15 / 27
15 僕を頼ってよ。
ある時、茜と連絡が取れなくなった。
茜とは毎日連絡をとっていたから“たった1日”音信不通になっただけで僕の心はざわついていた。
それが2日続いた。
もしかしたらもう茜は僕に見切りをつけたのかもしれない。
僕はそう思った。
それならそうと、ちゃんと言って欲しかった…。
こんなふうには終わりたくなりたくなかった…。
茜と連絡が取れなくなって3日目。
僕はランチを終えて会社に戻っていると偶然茜の職場の相馬さんを見かけた。
だから僕は思わず声を掛けた。
「あの…。」
「あ、君は確か…白石くん。」
「はい。」
「桃井の体調はどう?」
え…。
「桃井、熱出してるでしょ?今日で休んで3日目だけどどう?少しは良くなった?」
知らない…。
そんなの僕知らない。
僕は胸がザワザワして気持ち悪かった。
茜…今君は辛い思いをしているの…?
苦しいの…?
僕は会社を早退して急いで茜の元へと向かった。
家に着くとインターホンを何度も鳴らした。
大丈夫…?
茜…大丈夫…?
なかなか茜は出てこない。ドアを叩きながら声を掛けてみた。
「茜っ、茜っ。」
またインターホンを押す。
しばらくするとドアが開いた。
開いた瞬間、茜が僕に倒れ込んできた。
熱い…
息も荒い…
どうして…僕を頼らなかったの…?
僕は茜を抱きかかえると、部屋の中へと入り茜をベッドへと寝かせた。
茜はびっしょりと汗をかいていた。だから温かく濡らしたタオルを用意し、体を拭いてから着替えさせた。
葵が以前僕にそうしてくれたから、だから僕は茜にそうすることができた、
テーブルの上やベッドの下には飲みかけの栄養ゼリーやカップスープ、水のペットボトルなどが散乱していた。
…。
茜…心細かったんじゃないかな…。
まともな食事も取れずに1人きり…
僕はまた子どもの頃に熱を出した時の自分を思い出した。
茜…辛かったよね…1人で寂しい思いをしたよね。なんで僕を頼らないの?僕を頼ってよ…。
僕は冷蔵庫を開けてみた。
…何も入ってない。
そう言えば茜はあまり料理はしないと言っていた。次に調理器具を確認する。包丁、まな板、片手鍋、フライパン、お玉、菜箸…。
その程度しかなかった。でも今はそれで十分だ。
僕は玄関の棚に置いてあった茜の家の鍵を手にし、スーパーへと向かった。
野菜や卵など次々とカゴへ入れていった。
フルーツゼリーやプリン、スポーツドリンクなどもカゴに入れる。
そらから薬局へ行き、薬や栄養ドリンクも購入して茜の家へと戻った。
家につくと早速キッチンに立った。
葵が以前僕に作ってくれたような雑炊を、僕も真似して作った。味見をしてみる。葵ほど美味しくはできなかったけど、なかなかいい味のものが作れた。
僕は茜に声をかけた。
「茜。起きられる?」
「…ん…」
「茜。」
「…とわくん…」
茜は目を覚ました。
まだ少し呼吸が荒い。こんなんじゃ食べられないか…。
僕は少しだけお椀に雑炊をよそうと、茜の口に運び食べさせる。
それから薬を飲ませてからまた寝かせた。
次に起きた時によくなってなかったら病院へ連れて行こう…。
僕は茜の顔をまた濡らしたタオルで汗を拭いながらそう思っていた。それから冷たいタオルをおでこに当てた。冷んやりシートも買ってくればよかったな…。
僕はまた薬局へと向かい、熱を覚ます冷んやりシートを買いに行き、戻ってくると茜のおでこに貼った。
それからテーブルの上やベッドの下に散らばった、飲み物や食べ物のゴミを片付けた。
しばらくしてまた茜の様子を見る。
また汗をかいていたから、おでこに貼ったシートを剥がして、濡らしたタオルで顔や首を拭いた。そうしてからまた新しいシートをおでこに貼った。茜は起きることなくずっと眠っていた。
