僕は酔っ払いながらも桃井さんの声で現実に引き戻された。

「…ごめん…僕なんか変なこと言ったりしてた?」
「ううん。ボーっとしてたよ?今日はもう帰ろうか。」
「うん。ごめんね。飲みすぎちゃったみたい。」


僕は帰るとすぐに枕を抱きしめた。

ねぇ葵…
僕…前を向きたいから…
だから少しだけ眠ってて。出てこないで。
僕がちゃんと立ち直るまで、少し眠ってて。
お願い…。今僕頑張ってる最中だから。

そう願いながら眠りについた。



「…食欲ある?」
「…あんまない…。」
「…雑炊とかも無理そう?」
「葵が僕に食べさせて。」
「…食べられそうなの?」
「葵が食べさせてくれるなら。」

僕がそう言うと葵はキッチンに向かった。
トントントン…と、包丁でリズムよく食材を切っている音が聞こえてきた。
それからしばらくするといい匂いが漂ってきた。

僕はせっかくの休みの日だっていうのに熱を出してしまった。体がだるい。葵を抱きたいのに…。

「…できたよ。食べられる?」
「うん。」

僕は体を起こした。

「ここで食べる?」
「うん。食べさせて。」

葵は雑炊をスプーンで掬うと、僕の口元へと運んだ。

「…熱そう…ふーふーして冷まして?僕猫舌だから。」

葵は僕の言う通りにしてくれた。
それからまた僕の口元へと運んだ。
野菜や薬味、卵や生姜なども入っていて、それらが僕の体に染み渡った。
熱でだるいはずだったのに、優しい味付けが僕の食欲をそそった。

「もっとちょうだい。」
「食べられそう?」
「うん。美味しい。ありがとう。」

葵はまたスプーンで掬うと少し冷ましてから僕の口元へと運んでくれた。

全部食べ終わると、葵は薬と水を持ってきてくれた。僕はそれを飲むと葵を抱き寄せた。

「…すごく熱い…汗もかいてる…」
「うん。汗で気持ち悪い。」

それを聞いた葵は「ちょっと待ってて」と言い、僕から離れた。

少しするとタオルを数枚持ってきた。

「ここの引き出し開けるよ?」
その引き出しには部屋着が入っていた。
葵はそこから着替えを取る。

「これで顔を拭いて。」
葵は温かく濡らしたタオルを差し出してきた。
「葵が拭いて?僕だるい。」

葵は僕の顔や首を優しく拭いてくれた。
気持ちいい…。

「体拭くから服脱いで?」
「葵が脱がして。」

僕がバンザイをすると葵は服を脱がしてくれ、優しく背中を拭いてくれた。
これも気持ちいい…。
そのまま腕も拭き、タオルを替えて今度は胸やお腹も拭いてくれた。

僕に新しい着替えを着せると「タオル洗ってくるからもう少し待ってて。横になってていいから。」とそう言い一旦僕から離れていった。

こんなふうに誰かに看病してもらうのは初めてだった。いつも汗でびしょびしょになってもせいぜい着替えるだけだった。あんなふうに雑炊を作ってもらったこともない。
そんなことをぼんやりと考えていると葵が戻って来た。

「脚拭くからズボン脱がせるよ?」

僕は脱がせやすいように少し腰を浮かせた。
それから葵は脚も丁寧に拭き、替えのズボンを履かせてくれ、それが終わると布団を掛けてくれた。

「ありがとう。さっぱりして気持ちいい。」
「…よかった。」

葵は少しだけ笑った。
…かわいい…。

「水飲みたい。」

葵は水を注いだコップを僕に差し出した。

「飲ませて?」
「…起き上がれる?」
「ううん。葵が口移しで僕に飲ませて。」
「…。」
「お願い。」
「…確かストローあったよね?」

立ち上がる葵の腕を僕は掴んだ。

「葵が飲ませて。」
葵は言う通りにしてくれた。
「もっと飲みたい。」
それから4~5回そうやって水を飲ませてくれた。

「淋しいから一緒に寝て。」
葵はこれも言う通りにしてくれた。
僕はそっと葵を抱きよせる。

僕は子どもの頃を思い出していた。
その頃の僕は熱を出すと一人ぼっちに隔離された。枕元にはフルーツゼリーと栄養ゼリー、水とスポーツドリンクが置いてあった。
ご飯の時間になるとお湯を入れればできるカップスープにご飯を入れたものや、レトルトのおかゆを出された。
育ての母は一応、それを僕の口へと運んでくれたが、僕がそれを食べられないとすぐに部屋を出て行った。「ゼリー置いといてるから、食べられそうな時に食べなさい。」と、そう言い残して。

汗でびしょびしょになったら着替えさせてはくれた。でも葵がしてくれたように体を拭いてもらった記憶はなかった。それに隔離されていて、ただただ寂しかったのを覚えている。心細いのに誰も近くにいてくれない…。

寂しい…。
心が寒い…。
誰か僕のそばにいてよ…お願い…。
僕は熱を出す度にそう思っていた。
熱のせいか、よく悪夢を見ていたのを覚えている。すごく怖かった。誰か…誰でもいいから僕を抱きしめて。
“大丈夫だよ”って言いながら僕を抱きしめてよ。


子どもの頃そんなんだったからこんなふうに看病してもらって、僕はすごく嬉しかった。
温かかった。
心が温かかった。

お昼を過ぎると、僕は元気になった。
たぶん…薬が効いてるだけだ。
でも元気になっちゃったもんだから、葵を抱きたくなった。だからいつの間にかに眠ってしまったであろう葵の体を撫でまわした。

「はぁ…ん…」

葵から可愛い声が漏れ出した。
僕は下へ手を伸ばすと下着の中へと滑り込ませた。

濡れてる…

僕はゆっくりとやさしく、そこを撫でる。

「んっ…具合は?」
「もう大丈夫。」
「そんなことない。…んんっ…薬が効いてるだけだよ。まだ寝てないと…。」
「大丈夫だから。」

僕はゆっくりと指を入れ、葵の弱点を攻めた。

「やっ…だめっ…」
「いっぱい濡れてるよ。」
「とわくんまだっ、具合わるいからっ」
「もう入れるね。」

僕は後ろから葵に入れた。

「んんっ…あぁっ…」

それから僕は葵を抱き続けた。
薬が効いているだけかと思っていたけど、僕の熱はすっかりと下がり、体のだるさもなくなっていた。少し疲れていただけなのかもしれない。
それか…葵が作ってくれた雑炊のおかげか、体を拭いてくれたおかげか…。

僕は休憩をとりながら何度も葵を抱いた。
深く…深く…何度も葵の奥へと押し込む。




…。

眠っててって言ったのに…。
なんで夢に出てくるの?

今見た夢も、僕の記憶だった。
あの時…僕は結局長く葵を抱いていた。夜になっても僕は元気なままで、葵が気を失うまで抱き続けた。

あれは…やっぱり葵が作ってくれた雑炊と体を拭いてくれたおかげだ。

僕はそう思った。

はぁ…。
また葵のことを…。

葵…お願いだからちょっと眠ってて。

お願いだから…。


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