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2話
「ある、べーるさま……」
簡単に脱げるラフな格好が、アルベール様の色気を増大させている。
ランプの明かりだけのほの暗い空間で浮き彫りになるアルベール様の精悍な顔立ちは壮絶な色気がある。
「エルミール」
かすれた声音で名前を呼ばれると、心臓が不自然に脈打つ。
どくんと跳ねた心臓に気づかれたのか、アルベールの笑みが深くなった。
やんわりと右胸を揉みしだかれながら、彼が口を耳元に近づける。
「緊張しているのか?」
「するなというほうが無理でしょう……!!」
「そうか、たしかにそうだな」
納得したように頷いたアルベールは酒のせいなのか機嫌がよさそうだった。
恥ずかしすぎて視線を逸らし、不自然に乾いた喉を潤すために唾を飲み込むと、彼に顎を掴まれる。
「っ」
「ちゃんと俺を見てくれ。……初めてだからな。ちゃんと丁寧にする」
「は、はい」
低い声で囁かれる。絡み合った視線が離せない。
綺麗なアメジストの瞳を見上げると、とろりと熱に溶けた視線が注がれてますます心臓が早鐘を打ってしまう。
「ぁ」
「声、もっと聞かせてくれ」
止まっていた愛撫が再開される。右胸を揉みながら首筋に舌を這わされた。
本当は初夜である今聞くべきではない。そうは思っていても、口からこぼれる疑問を止めることは難しかった。
「アルベール様……どうして私だったのでしょうか……」
「なにがだ?」
「後妻は、他にもたくさんの候補がいらっしゃったのではないですか?」
不思議で仕方なかった。エルミールの家は伯爵家で、公爵家に後妻として嫁ぐには少しばかり釣り合いが取れない。
厳格な身分があるこの国では、同じ貴族でも爵位が一つ違えは立場は全く異なるものだ。
調べたところ過去に伯爵令嬢が公爵家に嫁いだ記録はあったが、それは幼少期から幼馴染だったり、親同士が仲が良かったり、あるいは伯爵家のほうが事業に成功して莫大な財を持っていたりした。
エルミールの実家はそのどれにも該当しない。
アベジェール伯爵家は建国当時の古くからある名門でこそあるが、最近は領地を襲う悪天候の影響で傾きかけている。
その上、アルベール様が当主を務めるバーデル公爵家は王族に次ぐ発言力を持つ名家だ。
さすがに釣り合いが取れていない。
後妻とはいえ、アルベールはまだ若く健康だ。公爵夫人の座が手に入るのもあって、立候補する令嬢はそれはたくさんいたはずである。
なぜわざわざ名門とはいえ陰りが見えるアベジェール伯爵家の娘であるエルミールに白羽の矢を立てたのか。
結婚の打診を受けてから、ずっと不思議に思っていて、問いたかった事柄だ。
エルミールの問いかけに、アルベールは少しだけ片眉を吊り上げる。
問いかけは心外だといわんばかりの表情に不安が募る。なにか、大切なことを見逃していそうだった。
「……心当たりがないのであれば、それでいい」
「それはどういう……あっ!」
問いを重ねたのに、無視するようにいささか乱暴にネグリジェの上から掴んだ胸元の愛撫が再開される。
エルミールの身体は豊かに育ったので、それなりの大きさのある胸元はアルベールの大きな手のひらですら零れ落ちそうなほどだ。
絶妙な加減でやんわりと揉みしだかれ、今までに感じたことのない刺激に咄嗟に両手で口を押えた。
「声を抑えるな」
「は、い」
公爵の地位にいるだけあって、アルベールは命令することに慣れている。
だからこそ、上から物を言われると圧があって怖いと感じる。エルミールが指示通りおずおずと両手をどかすと、なぜかため息を吐かれてしまった。
「……矛盾することをいうが、嫌なら俺の言葉に従う必要はない」
