【完結/R18】公爵の旦那様の後妻に収まったら、とんでもない隠れ絶倫でした!!

久藤れい

文字の大きさ
3 / 24

3話


 アルベールに激しく抱かれた初夜を終え、気怠い身体で目を覚ました翌日。
 エルミールが瞼を押し上げると、彼女を抱き込むようにしてアルベールが目を閉じていた。

 端整な面差しをしげしげと眺める。そうっと手を伸ばそうとした瞬間、綺麗なアメジストの瞳が開かれた。

「すみません、起こしてしまいましたか?」
「……大丈夫だ」

 散々喘いだ影響でかすれた声音で問いかけると、ややおいてアルベールもまた寝起き特有の声で返事をしてくれた。

 朝が弱いのだろうかとふわふわと幸せな気持ちで眺めていると、彼はぎゅうとエルミールを腕の中に抱き込んだ。
 逞しい筋肉のついた胸元に押し付けれて、小さな声をあげる。

「きゃっ」
「もう少し……このままで」

 甘い声音で言われてしまうと、嫌だともいえない。どきどきと煩く鼓動を繰り返す心臓を持て余しながら、エルミールは身体から力を抜く。

 暫く彼女を抱きしめていたアルベールはややおいて、僅かに距離を作った。離れていった体温が寂しくてエルミールが瞼を開くと、甘やかに笑う姿がある。

「ん」

 触れるだけのキスが唇に落とされる。濃い一夜を過ごした後だと少し物足りないけれど、強請ることもできない。

「そんな物足りなさそうな顔をしないでくれ。……離してやれなくなる」
「っ」

 バレている。顔を真っ赤に染め上げたエルミールをみて、アルベールがくすくすと笑う。
 今度はつむじに口づけが落とされて、今度こそ彼の両手が身体から離れていく。

「そろそろ起きよう」
「はい」

 分厚いカーテンの隙間から差し込む光は、すでに朝日ではなさそうだった。
 初夜の後だから朝が遅くても怒られることはないだろうが、アルベールは公爵である。

 忙しい彼の足手まといになってはいけない。何も身に纏っていないしなやかな筋肉から目を逸らしつつ、ベッドの上で身体を起こそうとしたエルミールは、ずくんと腰に走った鈍い痛みに息をつめた。

「ぅ」
「エルミール?」

 小さく声を漏らした彼女に気づいたアルベールが振り返る。シーツで身体を隠しながらどうにか起き上がったエルミールは眉を寄せてしまった。

「どうしたんだ?」
「あ、その……こしが、いたくて……」

 エルミールの訴えに、アルベールがぱちりと瞬きをする。一拍おいて愛おしそうに表情を緩めた。

「すまない、ずいぶんと可愛かったから手加減ができなかった。暫く休んでいるといい。傍にいてやりたいが、仕事が残っているんだ」

 悪いな、と重ねて謝罪されふるふると首を左右に振る。ベッドの下に落としていた簡易な寝間着を身に着つけて、アルベールが言葉を続けた。

「痛みがマシになったら、フランシスにあってやってくれ。昨日は挨拶をする時間がなかっただろう」
「フランシス様……?」
「俺の息子だ」

 アルベールは先妻との間に一人息子がいるのだ。年の離れた弟がいるエルミールは小さな子供が大好きだ。ぱっと表情を輝かせたエルミールの頭を撫でて「では、またあとで」といってアルベールが寝室を出ていく。

 後ろ姿を見送って、どうにか気力で上半身を起こしていたエルミールはべしゃりとベッドに沈んだ。

 身体が重い。腰だけではなく全身が痛い。
 ふかふかの寝台に転がって、エルミールは深く息を吐く。

(今日からアルベール様の妻なのね)

 お飾りの妻を求めての結婚の打診だと思いっていたが、初夜でのアルベールの振る舞いと先ほどの甘い表情を思えば、そうではないのかもしれないと思えた。

 互いを尊重する夫婦として、幸せになれるかもしれない。
 その気配に、エルミールの頬が緩む。

(まずはフランシス様に気に入られなくちゃ)

 彼が何歳か知らないが、亡き母が恋しい年代かもしれない。
 新しい母として認められるように頑張ろうと決めて、襲い掛かってきた眠気に身を任せるのだった。





 存分に二度寝を貪ったあと、ようやくエルミールが起きた頃には日差しは傾いていた。
 メイドの手を借りて身支度を整えた彼女は、フランシスへの面会を望む。

 よく教育されたメイドは一つ頷いて、エルミールを応接室に案内した。
 どうして応接室なのか、と思ったがその疑問はすぐに解消される。

 なぜなら、彼女が応接室の長椅子に座って、豪華な調度品を興味深く眺めていると扉がノックされ姿を見せたのは。
 ――小さな子どもではなく、成人済みに思える青年だったからだ。

