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17 寒くなりたくない。
僕は茜にリオちゃんのことを話した。
元セフレだということは、流石の僕でも伏せたほうがいいと思った。
葵とのことで落ち込む僕を励まし続けてくれていたこと。茜と付き合うことに対して背中を押してくれたこと。それからリオちゃんも僕と同じ状況なこと。
この話を聞いている時の茜は、切ない顔をしていた。
それからそっと僕を抱きしめてくれた。
温かかった…。
しばらく僕は穏やかでいられた。
茜とも仲良くしていた。
仕事終わりに茜を待っていると雪が降ってきた。
雪を見るのは好きだ。でも僕は寒いのは嫌い。
だから雪に降られるのも嫌いだ。
雪に包まれたくない。冷たくなるから。寒くなるから。寒くなると、寂しくなるから。
早く茜来ないかな。
早く茜の手を握りたい。
「お待たせ。寒い中ごめんね。」
僕はすぐに茜を抱きしめた。
温めて。僕を温めて。
「本当にごめんね?」
「ううん。大丈夫だよ。お疲れ様。」
「斗羽くんもお疲れ様。」
僕はすぐに茜の手を握りコートのポケットに入れた。茜の手は僕の手よりも冷たかった。
早く茜を温めてあげないと。
家に着くとすぐにお風呂の準備をした。
半分たまったところで茜の手を引き浴室へと連れていった。
茜の全身を洗うと先に湯船に浸からせ、僕も全身を洗うと茜を抱きしめながら湯船に浸かった。
「今日は寒かったね。」
「そうだね。明日雪積もるかな?」
「こっちの雪はベチャベチャしてて僕好きじゃない。」
「ははっ。そうだね。」
「明日も一日中家にいたい。」
「うん。私も。」
それから僕は我慢ができなくなり、そのまま茜を抱いた。
「あっとわくんっ…まってっ…」
「どうしたの?」
「のぼせてきちゃったっ…あっん…」
「わかった。出ようか。」
「うんっ…あたまくらくらする…」
体を拭くと茜を抱きかかえてベッドへと移動した。ゴムを付けゆっくりとまた茜に入っていく。
「茜…気持ちいい?」
「はぁ、きもちいい…」
「かわいい…僕も気持ちいいよ。」
「んっ…とわくんすきっ…」
「うん…茜…」
僕はイキそうになり動きを激しくした。
「ああっ…もうっ…」
「うん、僕ももうイク…」
終わるとすぐに茜を抱きよせた。
茜…
その後少し休憩すると、2人で鍋を食べた。
次の日は休みだったから、食べ終わって少しすると、また茜を捕まえベッドへと向かった。
この日は茜がぐったりとするまで抱いてしまった。でも茜は嫌がっていなかった。そんな僕を受け入れてくれた。
嬉しかった…。
心が温かかった。
季節は移り変わり、桜の木を見てみると蕾が膨らみ始めていた。もうすぐ…桜が咲く…。
桜が満開になった頃、またあの公園に行ってみよう。以前は冬に行ったからもう葉も落ちて寒々としていた桜の木。あの桜を見に行こう。あの時の僕はあの木に向かって”僕の心と一緒だね”と、心の中でそう話しかけていた。
今度は満開の桜の木に向かって“今僕の心は温かいよ”と報告をしに行こう。
僕は桜が満開になるのを楽しみにしていた。
通勤ルートにある桜を毎日観察した。
ふふっ。また少し蕾が膨らんでる。
まだ夜は寒いけど、日中は暖かく感じる日もあって僕は気分がよかった。やっと寒さが和らいだ。僕は春が来るのを心待ちにしていた。
またリオちゃんと会っていた。
今回はちゃんとそのことを茜に伝えていた。
いつものカフェで、僕はリオちゃんに近況報告をする。