「え? あ、あっ」
本当に矛盾している。男が圧倒的な権力を持つこの国で、夫となった男性に妻は逆らえない。だというのに、アルベールは嫌なら拒否しろという。
それは旦那となる男性を立てるために厳格な淑女教育を受けたエルミールにとって、本当に難しいことだ。
やり取りの間も揉まれ続けてすっかり固くなった頂きを摘ままれる。高い嬌声を漏らすと、アルベールは少しだけ機嫌を持ち直したらしい。
ネグリジェの裾から大きな手のひらが侵入してくる。
剣だこが何度も潰れた固い手のひらに太ももを撫で上げられると背中に甘い感覚が走り、腰の奥がずんと重くなる。
頂きを摘ままれて意識がそちらに向いている間に、慣れた手つきであっという間にネグリジェを脱がされてしまう。
下着だけではあまりに心もとない。そう思っている間に、それらも綺麗に取り払われて、エルミールだけが生まれたままの姿になる。
「っ」
息を飲んだ。鮮やかな手腕は慣れを感じさせて、女性経験が豊富なのだと突き付けられる。
先妻がいたのだから女性の扱い慣れていて当然なのに、心のどこかが傷ついている。
視線を伏せたエルミールに気づいたのか、目を細めて彼女の裸体を眺めていたアルベールが口を開いた。
「俺は……自ら望んで女性を抱いたことはない」
「……え?」
「君が初めてだ。欲しいと思ったのは」
意味がわからない。では、先妻はなんだったというのか。
息子であるフランシスもいるというのに。
かけられた言葉にエルミールが混乱していると、アルベールの顔が近づいてくる。目を閉じた彼女の瞼に口づけが落とされる。
そのまま、額、頬、と薄い唇が掠めていって、そのまま唇同士がくっつけられた。
「ん……」
こういうときは薄く唇を開く。閨で必要な知識は家庭教師から一通り教えられていた。
エルミールが教えに従いそっと唇を開くと、待っていたとばかりに肉厚な舌が口腔内に侵入してくる。
「んん」
小さな声が漏れた。歯列を舐め、柔らかな頬肉をつついた舌先が、今度は逃げるエルミールの舌を追いかけてくる。
逃げていてはいけないと思って応えようと恐る恐る舌を出せば、舌同士を絡まされ、呼吸がままならない。
「ふ、ん……!」
鼻に抜けた声が零れる。口角から嚥下しきれない唾液が伝う。息が苦しいのに、どうしようもないほど気持ちもいい。腰の奥が甘く疼いて仕方なかった。
こんな感覚は初めてだと、戸惑うエルミールを翻弄する巧みな舌使い。
とうとう呼吸が苦しくなってアルベールの胸板を押すと、そうっと唇が離れていく。
自らが望んだことなのに、なぜか寂しい。
二人を繋ぐように銀糸が伝って、熱に浮かされた頭でぼんやりと銀の糸が切れるのを見守ってしまった。
「どうだった? 初めてのキスは」
ニヤリと挑発的な笑みを向けられる。
どくんと心臓が跳ねて、エルミールは顔を真っ赤にしてしまう。
どうだったといわれれば、とっても気持ちよかった。だが、それを素直に口にするのは羞恥が勝る。
視線を伏せたエルミールのつむじに優しい口づけが降ってくる。ふるりと身体を震わせた彼女の前で、アルベールが身に纏っていた服の上を脱ぐ。
現れたたくましい肉体につい魅入ってしまう。そっと手を伸ばして綺麗に割れた腹筋に触れると、彼は小さく笑った。
「好きなだけ触れるといい。君の身体でもある」
少し意味が違う気がするが、許可が出たのでぺたぺたと触ってしまう。エルミールの柔らかい身体にはない鍛えられた筋肉が見ていて楽しい。
暫く無言で見守っていたアルベールだが、ふいに細く息を吐くと「もういいか?」と聞いてきた。
さすがに無遠慮に触りすぎたと思って「はい」とエルミールが頷いて手を引っ込めると、彼はまた笑う。
「また今度触るといい。俺にも楽しませてくれ」