茜は…僕に気を遣って連絡をしなかったんだ。
僕が茜を好きではないことを、茜は知っているから…。でも…僕は頼って欲しかった。
このまま…茜が目を覚まさなかったらどうしよう。このまま茜が死んじゃったらどうしよう。
やっぱり先に病院に行くべきだったのかな。救急車呼んだ方がよかったのかな…。
どうしよう…このまま茜が起きなかったらどうしよう…。
僕は急に不安になった。
茜…起きて…。
目を覚まして…。
それからも茜は結局眠ったままだった。
「斗羽くん。」
…。
優しい声が僕の耳に届いた。
「斗羽くん…。」
茜の声だ…。
僕はいつの間にか茜のベッドに突っ伏して眠っていたようだ。
僕は声がする方に顔を向けた。
茜は僕のことを心配そうに見ていた。
僕は思わず茜を抱きしめた。
「よかった…。このまま茜が起きなかったらどうしようって、僕怖かったんだっ。」
「…斗羽くん…。」
「よかった…よかった…。具合はどう?」
「だいぶ楽になったよ。」
「本当に?嘘ついてない?」
「本当だよ。」
「熱測って?」
僕はテーブルの上に置いてあった体温計を茜に手渡した。熱は微熱程度になっていた。
よかった…。
「汗かいたでしょ?体拭いてあげる。」
「…ありがとう。」
僕はまた温かく濡らしたタオルで茜の体を拭き、着替えさせた。
「さっぱりした。」
「うん。よかった。食欲はある?」
「うん。」
僕はキッチンに向かうと、スープを吸って増えた雑炊に水を足し、味を整えてから茜の元へと戻った。それから茜の口元にスプーンを運ぶ。
「自分で食べられるよ。」
「いいから。」
僕は食べさせてあげたかった。
葵が食べさせてくれた時、すごく嬉しかったから。だから茜にもそうしたかった。
「美味しい…。」
「よかった。いっぱい食べてね。」
それから茜が食べ終わると、薬を飲ませた。
茜はすぐ眠りについた。
僕も残りの雑炊を食べ、それからシャワーを浴びた。茜の家のベッドはシングルだったから、僕は床にゴロンと寝転んで眠ることにした。
茜の睡眠の邪魔をしたくなかったから。
僕は明け方に目を覚ました。
すぐに茜の様子を確認した。おでこに手を当ててみる。昨日みたいに熱くはなかった。
僕はキッチンに向かい野菜を切って煮込んだ。あとは茜が起きたら味を整えてうどんを入れて食べさせよう。
僕はまた茜を見た。
苦しそうにはしていない。
よかった…。本当によかった。
茜…。
茜…。
早く元気になってね。
僕は仕事に行く1時間前に茜を起こした。
「茜。」
「…ん…」
「起こしちゃってごめんね。ちょっと起きられる?」
「…うん。」
「具合はどう?」
「…大丈夫そう。」
「そっか。よかった。今日も仕事休むでしょ?」
「うん。」
「食欲は?」
「…今は…眠い…。」
「わかった。鍋にうどんを用意しておくから、食べられそうだったら温めて食べてね?もしそれが無理だったら冷蔵庫にゼリーとプリンもあるからね?それからカップスープも買ってきたから、絶対に何かは食べるんだよ?」
「ありがとう。」
「僕はもう少ししたら仕事に行くから、また辛くなったりしたらちゃんと連絡するんだよ?すぐに帰ってくるから。」
「……嬉しい。」
「うん。仕事が終わったらまたここに来るからね。」
僕はキッチンに向かいうどんを入れて煮込んだ。
それから支度をすると職場へと向かった。
茜…大丈夫かな。
僕は心配で仕方がなかった。
お昼になると茜にメッセージを送る。
すぐに返事がきた。
『うどん美味しかったよ。ありがとね。』
よかった。食べられたんだ。
食欲あるならもう大丈夫だよね?
もう悪くなったりしないよね…?
その日の僕は一日中ソワソワとしていた。
早く茜の顔が見たくて仕方がなかった。
帰ったら茜が倒れてるなんてことはないよね?もう大丈夫だよね?