「そっか。斗羽くんは順調そうでよかったね。」
リオちゃんは優しく笑ってそう言った。
「斗羽くんはってどういうこと?リオちゃんは?」
「んー…まだ…色々と複雑で…。」
それもそうか…。
まだ3ヶ月も経っていない。
「そうだよね…。」
僕は当時の自分を思い出していた。
それに僕自身も未だに気持ちがはっきりとしていない。なのに茜は僕のそばにいてくれる。
本当に感謝しかない。
「彼は優しい?」
「うん。優しいよ。アキトくんね、ゆっくりでいいからって…ゆっくり気持ちに整理をつけてくれればいいからって、そう言ってくれて…。」
「アキトくん優しいね。」
「うん…。それがね…それが苦しいの。なんだかアキトくんの善意を利用しているようで、罪悪感を感じるの。」
僕も茜にそう感じている。
茜を利用している。僕がひとりぼっちになりたくないからって。だからそう思うと胸が苦しくなる。僕もそのままの気持ちをリオちゃんに伝えた。
「そっか。斗羽くんもか。そうだよね。やっぱりそう思っちゃうよね。」
「でもね、リオちゃんとアキトくんはまだ始まったばかりだよ?これからどうなるかなんてわからない。」
僕はいつか茜が言ってくれた言葉をリオちゃんに言った。
「うん。そうだね。そんなふうに言ってくれてありがとう。」
リオちゃんは少しだけ笑っていた。
リオちゃんは苦しそうにしていたけど、僕はアキトくんという人が優しそうで少し安心した。
どうか…このままリオちゃんの心を癒してくれますように…。
僕はそう願った。
いよいよ桜が開花しはじめた。
それから仕事に追われているうちに、あっという間に満開になった。
僕は早速あの公園へと向かった。
前は寂しさに押し潰されそうになりながら、気分転換に訪れたあの公園に…。
また途中でコーヒーを買い、前と同じベンチへと腰を下ろす。
今日は晴天だ。この前来た時のように北風が吹くこともなく、雲が太陽を隠すようなこともなかった。暖かい日の光が僕を優しく包み込んでくれた。
ああ…暖かい…。
目の前の桜は見事に咲き誇っていた。
僕ね、今は心が温かいんだ。
君の姿ほどではないけど、温かいんだ。
僕は桜の木に向かって、心の中でそう呟いた。
それから心の中で呟いたことがもう一つある。それは茜に向けてだ。
今日だけ…今日だけは葵のことを思い出させて。
思い出そうとしなくても、桜を見れば勝手に葵が顔を出す。当時の記憶がありありと甦ってくる。
だから今日は葵に浸りたかった。
ごめん茜。今日だけだから。
今日一日だけだから…。
ごめん。
ごめん…。
僕は桜を見ながら色々と思い出していた。
あの時…僕ははじめて葵に“愛してる”と伝えた。
それは桜が完全に散って、青々とした葉を茂らせている頃…。
僕は葵と手を繋いで仕事帰りに家の近所を散歩をしていた。そこには桜の木があって僕は…
ー「葵…大好きだよ…。来年はたくさん、満開の桜を一緒に見ようね。」ー
そう言ったんだ。
結局、その夢は叶わなかったけど…。
それから…
ー「…愛してるよ…葵…。」ー
そう伝えた。
葵からの返事はもちろんない。
愛しているどころか、葵は僕を好きではなかったから。でも僕は伝えたかったんだ。ちゃんと伝えたかった。だから後悔はしていない。ちゃんと伝えられてよかった。僕の気持ちを…。
それから最後に会った日のことを思い出していた。
あの時の葵は本当に綺麗だった。
今でもはっきりと覚えている。
桜を背景にした葵は、本当に美しかった。
葵…
元気?
ちゃんと笑ってる?
今でも優しい君でいる?