 空を切り取ったような澄んだ青い瞳。さらさらの金の髪を肩口で緩く結んでいる。
 アルベールと全く違う色彩を身に宿した青年は穏やかな笑みを浮かべていた。

「?」

 ぱちりと瞬きをしたエルミールの前に、表情を輝かせた青年が近づいてくる。
 長椅子に座る彼女の前で一礼した青年は驚愕の事実を口にした。

「こんにちは、お義母様。私はフランシス。貴女の息子になります」
「……」

 驚きすぎて言葉がでてこない。まじまじと上から下までフランシスを眺めてから、ようやく疑問を口にする。

「……失礼だけれど、おいくつかしら……?」

 もしかして、ものすごく発達の良い子供だったりするのだろうか。
 ありえないと理解しつつ問いかけた彼女に、フランシスは甘く微笑む。その表情はアルベールに似ている気がした。

「十八になりました」
「……同い年ですのね」
「はい」

 引きつる口元を鍛え上げた令嬢スマイルで押し隠す。
 穏やかに微笑んだエルミールだが、彼女の内心は荒れ狂っていた。

(同い年?! どうして?! アルベール様は確かに私より年上だけれど、流石に無理がないかしら?!)

 アルベールは現在三十一歳だと聞いている。エルミールより十三歳年上だ。つまり、フランシスは彼が十三歳のときの子供ということになる。
 いくら貴族の結婚が庶民に比べれば早いとはいえ、さすがに闇を感じざるを得ない。

 問いただしていいものか、いや触れないほうが絶対にいい。
 即座に内心で答えを出したエルミールは嬉しそうに対面のソファに腰を下ろしたフランシスに問いかける。

「……ごめんなさい、息子様がいるとは聞いていたのだけれど同い年だとは知らなくて。私のこと、無理に『お義母様』なんて呼ばなくていいのよ?」

 さすがに突然同い年の母親が出来たら複雑な気持ちだろう。
 そう思っての気遣いの言葉だったのだが、フランシスは首を左右に振る。彼の動きに合わせてさらりと長い髪が揺れる。

「いいえ、私は貴女を母と呼べる幸運を噛みしめているのです」

 心底幸せそうにそういわれると、それ以上何も言えない。
 エルミールこそ複雑な気持ちになりつつ、二人の初対面は終わったのだった。





 アルベールの妻となり、夜毎に彼に愛されていたある日。
 情事の後の寝台の上で、エルミールはアルベールからひとつの提案を受けた。

「夜会、ですか?」
「そうだ。君の公爵夫人としてのお披露目を兼ねた夜会を開こうと思う」

 結婚式には様々な貴族が参列していたが、誓いの儀式やその後の初夜での中座でまとな挨拶は出来ていない。

 だからこその提案に、エルミールは穏やかに頷いた。
 その時の彼女は、夜会で『あんなこと』が起こるなんて、想像もしていなかったのだ。

感想 0

あなたにおすすめの小説

毒味役の私がうっかり皇帝陛下の『呪い』を解いてしまった結果、異常な執着(物理)で迫られています

白桃
恋愛
「触れるな」――それが冷酷と噂される皇帝レオルの絶対の掟。 呪いにより誰にも触れられない孤独な彼に仕える毒味役のアリアは、ある日うっかりその呪いを解いてしまう。 初めて人の温もりを知った皇帝は、アリアに異常な執着を見せ始める。 「私のそばから離れるな」――物理的な距離感ゼロの溺愛(?)に戸惑うアリア。しかし、孤独な皇帝の心に触れるうち、二人の関係は思わぬ方向へ…? 呪いが繋いだ、凸凹主従(?)ラブファンタジー!

下賜されまして ~戦場の餓鬼と呼ばれた軍人との甘い日々~

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王宮から突然嫁がされた18歳の少女・ソフィアは、冷たい風の吹く屋敷へと降り立つ。迎えたのは、無愛想で人嫌いな騎士爵グラッド・エルグレイム。金貨の袋を渡され「好きにしろ」と言われた彼女は、侍女も使用人もいない屋敷で孤独な生活を始める。 王宮での優雅な日々とは一転、自分の髪を切り、服を整え、料理を学びながら、ソフィアは少しずつ「夫人」としての自立を模索していく。だが、辻馬車での盗難事件や料理の失敗、そして過労による倒れ込みなど、試練は次々と彼女を襲う。 そんな中、無口なグラッドの態度にも少しずつ変化が現れ始める。謝罪とも言えない金貨の袋、静かな気遣い、そして彼女の倒れた姿に見せた焦り。距離のあった二人の間に、わずかな波紋が広がっていく。 これは、王宮の寵姫から孤独な夫人へと変わる少女が、自らの手で居場所を築いていく物語。冷たい屋敷に灯る、静かな希望の光。 ⚠️本作はAIとの共同製作です。