仕事が終わるとすぐに電話を掛けた。
茜はすぐに出てくれた。
「茜?大丈夫?」
『もう大丈夫だよ。』
「本当?無理してない?」
『してないよ。明日は出勤できそう。』
「よかった。何か食べたいものある?」
『また昨日の雑炊が食べたいな。』
「わかった。帰ったらすぐ作るからね。」
僕は急いで茜の家へと向かった。
インターホンを押すとすぐにドアが開き、元気になった茜の姿が現れた。
僕はすぐに茜を抱きしめた。
「…どうしたの?」
「ただいま。」
「…おかえり…。」
よかった…。
茜が元気になった…。
家に入るとすぐにあの雑炊を作った。
「美味しい。仕事だったのに作ってもらっちゃってごめんね。」
「いいんだよ?茜は具合が悪かったんだから。そんなこと気にしないで?」
「…。」
「どうしたの?」
「…ううん。何でもない。」
茜の様子が少し変だった。どうしたんだろう…。
「ねぇ、何で僕に連絡してくれなかったの?」
「迷惑かけたくなくて。」
「迷惑なんかじゃないよ?ちゃんと僕を頼って?」
「…うん。ありがとう。」
「ちゃんとわかったの?僕真剣に言ってるよ?」
「わかった。これからはそうする。」
「約束だよ?」
「うん。約束。」
「僕すごく怖かったんだからね?」
「…え?」
「茜がこのまま起きなかったらどうしようって。すごく怖かったんだからね。」
「…ごめん。」
でも…元気になって本当によかった。
それから食べ終わると、僕はまた茜を抱きしめた。茜はもう昨日みたいに熱くはなかった。
安心した。
「着替えがないから僕もう少ししたら帰るけど、また具合が悪くなったらすぐに連絡するんだよ?」
「…わかった。ありがとう。」
僕は茜を少し離すと、頭を抱きよせそっとキスをした。それからおでこにもキスをした。
明日は金曜日だからまた茜に会おう。
「茜、明日もここに来ていい?」
「…斗羽くんのお家でもいい?」
「いいよ。じゃあ明日は僕ん家に一緒に帰ろうね。」
「……うん。」
茜の様子がやっぱり変だったけど、不安そうだったり、悲しそうな感じではなかったから僕はあまり考え込まないようにした。
次の日、仕事が終わると茜と一緒に僕の家へと帰った。茜の食欲が戻ったから今日は帰りがてらお弁当を買った。
家に着くとすぐにお風呂の準備をした。
それから一緒にお弁当を食べ、それを食べ終わると茜の手を引き浴室へと連れて行った。
茜の頭を洗い体も洗った。それから茜を湯船に浸からせると、僕も全身を洗い湯船に浸かる。
…茜にこうするのは初めてだった…。
葵にはいつもこうしていた。
僕は目の前の茜を抱きしめた。
「ちゃんと温まるんだよ。じゃないとまた熱がでちゃうからね?」
「うん…。」
茜…。
僕はその名前を心の中で呟いた時、少しだけ心が温かくなる感じがした。
茜。
茜…。
抱きたい…。茜を抱きたい。
お風呂から出ると茜の体を拭いて、抱きかかえるとすぐにベッドへと移動した。
「抱いてもいい?体調は大丈夫?」
「…うん…大丈夫…。」
僕は茜にキスをし舌を絡めた。
それから茜の体を可愛がり、僕をゆっくりと茜の中に沈めていった。
気持ちいい…。
「茜…。」
僕が茜に向かってそう呟いたのも初めてだった。
茜は目を見開いた。それから優しい声でこう言った。
「斗羽くん…好きだよ…。」
茜のその言葉が僕の心に染み渡った。
「茜…。」
もう一度そう呟く。
僕は上体を倒し茜を抱きしめた。
茜。
茜…。
それから茜の顔が見えるように体勢を整えてから動きはじめた。
僕は茜が好きな速度で動いた。
…気持ちいい…
僕はしっかりと茜を見ていた。
茜は目に涙を溜めていた。
「大丈夫?辛くない?」
「…うん…大丈夫だよ。」
よかった。
僕は動き続けた。
「あんっ…んんっ…」
茜の余裕がなくなってきた。
僕は茜がイキやすいように動いた。
茜…かわいい…
僕は茜の両手を握って指を絡めた。
「はぁっ…もうっ…」
茜は体をビクッとさせた。
そんな茜を僕は抱きしめた。
それでも動きは止めなかった。前に茜がそのまま続けて欲しいと言っていたから。
その後も僕がイクまでに茜はまた何回かイッていた。
終わるとすぐに茜を抱きよせた。
本当は病み上がりの茜を抱いちゃだめだと思っていた。でも我慢ができなかった。