「きゃっ!」
そういって先ほど揉んだのとは逆のふくらみの頂きを口に含む。まだ柔らかいそこを舌で撫で、突き、軽く食む。
刺激に反応して固くなり、さらに濃く色づいた頂きをしゃぶる姿は赤子のようだ。
快感よりくすぐったさが勝ってしまって、じっと胸元に齧りつく姿をみつめていると、先ほど握っていた右のふくらみをまた揉まれる。
「あぅ」
全体をやわやと揉んで、頂きをこすったり摘まんだりされると、だんだんと腰が重くなっていく。
気づかないうちに膝をすり合わせ腰を揺らしていたエルミールに気づいたアルベールが、頂から口を話して口角を上げた。
「ちゃんと感じているようだ」
「……あっ!」
右胸を揉んでいた手が離れたかと思いきや、薄い下生えをかき分けて自身でも触らない秘所に触れられる。
くちゅりとそこから水音がして、閨の知識として知っていたはずなのに恥ずかしくてたまらない。
ただでさえさっきから赤い顔をさらに赤くすると、アルベールは機嫌よく笑う。
「あぁ!!」
襞をかき分け、蜜壺に指がいれられる。違和感に声をあげる反応をじっくりと眺めながら、アルベールが親指で蜜壺の上の花芯を押しつぶした。
「あぁあ!!」
神経の塊だと教えられたそこを潰されると、腰が跳ねてあられもない声をあげてしまう。
初めての感覚が腰から背中を駆け抜け、呼吸が荒くなる。
その間も蜜壺の中にいれられた指は暴れているし、花芯をこすったりされているしで、もうなにがなんだかわからなくなる。
「や、やめっ。おか、おかしく、なっちゃ……っ!!」
「存分に可笑しくなるといい」
「やだやだやだぁ!!」
違和感が増える。中にいれられている指が増えたのだ。その上で執拗に花芯を弄られて、びくびくと背中を跳ねさせる。
ベッドの上で淫らに狂うエルミールの姿に、アルベールは楽しげだが、彼女自身はたまったものじゃない。
家庭教師から初めては痛いだけで快楽など拾えないと教えられていたのに、エルミールが淫乱なのか、あるいはアルベールの手技がすごいのか、すっかり感じ入っているのだ。
生理的な涙を目じりにためて、いやいやと首を横に振るが、アルベールの猛攻は止まらない。
その上、蜜壺にいれられた指先がある一点を掠めた瞬間、今までとは違う感覚に襲われた。
「ぁああ!!」
「ここか」
アルベールがそう呟いて、その場所を重点的に責め始める。そうなると、言葉として意味をなさない喘ぎ声しか口からは出てこない。
やめて、やだ。おかしくなる、切れ切れにそんな風に訴えても無視されてさらに責め立てられ――そして。
「―――ああぁっ!!」
びくん! と。弓なりに身体をそらし、足の指をピンと伸ばしてエルミールの身体は未知の感覚に達した。
腰に溜まっていた甘い疼きが解放され、頭の奥で光が弾ける。
衝撃の後、一気に弛緩した身体をベッドに埋めて荒い呼吸を繰り返すと、やっと彼女の蜜壺から指を抜いたアルベールが、満足そうに笑った。
「良い子だ。うまくイけたな」
「い……?」
「達したんだ。気持ちイイだろう?」
ぺろりと濡れた指先を舐めて問われて、これが『気持ちいい』なのだと理解し、エルミールは小さく微笑んだ。
「……はい」
こっくりと頷くと、目を細めてアルベールも笑う。そして、ズボンの前を寛げた。
音をたてる勢いで飛び出してきたそそり立つ男性の象徴に、一気にまどろみから現実に戻される。
「……え?」
「次は俺自身で気持ちよくなってくれ」
熱を持った太いものが蜜口に充てられて、つい情けない声をあげてしまう。
指と比較にならないほど太いそれを中に入れるのはさすがにむりがあるように思えた。
「は、はいりません!!」
悲鳴を上げベッドの上で往生際悪く逃げようとしたエルミールの腰を両手でがっしりと掴んで、アルベールが位置を整える。
