なまけものは、今日も修羅の道を行く

闘者 在前

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第一章

エルフの姉妹

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 イオアニス村に向かっている道中にトーレスから質問された。
「イツキさんってとんでもなく強いんだなぁ、私はイツキさんの動きを全く目で追えなかったよ、いったいどんな事をしたら、あんな動きが身につくんだい?」
「なんだ見てたのかぁ、だけどそれはここだけの話にしてもらえないかなぁ?見てない事にしてもらえると有難いんだけど」
「イツキさんは村の恩人だ、イツキさんがそう言うのなら他言はしない」
「ありがとう、だけど、そうだなぁ、物心がついた頃からずっとあんな事をやらされていた、って言ったら信じる?」
「えっ?」
「まぁ、いいじゃない、それより今度馬の乗り方教えてよ」
「そんなのお安い御用だよ」
 そんな話をしながらもイツキは少し気になる事があった。
(オレは人を殺してるのに何も感じていない?乙葉の血がそうさせているのか、それともこの世界に来たからなのか、オレってヤバイ人間になっちゃったのか?う~ん、考えても答えは出ないかぁ)
 色々考え込んでいたら村に着いた。

 村では亡くなった人の葬式?をしている感じだったので、村の中心にある大きな木の下で座って様子を見ていた。
 しばらくすると村長がやってきた。
「イツキ殿、待たせてしまって申し訳ない、ノネット村の方はどうでしたか?」
「そんなに待ってないさ、戻って正解だったよ村長、馬を出してくれてありがとう」
「なになに、礼を言うのは私達の方ですから、このくらい当たり前です、それでイツキ殿が戻って来たということは、あの窃盗団を追い払ったのですかな?」
「あっ、うん、ハシッドとかいう頭と三鬼のうち二人は倒した、一人はなんか事情があって捕らえてある」
「なんと、本当に倒してしまったのか、イツキ殿あなたと言う人は本当に凄い人だ」
「まぁ、なんとかなったよ、それでこっちはどんな状況なんだい?」
「今、四人の犠牲者を弔った所で、それとイツキ殿が倒していった盗賊共はほとんどが足を引きずりながら逃げていって、今は何人かあそこに残ってるだけですな」
「そうなんだ、だったら放っておいてもいいんじゃない?もう悪さしないでしょ」
「そうでしょうね、あれだけ実力差を見せつけられれば」
「それで、あの姉妹はどうしてるの?」
「その事でイツキ殿に相談したい事があるのだが、とりあえず私の家に来て食事でもしながら話さんか?」
「いいねぇ、実は物凄く腹がへってるんだよ、それとオレ、大食いだけど大丈夫?」
「それは楽しみだ、では行くとしますか」
 イツキは村長の後について行った、途中で村人達に何度もお礼を言われながら。

 家に着くと、今度は村長の奥さんから、涙を流しながらお礼を言われた。
 イツキは少し困りながら食事がずらりと並んだテーブルに通された。
 どの料理も美味い、これがおふくろの味と言うのだろうか。
 イツキはみるみるうちに平らげていった。
 食事をしながら、エルフの事や村の事、色々な話を聞いた。
 イツキの中でのエルフのイメージは長命でみんなが魔法に精通しているという感じだったが、この世界ではちょっと違うらしく、六十代位までは普通の人間と同じ様な成長過程らしい。
 確かに長生きはするが平均して百三十才位までだという。
 そしてこの村にも使える者がいるという魔法の事を聞いた。
 この村で魔法が使えるのは五人しかいないらしい。
 その中に村長と、イツキが助けた双子の姉妹が含まれるという。
 村長はキズを癒す回復魔法が少し使える程度、他の者も生活魔法がやっとらしいが、双子の姉妹は姉のミアが攻撃魔法、妹のミラが支援と回復の魔法を使えるという。
 二人とも十二歳で、今は弱い魔法しか使えないが、その素質は村長でも計り知れないらしい。

 そこで村長がイツキに言いづらそうに話し出した。
「実は、イツキ殿に頼みたい事といいますか、お願いしたい事があるのだが」
「どうしたんだい改まって、オレの出来る事なら聞くけど?」
「先程弔った犠牲者の四人の中に、実はミアとミラの父親が含まれてまして」
「えっ!」
「しかも、あの二人の母親は元々体が弱く、二人が五歳の時に病気で亡くなってるのです」
「それじゃぁ」
「二人には近親者も無く、今では両親共にいなくなってしまった」
「それで、オレにどうして欲しいの?」
「本当に勝手なお願いなのだが、あの双子をイツキ殿の傍においてはもらえないだろうか」
「何か訳あり、って感じ?」
「まず最初に、この事はミアとミラ二人には言ってません、そして一番の理由は私達では小さな子供二人ですら守りきれないと言う事です」
「あの二人が狙われる理由があるのかい?」
「今は大丈夫でしょう、ですがこの先二人は強い魔法を身に着ける可能性が非常に高い、そうなるとどんな輩が私利私欲の為に狙って来るか分からん、そうなった時に私達では守ってやれる術がないのです、イツキ殿無理を承知で頼みます、どうか聞き届けて欲しい」
「う~ん、急にそんな事言われてもなぁ、二人は今どうしてるの?」
「今はこの家の別の部屋で泣き疲れて寝ている、なんせ運が悪い事に二人の家まで焼かれてしまって」
 イツキは考え込んでしまった。
(二人を預かるっていってもオレも居候の身だしなぁ、確か空き家があったけど、仮に貸して貰ったとして生活できるのかなぁ、どうにかなる感じじゃないよなぁ)
「だけど村長、オレもノネット村では村長の家に居候させてもらってる身、これ以上迷惑はかけられないんだよなぁ、だから明日二人と話してみてって事でいいかな」
「そうですね、勿論それで構いません、ですが何卒宜しくお願い致します」
 村長は深々と頭を下げた。
「頭なんて下げなくていいさ、二人に直接自分達の口でオレに頼まれない限りこの話は無しだから」
 村長は頭を上げ、イツキに握手を求めた。
「この村はイツキ殿にどれだけの恩があるか分からない、協力できる事なら何でもするので、言ってくだされ」
「そうさせてもらうよ、何かあったら宜しく頼むよ」
 握手をし、イツキは笑いながらそう答えた。
 そして二人が寝ている部屋を聞き、どんな様子か見に行った。
 そこには手を取り合って寝ている二人の姿があった。
 さんざん泣いた後に泣き疲れて寝てしまったのだろう事が予想できる。
 少し二人の様子を眺めた後、イツキは自分の部屋に行きベットの上で横になった。
(参ったなぁ、安請け合いなんて出来ないし、かといって放ってもおけないしなぁ、なんか色んな事が一気に起き過ぎだよ本当に)
 考え事をしているとイツキは睡魔に襲われ、いつの間にか寝てしまった。
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