葵の優しい声を思い出す。
僕はそれだけで心がふわっと葵に包まれたように感じた。
葵…
僕は少しずつ前を向いてるからね。
えらいでしょ?もう前までの僕とは違うからね。まだまだたくさん足りないけど、それでも前に進んでるよ。
葵。
葵…。
あおい…。
僕は君のことが大好きだった。愛していた。
そう思うと涙が出てきてしまった。
茜ごめん。今日だけだから。葵を想うのは今日だけだから。だからこんな僕を許して。
目の前の桜があまりにも綺麗で…だから葵を鮮明に思い出してしまって…
今の僕はそれに浸りたいんだ。
葵で満たされたいんだ…。
葵。
葵。
ー「斗羽くん…」ー
葵の声が頭に響く…。
ー「斗羽くん…起きて…」ー
葵の声が頭に響く…。
ー「…っ…とわくんっ…」ー
葵の声が頭に響く…。
ー「んっ…とわくんっ、すきっ…」ー
葵の声が頭に響く…。
あおい…
好きだった。本当に大好きだった…。
ー「斗羽くんっ、大丈夫だよっ」ー
最後に葵が言ってくれた言葉。
うん。僕は大丈夫。
葵がそう言ってくれたから僕は大丈夫。
僕は大丈夫。
来年の僕がどう思っているかわからない。でも今年はこうやって、桜を眺めながら葵のことを想いたかった。
葵…
僕頑張るからね。
家に帰ると、クローゼットからまたあの枕を引っ張りだした。葵の服を着た枕。それから葵が部屋着に使っていた僕のTシャツも手に取るとベッドへと寝転び枕を抱きしめた。手には葵が部屋着にしていたTシャツを握り込む。
葵…
葵…
「斗羽くん…起きて…。」
「…葵?」
「うん。よく頑張ってるね。」
「うん。僕頑張ってる。」
「えらいね。」
「ふふっ。葵にそう言ってもらえて僕嬉しい。」
「斗羽くんはもう大丈夫だよ。」
「…なんでまたそんなこと言うの?僕は葵に出て行って欲しくないよ?眠ってて欲しいだけなんだ。」
「それはだめだよ。」
「どうして?」
「だめだから。斗羽くんはもう大丈夫だから。」
「そんなことない。葵にはずっといて欲しい。お願いだから出ていかないで。」
「もう斗羽くんは大丈夫だから。」
「だめ。いやだ。それは僕が決めることだ。」
「大丈夫だから。」
葵は僕の頬に手を添えると、そっと唇にキスをしてくれた。
「じゃあね…斗羽くん…。」
「待って葵っ。」
…。
僕は自分の声で目を覚ました。
夢…
嫌だ。嫌だよ。
僕の頭の中から出ていかないで。
ずっと眠ってて。出ていかないで。
大丈夫。
ただの夢だ。
昨日葵のことを考えていたから、きっとこんな夢を見たんだ。
僕はまだまだ夢の中で葵とおしゃべりをしたい。
だって幸せな気持ちになれるんだ。
だからまた夢に出てきて?
まだまだ沢山おしゃべりしよ?
これが最後だなんて言わないで…。
お願い。お願いだから…。
次の日は特に茜と会う約束はしていなかったけど、茜から連絡が来て僕の家に来ることになった。
茜が来るとすぐに僕は茜をベッドへと連れて行った。茜の耳や首にキスと舌でなぞり、胸の先を舌で転がし、茜の脚を開くとそこを舐めた。
十分に茜を濡らしてから、僕はゆっくりと茜に僕を沈める。
「茜…」
茜はしっかりと僕を見ていた。
「…好きだよ…斗羽くん…。」
「うん…ありがとう…。」
それから茜が好きな速度で動きはじめた。
角度も調整して、茜が気持ちいいところに当たるようにした。
「ああっ…とわくんっ…はぁっ…」
茜のかわいい声が僕の耳に響いた。
茜。
茜。
僕はこの日も結局、茜を長く抱いてしまった。
「あっ、まってとわくんっ…」
「どうして?」
「ぁあっもうっ…」
「またイキそう?」
「うんっ…だからっ」
「イッて。僕でいっぱいイッて。」
「ああっっっ…」
僕は茜がイッても動き続けた。
「まってっ…ちょっときゅうけいしよ?」
「ううん。このまま続けるよ。」
「だめっ…はあっん…っ…」
「気持ちいい?」
「もうむりっ…」
「そんなことないよ。まだまだイカせてあげるから、僕をいっぱい感じて。」
僕は頭の中の葵が出て行ってしまったんじゃないかという不安から、茜を抱き続けた。
まだ葵には僕の頭の中にいて欲しかった。
心細かったから。
だって…茜はいつか僕から離れていくかもしれないから。僕に見切りをつけた茜が、いつ僕から離れて行くかわからないから。
もう寒くなりたくない。
寂しいのは嫌だ。
僕を…ひとりにしないで…。
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