蜜口にあたる感覚に青ざめる彼女の前で、肉食獣のような様相で獰猛に笑う。
「大丈夫、だ!」
「あぁあああああ!!」
ずぷん、と中に入ってきた質量に悲鳴のような声が零れる。みちみちと中を広げながら侵入してくるそれによってもたらされるのは、圧倒的な痛み。
言葉にならない痛みに涙をぽろぽろと流すと、慰めるようにアルベールが目じりに口づけを落とす。
「ゆっくりと息を吐くんだ。そう、ゆっくり」
痛みを逃したい一心で、いわれた通りに息を吐く。肺を空っぽにすると「今度は吸うんだ」と言われて深呼吸をする。
少しだけ呼吸が整って、僅かに余裕が生まれた。
アルベールを下から見上げると、彼のほうがなぜか泣きそうな顔をしている。
それが可笑しくて、エルミールは小さく笑ってしまった。
「ふふ」
「……何が可笑しい」
「アルベールさま、すきにしてください」
処女を相手にするとき、男性もまたそれなりに苦労すると家庭教師から教えられた。
だから、初夜で旦那となる人が気遣ってくれたなら、そこには確かな愛が存在するのだ、とも。
そっとアルベールの精悍な頬に手を当てて、エルミールは甘く笑う。
少しだけ強がっていたけれど、心を込めて言葉を紡いだ。
「わたしは、あなたのつまですから」
だから、好きにしていい。この人になら、好きにされてもいい。
だって、最初からずっとアルベールは彼女を思いやって動いてくれている。
旦那である人に、好き勝手に蹂躙されることも覚悟していたのだ。
貴族の結婚は政治だから、好きな相手と結ばれることはほとんどない。
意にそわない結婚をすることだって間々あるのだ。
だからこそ、初夜で暴力的に振る舞われたときの心の守り方も教わっていた。
けれど、アルベールはどこまでも優しい。
エルミールは確かに先ほど「やめて」と口していたが、そこで止められれば甘く疼く腰と身体が逆に辛かっただろうと理解できる。
彼女が感じることをアルベールが優先してくれたからこそ、痛みの中に愛情を感じとれている。
だからこそ。
「すきに、うごいてください」
そうっと口にすれば、アルベールは目を見開いた。一拍おいて、大きなため息を吐いき、両手でぎゅうとエルミールを抱きしめる。
「君は、まったく……!」
「あぁっ!!」
一気に下から突き上げられる。何かを破る嫌な感覚と、鈍い痛みが襲ってくる。
恐らく破瓜の感覚と痛みだ。
(ああ、これで私は名実ともにアルベール様のものになった)
酷く幸福なことに思える。
とろんと目を細める彼女を抱きしめて、暫くじっとしていたアルベールがゆっくりと抽挿を始める。
「あっ、あっ、あぁ!!」
下から揺さぶられると、喘鳴のような喘ぎが口から溢れて止まらない。
まだまだ気遣われているとわかる緩やかな抽挿を何度も繰り返し、少しずつさらに奥へと進んでいく。
感覚が高みへ登っていくのが自分でわかる。
痛みより徐々に快楽が勝ってきて、いつ弾けて可笑しくない快楽が身体を甘く痺れさせる。
エルミールの声に隠せない艶が出始めた頃。
アルベールが「イくぞ……!」と呟いて、一旦ぎりぎりまで抜いた熱杭で一気に奥まで貫かれた。
「――っ!!」
「くっ」
腹の奥で熱が弾ける。
子を孕むための男の精を注ぎ込まれながら、エルミールはとろりと微笑んだ。
これで、彼女は女になった。アルベールだけの、女に。
それが、とても幸せだと思ったのだ。
「おない、どし……?」
「はい、お義母様」
初夜の翌日、鈍く痛む腰を隠しながら引き合わされたのはアルベールの息子のフランシスだ。
にこにこと微笑む義息子がまさかの自身と同い年だと聞いて、鍛え上げた鉄壁の令嬢スマイルが崩れかけたのをエルミールは感じた。
