【完結/R18】ヤンデレ絶倫王太子に身も心も溶かされています

久藤れい

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12話

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 王太子であるオスクロ・シャンタルには幼少期より婚約者がいる。
 婚約者の名はベアトリス・モンクティエ。オスクロより三歳年上の彼女は、由緒正しいモンクティエ公爵家の一人娘だ。

 幼い頃、オスクロと婚約が決まったばかりのときベアトリスは正直外れを引いたと思った。
 オスクロが側室の子だったからだ。それも、国王が気に入って手籠めにした踊り子の娘が生んだ子供。
 つまり、半分は下賤な庶民の血が流れているのである。

 青き血を大切にするように厳しい教育を受けてきたベアトリスは、なぜ自分が下賤な血を引いている側室の子の婚約者にされたのか理解できなかった。将来、その男の子を孕むのだと考えるとぞっとした。

 幼い彼女に両親は「いずれわかる日が来る」といって頭を撫でるだけで、疑問には答えてくれなかった。
 それが、悪い方向に作用した。

 ベアトリスはオスクロを蔑んだのだ。その身に流れる血も、出自も、尊きものではないと見下した。
 何分、モンクティエ公爵家が数代過去にさかのぼると王家から降嫁した王女を迎え入れているだけあって、彼女のプライドは高かった。

 正妃が子供を生めない身体だと理解して、次期王太子の座がオスクロに確約されているのだと理解したときには――全てが手遅れだった。

 オスクロはベアトリスに対して固く心を閉ざした後で、彼女がどんなに機嫌を取ろうとしても眉ひとつ動かさない。

 正妃によってベアトリスの何倍も厳しい勉強と修練を言いつけられていているオスクロに会える機会はそもそも少なく、ベアトリスの認識ではすれ違ったまま成長してしまった。

 とはいえ、出自故に地盤が盤石ではないオスクロは由緒正しい公爵家の血が必要だ。内心でどう思っていても、ベアトリスを迎え入れるしかない。そう高を括っていた。

 だと、いうのに。

『ベアトリス・モンクティエ。君との婚約を破棄する』

 書面に綴られた温度のない文字列に、顔から血の気が引いていくのが分かった。
 そこには婚約破棄の理由として『庶民を見下す君の言動には辟易としている。
 守るべき民を下賤な者などと口にする者を王妃には迎えられない』と綴られていた。

(なによなによなによ!! 本当のことじゃない!!)

 栗色の長い髪を靡かせて、かつかつとヒールの音を響かせながらベアトリスは王宮を闊歩する。
 明らかに機嫌の悪い彼女の様子に、王宮仕えのメイドたちが怯えた様子で逃げていく。

「殿下はどちらに?!」

 執務室にも私室にも姿が見えない。
 キレた彼女が貴族令嬢らしからぬ大声をあげると、近くの部屋の警備をしていた騎士がびくりと肩を揺らした。

「そこの貴方! 殿下の居場所はご存知なくて?!」
「は、え、あの」
「その様子は心当たりがあるのですね!」

 ずいっと近づいたベアトリスに、騎士の目が泳ぐ。
 彼は迷ったように視線を左右に移動させた後、小さな声で呟いた。

「街娘の元かと……」
「なんですって?」
「一か月ほど前に、王太子殿下が連れてこられたのです。毎日その娘の元に通っているようです」
「なんですって……っ!」

 ベアトリスという婚約者がいながら、他に女を囲っているというのか。
 彼女の元には一度だって訪れたことがないくせに。

 今まで自身がオスクロに対して口にした散々な言動を棚上げして、ギリギリと歯ぎしりをする彼女の前で騎士が小さくなっている。

「案内しなさい! その娘はどこです!!」
「お、王太子殿下より、近づくなと厳命されております……!」
「関係ありませんわ! わたくしを誰だと思っているのです!!」

 高慢な言葉を口にして、ベアトリスは逆らうこともできない哀れな騎士に道案内をさせる。
 苛立ちのままに眦を吊り上げて、彼女は騎士に様々な質問をした。
 その結果、件の娘が少し前からオスクロが入れあげていた街娘だと判明し、奥歯を噛みしめる。

(血は逆らえないということね。悪癖ばかり陛下に似て!)

 踊り子を囲って子を成した現国王を悪しざまに心の中で罵る。
 さすがに口に出さない程度の常識はあった。

(外見はそこそこ整っているのだから、お飾りの国王になるのであれば黙っていたものを……!)

 下民の血を引くオスクロは王として相応しくない。そんな彼を支えるためのベアトリスだ。
 だから、王位についたらお飾りの国王として全ての権力を取り上げ、公爵家が裏から国を支配する予定だった。

(街娘を囲う程度ならまだしも、わたくしとの婚約を破棄するということは『そういうこと』ではありませんか! そんなことは許されませんわ!!)

 これ以上、王家に下民の血を混ぜるわけにはいかない。
 一度は穢れた血統とは言え、徐々に王家の血の濃さを戻していかなければならないというのに。

「……ああ、いいことを思いつきましたわ」

 下民の女にお似合いの末路を脳裏で描いて、にぃやりと笑う。最低のシナリオを思いつき、人の悪い笑みを浮かべた彼女を止める者は、誰もいない。
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