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14 僕はずるい。
ある日の昼休み、茜と一緒にランチをしていた。
ご飯を食べ終わり2人で戻っていると、声を掛けられた。茜が。
「おーい桃井ぃ。」
「あ、“相馬(そうま)”さん。相馬さんもランチの帰りですか?」
「うん、そう。そちらは?」
「彼氏です。彼もこの辺りで働いていて、お互いの職場が近いんです。」
「そうなんだ。俺は桃井の同僚で相馬です。よろしくね。」
「白石です。」
僕はそういうと、軽く頭を下げた。
それから2人とは解散し、僕は自分の会社へと戻った。
相馬というやつは、この前茜と一緒にいたやつだ。茜と笑い合って話していたやつ。
茜が敬語を使っていたところを見ると、きっと先輩なのだろう。
僕は相馬を見てもなんとも思わなかった。
やっぱりあの時のあれは嫉妬じゃなかったんだ。
ただ茜が離れていくかもしれないという不安に駆られただけなんだ。
できれば茜のことを好きになりたい。
茜を傷つけたくない。
一人ぼっちになりたくない。
また…寒くなりたくない。
僕はずるい。
僕は自分勝手だ。
僕と茜はそれからも付き合いを続けていた。
ランチや仕事後の食事や飲み、それから休日のデートや僕の家でのお泊まり。たまに茜の家にも泊まりに行った。
それでも僕はまだ、茜のことが好きなのかわからないままでいた。
本当に…僕はどうしようもないやつだ…。
このまま茜を僕に縛りつけちゃいけない。
そう思うのに、僕は茜を手放す気にはなれなかった。
また1ヶ月以上が経った。
「茜…」
「なに?」
「僕と一緒にいて辛くない?」
「大丈夫だよ。」
「…本当に?」
「本当だよ。」
茜は僕の目を見てハッキリとそう言った。
「斗羽くんは?私と一緒にいて辛い?」
「…辛くない…でも罪悪感はある。」
「……罪悪感か…。」
茜はそうポツリと言うと、寂しそうな顔になった。
やっぱり…もう限界なんじゃないだろうか…。
「私はまだ…斗羽くんと一緒にいたい。斗羽くんは?」
「…僕はずるいから。」
「そんなことないよ。」
「そうなんだよ。」
「私が斗羽くんと一緒にいたいから、そうしてるんだよ。」
「…。」
僕が何も言わないでいると、茜がふわっと抱きしめてくれた。
…安心する…。
茜はまだ僕と一緒にいてくれる…。
よかった…。
「茜、本当にありがとう。」
「ううん。私…まだ諦めたくない。だから斗羽くんがまた苦しくなったりしたら、こうやって抱きしめるからね。」
「…うん…嬉しい。」
「デートもたくさんしようね。」
「そうだね。ありがとう。」
茜はまた前向きな言葉を掛けてくれた。
そんな茜のことをちゃんと好きになりたい。
それで大事にしたい。
そうなりますように。
僕がちゃんと茜のことを好きになる日がきますように…。
「…斗羽くん。」
「なぁに?」
「…食材がもうない…。」
「じゃあもう一回したら一緒にスーパー行こう?」
「…今行こう?」
「やだ。」
「…。」
「もう一回したい。僕まだ足りない。」
「でも…そうしたら私動けなくなっちゃうかもしれないから…。」
「ふふっ。さっきも脚ガクガクになっちゃったもんね。」
「…だから…」
「だめ。離さない。入れるよ。」
「いやっ…あっんっ…」
僕は嫌がる葵を押さえ込み、奥をグリグリと攻めた。
「だめっ…」
「すぐイッちゃいそう?さっきもいっぱいイッてたもんね。」
「んっ…ああっ…」
「気持ちいい?」
「ふぅんっ…うんっ…」
「かわいっ。僕でいっぱい気持ちよくなってねっ。」
「もういいっ…もういやっ…」
僕は動きを止めた。
「なんでそんなこと言うの?」
「…もうしたくない…。」
「やだ。僕はしたい。」
「…お願い…。」
「…やだ…僕葵の中にいたい…。
“もうしたくない”だなんて…そんな悲しくなるようなこと言わないでよ…。」
「…。」
「無茶苦茶な抱き方しないから。ゆっくりするから。それならいい?」
「…。」
「なんか言ってよ葵…僕淋しくなってきちゃった。お願い…ゆっくりするから…葵の中にいさせて…お願い…葵から離れたくない…。」
「…。」
「…。」
「…。」
「葵。2択だよ。めちゃくちゃにされるか、ゆっくりするか。どっち?じゃないとおもちゃ使っちゃうよ?それともまた縛られたい?」
「…ゆっくり…」
「わかった。僕をたくさん感じてね。」
それから僕はゆっくりと動き、長い時間葵の中にいた。
「葵…好きだよ。僕から離れたらだめだからね。」
「はぁっ…んっ…」
「大好きだよ。」
「…っ…はぁっ…」
「葵は?」
「んっ…すき…」
結局葵がぐったりとするまで僕は抱いた。
だからスーパーへは僕1人で行った。
帰ってくると葵は起きていた。
「…買ってきてくれたの?」
「うん。ひと通り必要そうなものは買ってきたよ。」
「…ありがとう…。」
「いいよ。」
葵の元気がない…。
「どうしたの?」
「……怒ってる?」
「なんで?」
「さっき…“したくない”って私が言ったから…。」
葵は少し怯えたように言っていた。
僕は胸が痛くなった。
なんで…僕に怯えてるの…?