簡単に脱げるラフな格好が、アルベール様の色気を増大させている。
ランプの明かりだけのほの暗い空間で浮き彫りになるアルベール様の精悍な顔立ちは壮絶な色気がある。
「エルミール」
かすれた声音で名前を呼ばれると、心臓が不自然に脈打つ。
どくんと跳ねた心臓に気づかれたのか、アルベールの笑みが深くなった。
やんわりと右胸を揉みしだかれながら、彼が口を耳元に近づける。
「緊張しているのか?」
「するなというほうが無理でしょう……!!」
「そうか、たしかにそうだな」
納得したように頷いたアルベールは酒のせいなのか機嫌がよさそうだった。
恥ずかしすぎて視線を逸らし、不自然に乾いた喉を潤すために唾を飲み込むと、彼に顎を掴まれる。
「っ」
「ちゃんと俺を見てくれ。……初めてだからな。ちゃんと丁寧にする」
「は、はい」
低い声で囁かれる。絡み合った視線が離せない。
綺麗なアメジストの瞳を見上げると、とろりと熱に溶けた視線が注がれてますます心臓が早鐘を打ってしまう。
「ぁ」
「声、もっと聞かせてくれ」
止まっていた愛撫が再開される。右胸を揉みながら首筋に舌を這わされた。
本当は初夜である今聞くべきではない。そうは思っていても、口からこぼれる疑問を止めることは難しかった。
「アルベール様……どうして私だったのでしょうか……」
「なにがだ?」
「後妻は、他にもたくさんの候補がいらっしゃったのではないですか?」
不思議で仕方なかった。エルミールの家は伯爵家で、公爵家に後妻として嫁ぐには少しばかり釣り合いが取れない。
厳格な身分があるこの国では、同じ貴族でも爵位が一つ違えは立場は全く異なるものだ。
調べたところ過去に伯爵令嬢が公爵家に嫁いだ記録はあったが、それは幼少期から幼馴染だったり、親同士が仲が良かったり、あるいは伯爵家のほうが事業に成功して莫大な財を持っていたりした。
エルミールの実家はそのどれにも該当しない。
アベジェール伯爵家は建国当時の古くからある名門でこそあるが、最近は領地を襲う悪天候の影響で傾きかけている。
その上、アルベール様が当主を務めるバーデル公爵家は王族に次ぐ発言力を持つ名家だ。
さすがに釣り合いが取れていない。
後妻とはいえ、アルベールはまだ若く健康だ。公爵夫人の座が手に入るのもあって、立候補する令嬢はそれはたくさんいたはずである。
なぜわざわざ名門とはいえ陰りが見えるアベジェール伯爵家の娘であるエルミールに白羽の矢を立てたのか。
結婚の打診を受けてから、ずっと不思議に思っていて、問いたかった事柄だ。
エルミールの問いかけに、アルベールは少しだけ片眉を吊り上げる。
問いかけは心外だといわんばかりの表情に不安が募る。なにか、大切なことを見逃していそうだった。
「……心当たりがないのであれば、それでいい」
「それはどういう……あっ!」
問いを重ねたのに、無視するようにいささか乱暴にネグリジェの上から掴んだ胸元の愛撫が再開される。
エルミールの身体は豊かに育ったので、それなりの大きさのある胸元はアルベールの大きな手のひらですら零れ落ちそうなほどだ。
絶妙な加減でやんわりと揉みしだかれ、今までに感じたことのない刺激に咄嗟に両手で口を押えた。
「声を抑えるな」
「は、い」
公爵の地位にいるだけあって、アルベールは命令することに慣れている。
だからこそ、上から物を言われると圧があって怖いと感じる。エルミールが指示通りおずおずと両手をどかすと、なぜかため息を吐かれてしまった。
「……矛盾することをいうが、嫌なら俺の言葉に従う必要はない」
「え? あ、あっ」
本当に矛盾している。男が圧倒的な権力を持つこの国で、夫となった男性に妻は逆らえない。だというのに、アルベールは嫌なら拒否しろという。
