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19 はじめてそう思えた。
今日は茜とデートだ。
動物園と遊園地があるところ。僕は楽しみだった。
早速遊園地エリアに来た。
茜に手を引かれ、大きな船が前後に揺れる乗り物に並んだ。
「斗羽くんはブランコ平気?」
「うん。僕ブランコ大好きだよ。」
僕は子どもの頃ブランコが大好きだった。
友達が少なかったから、友達と遊べない時はいつもブランコに乗って1人で遊んでいた。
「これ大っきいブランコみたいな感じだから大丈夫だと思うんだけど…。」
茜は僕を気遣ってくれていた。嬉しいな。
順番がきて席につく。
「1人ずつのベルトとかないの?」
「この後このバーが降りるよ。」
「それだけ?」
「うん。でも大丈夫だよ?」
「でももし隣にすごくお腹の大きいおじさんとかが来たら僕たち落ちちゃうんじゃない?」
「あははっ。大丈夫だよっ。」
僕は少し怖くなった。
そんな僕を察したのか、茜は僕の手を握ってくれた。
安全バーが下がり、係のお姉さんが軽快に話始めた。それから「いってらっしゃ~いっ。」と手を振りながら言うと、船がいよいよ動きだした。
徐々に船の位置が高くなる。船が下る時ふわぁっとした浮遊感を感じ、風を前面に受け気持ちが良かった。
僕は隣の茜を見た。楽しそうに笑っていた。
そんな僕に気がつき茜も僕を見た。
「どう?怖い?」
「ううん。楽しいっ。」
「ははっ。それならよかったっ。」
茜はかわいい顔をして笑っていた。
その後はジェットコースターにも挑戦してみた。
その時の僕はもう怖いと思うよりは、楽しみで仕方がなかった。
案内された席に座るとすぐに安全バーが下され、今度は係のお兄さんが軽快に話し出すと乗り物が動きだした。
どんどんと上へ登っていく。僕は緊張していた。てっぺんまでくると一気に下りまた浮遊感と風を感じながら、ものすごいスピードで駆け抜ける。
それがあまりにも爽快で僕はやっぱり気持ちよく感じた。
なにこれ楽しい…。
僕は初めて体験したジェットコースターをとても気に入った。
「ねぇ茜っ。僕あれにもう1回乗りたい。」
「いいよっ。また並ぼっか。」
茜は嫌な顔一つせず僕に付き合ってくれた。
それからも色々な乗り物を楽しんだ。
茜…ありがとう。苦手意識を持っていた遊園地を僕は好きになった。
それから動物園の方も行って楽しかった。
ふれあいコーナーも僕は初体験だった。うさぎを膝の上に乗せて優しく撫でる。温かくて、ふわふわとしていてとてもかわいかった。
帰る前にもう一度ジェットコースターと船の形のアトラクションに乗り、僕はなんとも言えない満足感でいっぱいになった。
「茜っ、今日は楽しかった。ありがとうっ。遊園地って楽しいんだね。」
「よかった。また今度は他の遊園地にも行ってみようね。」
茜はまたかわいい顔をして笑っていた。
僕は思わず抱きしめた。
「斗羽くん?」
「茜…大好きだよ。」
「うん。私も大好き。」
そう伝えてくれた茜の顔はもっと可愛かった。
僕はちゃんと茜のことが好きだ。
この後ご飯を食べてから家に帰った。
シャワーを浴びるとすぐにベッドへと連れて行った。
僕はすでに茜の中にいる。
動かずに茜を見ていた。
かわいい…
「茜、今日は楽しかったよ。ありがとね。」
「ううん。私も楽しかった。また行こうね。」
「好きだよ。」
「私も好き。」
それを聞いて僕は動きだした。
茜は気持ちよさそうにしていた。僕は嬉しかった。
「んんっ、はぁっ…」
「茜…気持ちいいね。」
「うんっ…きもちいいっ…」
「よかった。好きだよ。」
「ああっ…んっ…わたしもっ」
「ちゃんと言って?」
「すきっ…とわくんすきっ…」
「もっと。」
「あっんっ…だいすきっ…」
「名前も言って?」
「とわくんだいすきっ…ああっもうだめっ…」
茜は体をしならせた。
僕は動き続けた。
「ねぇ、もっと言って?」
「ぁあっ…とわくんっ、あっんっ…」
「ん?」
「はぁっ…とわくんすきっ…」
「うん。僕も茜が好き。」
「すきっ…はぁっ…すきっ…」
かわいい…
僕は茜を抱きしめた。
茜の温もり、茜の匂い…
僕は今初めてそれを愛おしいと思えた。
胸がきゅっと締め付けられた。
嬉しい…
その胸の締め付けは心地のいいものだった。
苦しかったり、悲しかったり、寂しさからくる胸の締め付けではなかった。
僕たちは順調に付き合っていた。
ー「じゃあね…斗羽くん…。」ー
あれを最後に、僕は葵と夢の中でおしゃべりをすることはなくなった。夢はたまに見る。記憶の夢。
茜を好きだと自覚した今でも僕の心の中には葵はいた。いつか職場の先輩が言っていたように、僕は葵のフォルダを作って、葵との思い出をそっとそこにしまっていた。
ー「いつか…思い出しても苦しくならない大切な思い出になるから。」ー
前にリオちゃんが言っていたように、葵を思い出しても苦しくならないようになっていた。
だからといって葵との思い出が色褪せているわけではない。ちゃんと色濃く残っている。
茜ごめん。これだけは許して。
僕はやっぱり葵のことは忘れたくないんだ。
でも茜のことはちゃんと好きだよ。僕が今好きなのは茜だけだ。
葵のことは…ただ…覚えておきたい。忘れたくないんだ。だからこれだけは許して…。