茜に服を着せ、しっかりと布団を掛ける。
また熱がでないように。
それからまた茜を抱きしめた。
茜。
茜…。
僕から離れないで。
僕と一緒にいて。
僕を…温め続けて…。
「斗羽くん…好きだよ。」
「…うん。ありがとう…。」
茜の優しい声が僕を包み込む。
安心する。
心地いい…。
僕はそのままスッと眠りについた。
あなたにおすすめの小説
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
完結【強引な略奪婚】冷徹な次期帝は、婚姻間近の姫を夜ごと甘く溶かす
小木楓
恋愛
完結しました✨
タグ&あらすじ変更しました。
略奪された大納言家の香子を待っていたのは、冷徹な次期帝による「狂愛」という名の支配でした。
「泣け、香子。お前をこれほど乱せるのは、世界で私だけだ」
「お前はまだ誰のものでもないな? ならば、私のものだ」
大納言家の姫・香子には、心通わせる穏やかな婚約者がいた。
しかし、そのささやかな幸福は、冷徹と噂される次期帝・彰仁(あきひと)に見初められたことで一変する。
強引な勅命により略奪され、後宮という名の檻に閉じ込められた香子。
夜ごとの契りで身体を繋がれ、元婚約者への想いすら「不義」として塗り潰されていく。
恐怖に震える香子だったが、閉ざされた寝所で待っていたのは、想像を絶するほど重く、激しい寵愛で……?
「痛くはしない。……お前が私のことしか考えられなくなるまで、何度でも教え込もう」
逃げ場のない愛に心が絡め取られていく中、彰仁は香子を守るため、「ある残酷な嘘」を用いて彼女を試す。
それは、愛するがゆえに彼女を嫉妬と絶望で壊し、「帝なしでは息もできない」状態へ作り変えるための、狂気じみた遊戯だった。
「一生、私の腕の中で溺れていろ」
守るために壊し、愛するために縛る。
冷酷な仮面の下に隠された、
一途で異常な執着を知った時、香子の心もまた甘い猛毒に溶かされていく――。
★最後は極上のハッピーエンドです。
※AI画像を使用しています。
『床下に札束を隠す金髪悪女は、毎朝赤いマットの上で黒の下着姿で股を開く』〜ストレッチが、私の金脈〜
まさき
恋愛
毎朝六時。
黒の下着姿で、赤いヨガマットの上に脚を開く。
それが橘麗奈、二十八歳の朝の儀式。
ストレッチが終わったら、絨毯をめくる。
床下収納を開けて、封筒の束を確認する。
まだある。今日も、負けていない。
儚く見える目と、計算された貧しさで男の「守りたい」を引き出し、感情を売らずに金だけを回収してきた。
愛は演技。体は商売道具。金は成果。
ブリーチで傷んだ金髪も、柔らかく整えた体も、全部武器だ。
完璧だったはずの計算が、同じマンションに住む地味な男——青木奏の登場で、狂い始める。
奢らない。
触れない。
欲しがらない。
それでも、去らない。
武器が全部外れる相手に、麗奈は初めて「演じない自分」を見られてしまう。
赤いマットの上で、もう脚を開けなくなる朝が来るまでの話。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
俺様上司に今宵も激しく求められる。
美凪ましろ
恋愛
鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。
蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。
ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。
「おまえの顔、えっろい」
神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。
――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。
**2026.01.02start~2026.01.17end**
◆エブリスタ様にも掲載。人気沸騰中です!
https://estar.jp/novels/26513389
愛しているなら拘束してほしい
守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。