それは旦那となる男性を立てるために厳格な淑女教育を受けたエルミールにとって、本当に難しいことだ。
やり取りの間も揉まれ続けてすっかり固くなった頂きを摘ままれる。高い嬌声を漏らすと、アルベールは少しだけ機嫌を持ち直したらしい。
ネグリジェの裾から大きな手のひらが侵入してくる。
剣だこが何度も潰れた固い手のひらに太ももを撫で上げられると背中に甘い感覚が走り、腰の奥がずんと重くなる。
頂きを摘ままれて意識がそちらに向いている間に、慣れた手つきであっという間にネグリジェを脱がされてしまう。
下着だけではあまりに心もとない。そう思っている間に、それらも綺麗に取り払われて、エルミールだけが生まれたままの姿になる。
「っ」
息を飲んだ。鮮やかな手腕は慣れを感じさせて、女性経験が豊富なのだと突き付けられる。
先妻がいたのだから女性の扱い慣れていて当然なのに、心のどこかが傷ついている。
視線を伏せたエルミールに気づいたのか、目を細めて彼女の裸体を眺めていたアルベールが口を開いた。
「俺は……自ら望んで女性を抱いたことはない」
「……え?」
「君が初めてだ。欲しいと思ったのは」
意味がわからない。では、先妻はなんだったというのか。
息子であるフランシスもいるというのに。
かけられた言葉にエルミールが混乱していると、アルベールの顔が近づいてくる。目を閉じた彼女の瞼に口づけが落とされる。
そのまま、額、頬、と薄い唇が掠めていって、そのまま唇同士がくっつけられた。
「ん……」
こういうときは薄く唇を開く。閨で必要な知識は家庭教師から一通り教えられていた。
エルミールが教えに従いそっと唇を開くと、待っていたとばかりに肉厚な舌が口腔内に侵入してくる。
「んん」
小さな声が漏れた。歯列を舐め、柔らかな頬肉をつついた舌先が、今度は逃げるエルミールの舌を追いかけてくる。
逃げていてはいけないと思って応えようと恐る恐る舌を出せば、舌同士を絡まされ、呼吸がままならない。
「ふ、ん……!」
鼻に抜けた声が零れる。口角から嚥下しきれない唾液が伝う。息が苦しいのに、どうしようもないほど気持ちもいい。腰の奥が甘く疼いて仕方なかった。
こんな感覚は初めてだと、戸惑うエルミールを翻弄する巧みな舌使い。
とうとう呼吸が苦しくなってアルベールの胸板を押すと、そうっと唇が離れていく。
自らが望んだことなのに、なぜか寂しい。
二人を繋ぐように銀糸が伝って、熱に浮かされた頭でぼんやりと銀の糸が切れるのを見守ってしまった。
「どうだった? 初めてのキスは」
ニヤリと挑発的な笑みを向けられる。
どくんと心臓が跳ねて、エルミールは顔を真っ赤にしてしまう。
どうだったといわれれば、とっても気持ちよかった。だが、それを素直に口にするのは羞恥が勝る。
視線を伏せたエルミールのつむじに優しい口づけが降ってくる。ふるりと身体を震わせた彼女の前で、アルベールが身に纏っていた服の上を脱ぐ。
現れたたくましい肉体につい魅入ってしまう。そっと手を伸ばして綺麗に割れた腹筋に触れると、彼は小さく笑った。
「好きなだけ触れるといい。君の身体でもある」
少し意味が違う気がするが、許可が出たのでぺたぺたと触ってしまう。エルミールの柔らかい身体にはない鍛えられた筋肉が見ていて楽しい。
暫く無言で見守っていたアルベールだが、ふいに細く息を吐くと「もういいか?」と聞いてきた。
さすがに無遠慮に触りすぎたと思って「はい」とエルミールが頷いて手を引っ込めると、彼はまた笑う。
「また今度触るといい。俺にも楽しませてくれ」
「きゃっ!」
そういって先ほど揉んだのとは逆のふくらみの頂きを口に含む。まだ柔らかいそこを舌で撫で、突き、軽く食む。