僕はそっと葵を抱きしめた。
「怒ってないよ。だって僕は葵のことが大好きだから。確かに悲しくなったけど、怒ってないよ。だからそんなに怯えないで。」
「…うん…。」
「大好きだよ。僕ちゃんと優しくするから。」
「…うん…。」
「今日の夜ご飯は僕が作るね。ひき肉が安くなってたからハンバーグを作るよ。」
僕がご飯を作ると、葵は少しだけ笑うから…その顔が見たくて僕は作ることにしていた。
「…ありがとう…。」
「その前にお風呂入ろう?今準備するから。」
それから2人でお風呂に入り、僕は葵の全身を洗った。葵の元気がなかったから、今回はそこで抱くのはやめておいた。
葵にハンバーグを振る舞うと、やっぱり少しだけ笑いながら“ありがとう”と“美味しい”を僕に伝えてくれた。
食べ終わると僕は葵を捕まえて抱きしめた。
「大好きだよ。」
「…。」
「葵は?」
「…私も…」
「だめ。ちゃんと言って。」
「すきだよ…。」
「優しくするから…葵の中に入っていい?」
「…。」
「葵…。」
「…うん…。」
…。
葵の夢を見た…。
これは僕の記憶だ。
最悪な夢だ。あの時の葵は確かに怯えていた。
僕の機嫌を伺っていた。
たぶん…僕にめちゃくちゃに抱かれることを恐れていたんだ。
何度も何度も…僕がそうやって抱いてきたから。
強制的にイカせるような抱き方を…。
僕は胸が痛くなった。
今ならわかる。あんな抱き方しちゃダメだって。
僕は欠けている…。
色々欠けている…。
普通の人になりたい…。
今少しずつ何がいけなかったのかわかりはじめている。だから当時の僕を振り返ると胸が痛くなる。わかりはじめたから痛くなる…。
でもまだきっと僕は欠けている…。
痛い…
辛い…
苦しい…
「あれからどう?」
僕はまたリオちゃんとカフェに来ていた。
「まだ…よくわからないんだ。」
「そっか。でも付き合いは続いてるんだよね?」
「うん。一応ね。」
「茜ちゃんは、本当に斗羽くんのことが好きなんだね。」
「………僕ね…色々と欠けているんだ。僕…普通の人になりたい。」
「普通の人?」
「そう。普通の人。」
「……斗羽くん…私は“普通の人”なんていないと思うな。みんな何かしら欠けていて、それを必死に克服したり、隠したり…だから普通…というか、“まとも”に見えるだけなんだと思うな。そもそも斗羽くんが思う普通ってなに?」
…。
僕が思う普通…。
「僕ね、人の気持ちがわからないんだ。
今までにも“ひどい”って言われたことが何回かあったけど、なんで“ひどい”のかがわからない。
欲しいものを力尽くで手に入れた時も、なんでそれがいけないのかがわからなかった。欲しいものを手に入れてなにがいけないの?って。
みんなはそういうのがわかるんでしょ?何が“ひどくて”、なにをしちゃ“いけない”のか。他にもたくさんある。」
リオちゃんは少し考えていた。
「確かに、それがわかる人もたくさんいると思うよ?だからってそれが普通だとは限らない。
それぞれみんな“普通”の“基準”が違うんだから。」
普通の基準…。
それも…そうだ…。
「うん…。最近ね少しずつわかってきた気がして、色々と後悔してるんだ。」
本当にそれを考えると胸が痛くなる。
「斗羽くんは今そうやって自分と向き合って色々考えてるんでしょ?今からでもいいじゃん。
少しずつ斗羽くんの中で何がよくて、何がいけないのか、そうやって勉強していけばいいんじゃない?後悔ばかりじゃ苦しくなるよ?ちゃんとそうやって考えるようになったってことはさ、成長してるんだから、たまには自分を褒めてあげなよ。」
自分を褒める…。
僕は自分を責めてばかりいた。