年下で可愛い旦那様は、実は独占欲強めでした

由香
恋愛
政略結婚で嫁いだ相手は―― 年下で、可愛くて、なぜか距離が近すぎる旦那様でした。 「ねえ、奥さん。もうちょっと近く来て?」 人懐っこく甘えてくるくせに、他の男が話しかけただけで不機嫌になる彼。 最初は“かわいい弟みたい”と思っていたのに―― 「俺、もう子供じゃないよ。……ちゃんと男として見て」 不意に見せる大人の顔と、独占欲に心が揺れていく。 これは、年下旦那様にじわじわ包囲されて、気づいたら溺愛されていた話。

白い結婚は無理でした(涙)

詩森さよ(さよ吉)
恋愛
わたくし、フィリシアは没落しかけの伯爵家の娘でございます。 明らかに邪な結婚話しかない中で、公爵令息の愛人から契約結婚の話を持ち掛けられました。 白い結婚が認められるまでの3年間、お世話になるのでよい妻であろうと頑張ります。 小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。 現在、筆者は時間的かつ体力的にコメントなどの返信ができないため受け付けない設定にしています。 どうぞよろしくお願いいたします。

愛されないはずの契約花嫁は、なぜか今宵も溺愛されています!

香取鞠里
恋愛
マリアは子爵家の長女。 ある日、父親から 「すまないが、二人のどちらかにウインド公爵家に嫁いでもらう必要がある」 と告げられる。 伯爵家でありながら家は貧しく、父親が事業に失敗してしまった。 その借金返済をウインド公爵家に伯爵家の借金返済を肩代わりしてもらったことから、 伯爵家の姉妹のうちどちらかを公爵家の一人息子、ライアンの嫁にほしいと要求されたのだそうだ。 親に溺愛されるワガママな妹、デイジーが心底嫌がったことから、姉のマリアは必然的に自分が嫁ぐことに決まってしまう。 ライアンは、冷酷と噂されている。 さらには、借金返済の肩代わりをしてもらったことから決まった契約結婚だ。 決して愛されることはないと思っていたのに、なぜか溺愛されて──!? そして、ライアンのマリアへの待遇が羨ましくなった妹のデイジーがライアンに突如アプローチをはじめて──!?

側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、陛下は私を離してくれません!

花瀬ゆらぎ
恋愛
「おまえには、国王陛下の側妃になってもらう」 婚約者と親友に裏切られ、傷心の伯爵令嬢イリア。 追い打ちをかけるように父から命じられたのは、若き国王フェイランの側妃になることだった。 しかし、王宮で待っていたのは、「世継ぎを産んだら離縁」という非情な条件。 夫となったフェイランは冷たく、侍女からは蔑まれ、王妃からは「用が済んだら去れ」と突き放される。 けれど、イリアは知ってしまう。 彼が兄の死と誤解に苦しみ、誰よりも孤独の中にいることを──。 「私は、陛下の幸せを願っております。だから……離縁してください」 フェイランを想い、身を引こうとしたイリア。 しかし、無関心だったはずの陛下が、イリアを強く抱きしめて……!? 「離縁する気か?  許さない。私の心を乱しておいて、逃げられると思うな」 凍てついた王の心を溶かしたのは、売られた側妃の純真な愛。 孤独な陛下に執着され、正妃へと昇り詰める逆転ラブロマンス!

地味な私では退屈だったのでしょう? 最強聖騎士団長の溺愛妃になったので、元婚約者はどうぞお好きに

阿里
恋愛
「君と一緒にいると退屈だ」――そう言って、婚約者の伯爵令息カイル様は、私を捨てた。 選んだのは、華やかで社交的な公爵令嬢。 地味で無口な私には、誰も見向きもしない……そう思っていたのに。 失意のまま辺境へ向かった私が出会ったのは、偶然にも国中の騎士の頂点に立つ、最強の聖騎士団長でした。 「君は、僕にとってかけがえのない存在だ」 彼の優しさに触れ、私の世界は色づき始める。 そして、私は彼の正妃として王都へ……

王宮メイドは今日も夫を「観察」する

kujinoji
恋愛
「はぁぁ〜!今日も働くヴィクター様が尊すぎる……!」 王宮メイドのミネリは、今日も愛しの夫ヴィクターを「観察」していた。 ヴィクターが好きすぎるあまり、あますところなく彼を見つめていたいミネリ。内緒で王宮メイドになり、文官である夫のもとに通うことに。 だけどある日、ヴィクターとある女性の、とんでもない場面を目撃してしまって……? ※同じものを他サイトにて、別名義で公開しています。