刺激に反応して固くなり、さらに濃く色づいた頂きをしゃぶる姿は赤子のようだ。
快感よりくすぐったさが勝ってしまって、じっと胸元に齧りつく姿をみつめていると、先ほど握っていた右のふくらみをまた揉まれる。
「あぅ」
全体をやわやと揉んで、頂きをこすったり摘まんだりされると、だんだんと腰が重くなっていく。
気づかないうちに膝をすり合わせ腰を揺らしていたエルミールに気づいたアルベールが、頂から口を話して口角を上げた。
「ちゃんと感じているようだ」
「……あっ!」
右胸を揉んでいた手が離れたかと思いきや、薄い下生えをかき分けて自身でも触らない秘所に触れられる。
くちゅりとそこから水音がして、閨の知識として知っていたはずなのに恥ずかしくてたまらない。
ただでさえさっきから赤い顔をさらに赤くすると、アルベールは機嫌よく笑う。
「あぁ!!」
襞をかき分け、蜜壺に指がいれられる。違和感に声をあげる反応をじっくりと眺めながら、アルベールが親指で蜜壺の上の花芯を押しつぶした。
「あぁあ!!」
神経の塊だと教えられたそこを潰されると、腰が跳ねてあられもない声をあげてしまう。
初めての感覚が腰から背中を駆け抜け、呼吸が荒くなる。
その間も蜜壺の中にいれられた指は暴れているし、花芯をこすったりされているしで、もうなにがなんだかわからなくなる。
「や、やめっ。おか、おかしく、なっちゃ……っ!!」
「存分に可笑しくなるといい」
「やだやだやだぁ!!」
違和感が増える。中にいれられている指が増えたのだ。その上で執拗に花芯を弄られて、びくびくと背中を跳ねさせる。
ベッドの上で淫らに狂うエルミールの姿に、アルベールは楽しげだが、彼女自身はたまったものじゃない。
家庭教師から初めては痛いだけで快楽など拾えないと教えられていたのに、エルミールが淫乱なのか、あるいはアルベールの手技がすごいのか、すっかり感じ入っているのだ。
生理的な涙を目じりにためて、いやいやと首を横に振るが、アルベールの猛攻は止まらない。
その上、蜜壺にいれられた指先がある一点を掠めた瞬間、今までとは違う感覚に襲われた。
「ぁああ!!」
「ここか」
アルベールがそう呟いて、その場所を重点的に責め始める。そうなると、言葉として意味をなさない喘ぎ声しか口からは出てこない。
やめて、やだ。おかしくなる、切れ切れにそんな風に訴えても無視されてさらに責め立てられ――そして。
「―――ああぁっ!!」
びくん! と。弓なりに身体をそらし、足の指をピンと伸ばしてエルミールの身体は未知の感覚に達した。
腰に溜まっていた甘い疼きが解放され、頭の奥で光が弾ける。
衝撃の後、一気に弛緩した身体をベッドに埋めて荒い呼吸を繰り返すと、やっと彼女の蜜壺から指を抜いたアルベールが、満足そうに笑った。
「良い子だ。うまくイけたな」
「い……?」
「達したんだ。気持ちイイだろう?」
ぺろりと濡れた指先を舐めて問われて、これが『気持ちいい』なのだと理解し、エルミールは小さく微笑んだ。
「……はい」
こっくりと頷くと、目を細めてアルベールも笑う。そして、ズボンの前を寛げた。
音をたてる勢いで飛び出してきたそそり立つ男性の象徴に、一気にまどろみから現実に戻される。
「……え?」
「次は俺自身で気持ちよくなってくれ」
熱を持った太いものが蜜口に充てられて、つい情けない声をあげてしまう。
指と比較にならないほど太いそれを中に入れるのはさすがにむりがあるように思えた。
「は、はいりません!!」
悲鳴を上げベッドの上で往生際悪く逃げようとしたエルミールの腰を両手でがっしりと掴んで、アルベールが位置を整える。
蜜口にあたる感覚に青ざめる彼女の前で、肉食獣のような様相で獰猛に笑う。
