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しおりを挟むはあ、と息を吐けば、僕の呼吸は白い霧になって雪の上に落ちていく。空は曇天。
明日も雪が降るだろう。
少し笑って椿の花に目をやった。こんなに小さな花弁の上にも雪が降り積もっている。手袋を脱いで慎重に指先で払ったら、椿はぽとりと落ちてしまった。なんかごめん。
首の落ちた椿を拾い上げる。誰にも見られていないことをいいことに、僕は当然のように唇を寄せる。冷たい。熱を持った唇に心地よく、上品な冷たさだった。色褪せた椿の匂いがする。少し考えた後に花びらを千切って雪うさぎの上に乗せた。
「聞いてるの?」
突然聞こえてきた人の声に、僕の体は僕の意思をスキップしてうさぎのように飛び跳ねた。心臓がばくばく脈を打っている。心臓の音がうるさい。
女生徒の声だ。
呆然と声の震源を探る。奥まった窓辺の方からだ。日陰の僕の場所から、陽が当たったその窓辺は、天使でも降臨してくるような明るさと神々しさを感じる。僕にとってははるか遠い場所のような感じがした。その窓が、どういうわけか空いている。天使でも待ってるのか? なんにせよ、開いていたから、その近くで会話をしている女生徒の声がよく聞こえたのだ。窓辺には声の主の女生徒と、見慣れない顔の男子生徒が立っているのが見える。
女生徒の名前は鳥口といったはずだ。去年同じクラスだった。彼女は学級委員長をやっていてとても目立っていたし、今も多分学級委員長をやっている。確かね。
鳥口は僕の存在にまるで気付いていなかったけど、鳥口が話しかけている男子生徒とは、ばっちり目が合ってしまった。気まず。椿の匂いを嗅いでいるところを見られたかもしれない。きっつ。
彼は顔立ちも雰囲気も佇まいも異国情緒が漂っている。髪も僕と違ってずいぶん明るいのに肌に馴染んでいた。地毛なのは一目瞭然だ。鼻梁も高く顔立ちも整っており、眉目秀麗という言葉が真っ先に浮かんでくる。でも、完全に異国の人っていうよそよそしさはない。なんだろう、謎の親近感があるのだ。
彼は僕のことをまっすぐ見続けていた。眩しい。ビームを食らっているかのようなきつさがあったので僕はうつむきながら影になった前髪を通して、誰だったっけなあこの人、と思いながらちらちら見ていた。その末になんとなく見当がつく。
隣だか隣の隣だかのクラスに留学してきた人だ。確か、えーと……左のほうからやってきた感じだ。学年集会だかで、先生の誰かが話していた。
名前は……なんだっけなあ。
「ねえレオくん!」
そうそうレオくん。
「……ごめん、なんだっけ」
レオくんが喋った。雪の呼吸とまろやかに絡み合って結晶と囁き合ういい声だった。声だ……嫌な気分だな。レオくんは女生徒に相槌を打っているのに僕から視線を逸らさない。
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