僕が苦手な梅雨がきた。
雨は嫌い。寂しい気持ちになるから。
今日も茜と仕事終わりに待ち合わせをしていた。
明日は土曜日だから茜が僕ん家に来る日だ。
今日は気温がグッと下がって肌寒く感じた。
「待たせちゃってごめんね。」
「大丈夫だよ。」
茜が来た。
かわいい。
僕はすぐに茜の手を取った。
茜の手は冷たかった。温めないと。僕はしっかりと茜の手を握った。
「寒い?」
「少しだけ。」
「大丈夫?僕の上着着る?」
「大丈夫だよ。」
茜はそう言っていたけど、寒そうに見えた。寒いのはだめ。茜を温めないと。
僕は自分の上着を脱いで茜の肩に掛けた。
「…ありがとう。斗羽くんは大丈夫?」
「大丈夫だよ。茜の手を握ってるから。」
僕は心が温かかったから別に大丈夫だった。
茜がそばにいるから。
家に帰ると冬によくしていたように、すぐに浴槽にお湯をためた。
買ってきたご飯を食べ一緒にお風呂に入る。そこで茜を抱き、出てくるとベッドでまた抱く。
次の日も雨だった。土砂降りだった。
ふと…葵のことを思い出してしまった。
葵を最後に抱いたのは雨が降る朝だった。あの日も土砂降りだった。あれが最後だった。あの日はゆっくりと優しく葵を抱いた。葵がゆっくりとするのが好きだったから…。葵がそうするのが好きだったから、僕もそれが好きになった。
僕は茜にもそうしてみたくなった。
茜は少しだけ激しいのが好きだ。
でも…ゆっくりするのはどうだろう…。
僕はゆっくりも好きになったから、そういうのもしたい。
僕は動きを止めた。
「…どうしたの?」
「ううん。どうもしないよ。」
それから茜の奥にゆっくりと押し込んだ。
「ふぅんっ…あっ…」
「いつもみたいのと、こうやってゆっくりするの、どっちが気持ちいい?」
「ん…どっちもっ…」
「本当?」
「うん…どっちも…きもちいいっ…」
「よかった。僕こうやってゆっくりするのも好きなんだ。」
「んんっ…はぁ…わたしもきもちぃ…」
茜は本当に気持ちよさそうだった。
嬉しい。
ゆっくりすると茜をじっくりと堪能できる。
それに僕も気持ちいい。
「茜…僕とずっと一緒にいて?」
「うんっ…いっしょにいたい…っ…」
「本当?」
「ほんとう…あっ…」
「ふふっ。かわいい。」
「んあっ…とわくん…」
しばらくすると茜はビクンと体を震わせ、長くイッているようだった。
僕はそっと茜を抱きしめた。茜の中がきゅうっと僕を何度も締め付ける。
茜…ずっと僕のそばにいて…。
久しぶりにリオちゃんに会った。
「あのね、僕ね、茜のことをちゃんと好きになったんだ。」
「…っ…すごい。すごいじゃん斗羽くんっ。」
リオちゃんは目に涙を浮かべていた。
「なんでリオちゃんが泣きそうになってるの?」
「嬉しくて…よかったね。本当によかったね。」
やっぱりリオちゃんは優しい子だ。最初の頃はわからなかった。体だけの関係だったから。
「リオちゃんは?あれからどう?」
「うん。まだ付き合ってるよ。でも…たまに心配そうに私のことを見るんだ。それもそうだよね。私がこんなんだから…。」
「変わらず優しい?アキトくんは。」
「うん、優しいよ。だから私は苦しくなる。」
リオちゃん…
「でもアキトくんは一緒にいてくれるんだよね?」
「…うん。」
「もうしんどい?アキトくんと一緒にいること。」
「ううん。苦しくなるけど、まだ一緒にいて欲しい。」
僕の時と同じだ。
「大丈夫だよリオちゃん。僕もそうだったから。だからといってリオちゃんもそうなるとは限らないけど、今はアキトくんに甘えていいと思うよ?」
「そう…なのかな…。」
「僕もいるから。何かあったらいつでも話聞くから。」
「うん、ありがとう。」
その後僕は自分の家へと帰った。
リオちゃんの笑顔がまた見れますように。アキトくんとこのまま上手くいきますように…と、そう願いながら…。
今日は土曜日だけど茜は友達と遊ぶ予定があったから、僕は家に1人でいた。
部屋の中を見渡す。
やっぱりどこを見ても葵を思い出す。
でも辛くはならなかった。
でも思い出す。
それでも僕はまだ、引っ越す気にはなれたなかった。
もう少し…もう少しだけ…
クローゼットに向かい、葵の服を着せた枕を取り出す。その服をそっと脱がし綺麗に畳んでそれを袋に入れて引き出しの奥の方へとしまった。
今の僕にはこれだけでもまた一歩進んだように感じた。少しずつ、少しずつでいいんだ。
そうしないと…また無理矢理前に進もうとすると苦しくなるような気がした。
本当はもう大丈夫なのかもしれない。でも僕は怖かった。完全に葵を消し去りたいわけじゃなかったから。ここを引っ越した瞬間に、急激な寂しさに襲われるんじゃないかと…そう思うと怖かった。
僕の心の片隅に葵がいることは、茜には黙っておくことにした。
僕はやっぱりずるいな…。
そんなことを考えていると茜から連絡があった。今から僕の家に来ていいかと。僕は嬉しかった。
しばらくするとインターホンが鳴った。
茜が家に入ってくるなり僕はすぐに抱きしめた。
「どうしたの?」
「おかえり。」
「ただいま。寂しかったの?」
「ううん。でも茜と会えて嬉しいから。」
「私もだよ。」
それから茜は僕にキスをしてくれた。
心が…温かい…。
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