「大丈夫、だ!」
「あぁあああああ!!」
ずぷん、と中に入ってきた質量に悲鳴のような声が零れる。みちみちと中を広げながら侵入してくるそれによってもたらされるのは、圧倒的な痛み。
言葉にならない痛みに涙をぽろぽろと流すと、慰めるようにアルベールが目じりに口づけを落とす。
「ゆっくりと息を吐くんだ。そう、ゆっくり」
痛みを逃したい一心で、いわれた通りに息を吐く。肺を空っぽにすると「今度は吸うんだ」と言われて深呼吸をする。
少しだけ呼吸が整って、僅かに余裕が生まれた。
アルベールを下から見上げると、彼のほうがなぜか泣きそうな顔をしている。
それが可笑しくて、エルミールは小さく笑ってしまった。
「ふふ」
「……何が可笑しい」
「アルベールさま、すきにしてください」
処女を相手にするとき、男性もまたそれなりに苦労すると家庭教師から教えられた。
だから、初夜で旦那となる人が気遣ってくれたなら、そこには確かな愛が存在するのだ、とも。
そっとアルベールの精悍な頬に手を当てて、エルミールは甘く笑う。
少しだけ強がっていたけれど、心を込めて言葉を紡いだ。
「わたしは、あなたのつまですから」
だから、好きにしていい。この人になら、好きにされてもいい。
だって、最初からずっとアルベールは彼女を思いやって動いてくれている。
旦那である人に、好き勝手に蹂躙されることも覚悟していたのだ。
貴族の結婚は政治だから、好きな相手と結ばれることはほとんどない。
意にそわない結婚をすることだって間々あるのだ。
だからこそ、初夜で暴力的に振る舞われたときの心の守り方も教わっていた。
けれど、アルベールはどこまでも優しい。
エルミールは確かに先ほど「やめて」と口していたが、そこで止められれば甘く疼く腰と身体が逆に辛かっただろうと理解できる。
彼女が感じることをアルベールが優先してくれたからこそ、痛みの中に愛情を感じとれている。
だからこそ。
「すきに、うごいてください」
そうっと口にすれば、アルベールは目を見開いた。一拍おいて、大きなため息を吐いき、両手でぎゅうとエルミールを抱きしめる。
「君は、まったく……!」
「あぁっ!!」
一気に下から突き上げられる。何かを破る嫌な感覚と、鈍い痛みが襲ってくる。
恐らく破瓜の感覚と痛みだ。
(ああ、これで私は名実ともにアルベール様のものになった)
酷く幸福なことに思える。
とろんと目を細める彼女を抱きしめて、暫くじっとしていたアルベールがゆっくりと抽挿を始める。
「あっ、あっ、あぁ!!」
下から揺さぶられると、喘鳴のような喘ぎが口から溢れて止まらない。
まだまだ気遣われているとわかる緩やかな抽挿を何度も繰り返し、少しずつさらに奥へと進んでいく。
感覚が高みへ登っていくのが自分でわかる。
痛みより徐々に快楽が勝ってきて、いつ弾けて可笑しくない快楽が身体を甘く痺れさせる。
エルミールの声に隠せない艶が出始めた頃。
アルベールが「イくぞ……!」と呟いて、一旦ぎりぎりまで抜いた熱杭で一気に奥まで貫かれた。
「――っ!!」
「くっ」
腹の奥で熱が弾ける。
子を孕むための男の精を注ぎ込まれながら、エルミールはとろりと微笑んだ。
これで、彼女は女になった。アルベールだけの、女に。
それが、とても幸せだと思ったのだ。
「おない、どし……?」
「はい、お義母様」
初夜の翌日、鈍く痛む腰を隠しながら引き合わされたのはアルベールの息子のフランシスだ。
にこにこと微笑む義息子がまさかの自身と同い年だと聞いて、鍛え上げた鉄壁の令嬢スマイルが崩れかけたのをエルミールは感じた。
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