後悔ばかり…。
「リオちゃんありがとう。僕は自分を責めてばかりだったよ。」
「そんなんじゃいつか壊れちゃうよ。私は斗羽くんのこと好きだよ。いいところたくさん知ってるよ。」
「ふふっ。リオちゃんはやっぱり優しいね。」
「斗羽くんだって優しいよ。」
「ありがとう。」
そのあと僕の心は少し軽くなった。
少しだけ…茜と向き合えるような気がしてきた。
もう…葵の時にしたようなことはしないようにしないと…。
「はぁっ…あっんっ…」
「…。」
「んっ…とわくんっ…」
僕は茜を抱いていた。
ちゃんと茜を見ていた。
たまにチラつく葵を追い出しては、目の前の茜に集中した。
茜が気持ちいいように抱いていた。
少しだけ激しく…。
茜…
茜…
葵の名前をうっかりと言わないように、頭の中で何度も茜の名前を繰り返し呼ぶ。
茜…
茜…。
抱き終わると茜を抱きよせる。
それから茜の頭を撫でた。
「斗羽くん…。」
茜が呟くようにそう言った。
まだ…
僕は茜を愛おしいとは思えなかった。
でもやっぱり茜が僕のそばにいてくれることは嬉しかった。
茜から抱きしめられるたびに、僕は包み込まれるように感じていたから…。
それが心地よかった。
茜…ありがとう…。
「これ葵がいちから作ったの?」
「…うん。」
「すごい。美味しい。」
僕は葵に夜ご飯を作ってもらったことが何回かあった。今日はエビのマカロニグラタンだった。
「僕にも作り方教えて。」
「…わかった。」
そのグラタンは優しい味がしてすごく美味しかった。本当に美味しい…。優しい…。
葵が作るものは全部美味しかった。
後日葵と一緒にキッチンに立ち、作り方を教えてもらった。
「ホワイトソースってこうやって作るんだね。僕今までグラタンの素とかそういうの使ってたよ。」
「…簡単でしょ?クリームシチューもこんな感じで作れるよ。」
「ルーいらないんだ。」
「いらないよ。」
僕はこうやって葵と一緒に料理をするのが楽しかった。だから他にも何品か教えてもらった。
僕も料理は好きだし色々と作れるけど、葵の味付けが僕は大好きだった。
ハンバーグも僕が作るものよりふわふわだったし、チキンステーキも皮がパリパリとしていて手作りのソースも美味しかった。肉じゃがだって、甘めかそうじゃないかの差くらいで、誰が作っても同じだと思ってたのに、葵が作るとやっぱり特別に美味しく感じた。だから葵から料理を教わってはスマホにメモを取った。
僕は今日、そのメモを頼りに1人でキッチンに立ってグラタンを作ってみた。茜は友達と遊ぶ予定で、僕は暇だったからそうしてみることにした。
何回か味見をしてみたけど、葵のようには作れなかった。ちゃんとメモを見ながら作ったのに…。美味しいけどなにか違う。
一緒に作った時とは少し違う。あの時と同じように作ったはずなのに。
葵が作ったグラタンが食べたい…。
葵が作った料理が食べたい…。
葵…。
日々は過ぎ、茜との付き合いも半年以上が経った。
僕はまだ茜のことを好きなのかわからないでいた。
もう…だめかもしれない…。
さすがに半年以上も経てば茜は僕に見切りをつけるだろう…。茜の貴重な時間をいつまでも僕に縛らせておくようなことはできない。
僕はそう考えるようになっていた。
このままじゃだめだ。今度は茜が苦しくなっちゃう。茜の心が寒くなっちゃう。
いや…
もう苦しい思いをたくさんしてるかもしれない。
僕のせいで。
それでも、まだ僕と一緒にいて欲しい。
1人になりたくない。
僕はずるい…。
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