俺の心を掴んだ姫は笑わない~見ていいのは俺だけだから!~

あとさん♪

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本編

1.オリヴァー・フォン・ロイエンタール


 やぁ、こんにちは。
 俺はオリヴァー。オリヴァー・フォン・ロイエンタール。
 自分でいうのもあれだけど、俺はすべてにおいて恵まれていると思っている。
 侯爵家の次男に生まれ、恵まれた容姿(金髪碧眼は、まぁ、美男子の基本だよね? その上、うん、女の子に持て囃される程度には目鼻立ちも整っているし)、恵まれた家族(夫婦仲円満の両親、質実剛健な4つ上の兄クラウスと、一緒に生まれた美人の妹イザベラ)。広大なロイエンタールの領地経営は順調で普通に優雅に暮らしている。

 生まれた国はシャティエル王国。大陸の中央よりちょっと南に位置した祖国は周辺国中で一番裕福で恵まれた国だ。なんせ、国王一家が先代の時から聡明で有名な上、今代の国王陛下は王太子の頃からこの国の繁栄の為に尽くして来た英邁闊達な名君と名高いヘルムバート陛下だ。王子殿下もふたりいて、ふたりとも聡明だし、妹の王女殿下も美人だ。盤石。この一言に尽きる。

 俺はその聡明な王子たちの幼馴染みとして育った。
 次男に生まれたから家を継ぐ必要もなく、旨味を甘受する毎日。妹は第二王子の婚約者。余程のことがない限り我が家は安泰だろう。順風満帆を絵に描いたら我が家の様子になるのではなかろうか。

 さて。
 そんな恵まれた環境で育った俺は、美しいモノが好きだ。
 美しい風景、美しい人、美しい物。すべて俺の目を楽しませてくれる。美しいモノを見ると、心が癒されるし豊かになると思う。人生は有限だ。だからできるだけおもしろ可笑しく楽しく生きないと損ではないか!


 この国は昔から子どもの教育に力をいれていて、貴族の子息子女は13歳になる年に王都にある王立貴族学園に入ることが義務付けられている。

 もともと、王都のタウンハウスで育った俺は、貴族学園に通うことが楽しみだった。幼馴染みの王子殿下たちと、親や護衛の干渉なしに過ごせると思っていた。
 実際問題として、王子殿下に護衛は必需だし無干渉という訳にはいかなかったけれど、王宮で過ごすよりは格段に人目を気にせず過ごすことが可能となった。これには殿下たちも伸び伸びと生活出来るようで毎日ご機嫌で過ごしている。

 学業は取り分け大変でもないし、簡単でもなかった。
 やってしまえば、ほどほどの成績は取れる。俺に難しいことなんてない。
 けれど、同学年にいる王子殿下より上の成績を取るなんて、不遜な真似はできないからね。そこそこの程度で修めるのが大変って感じかな。

 羨ましかったのは寮生たちだ。
 皆、親元から離れて伸び伸びと暮らしている。
 王都にタウンハウスがあるせいで、入寮するまでもないだろうと却下されたのは残念だった。四つ上の兄も通学組だから、というのもあるだろうけど。何度か寮に潜入し寝泊りした。夜通し、同級生の部屋でふとんを被ってするお喋りは楽しかったな! この話は第二王子であるジークも羨ましがっていた。さすがに王子殿下の潜入は無理だ。夜、殿下の王宮不在が明るみにでれば王子宮の使用人の首が飛ぶなんてこと、容易に想像できる。

 俺は自他ともに認める美男子だと思う。
 まぁ、両親ともに美形だしね。髪を伸ばし始めたのは学園に入ってから。それが似合うって女の子が言ってくれたし、俺も似合うと思ったから。緩やかにウェーブする髪を結んで、ネクタイをわざと緩めて、ブレザーのボタンは留めない。そのスタイルで同級生の女子から上級生のお姉さま方まで、黄色い声援を一身に集めるのは快感だね!
女の子はいいね! みんな可愛いし、みんな目に優しい。柔らかいし良い匂いするしね。女の子は存在するだけで神様の恩恵だね。ファンクラブだなんて、可愛いモノ作ってくれるし。

「そんなこと言っていると、いつか後ろから刺されるわよ」

 胡乱な顔をしながら妹、イザベラが言う。俺と同じ色の金髪に、俺と同じ色の碧眼。顔立ちもよく似かよっている。実際、一緒に生まれて来た双子の妹だ。
 ただし、生まれた時から健康体だった俺と違い、イザベラは病弱だった。
 家中で病弱な妹を気遣い、過保護に育ててしまったからか、性格はちょっとだけ我が儘で気難しく怒りっぽいと思う。健康になったのはごく最近。学園入学も俺より一年遅らせた。

 俺に唯一、辛辣な言葉を投げかける女の子がイザベラだ。でもイザベラの言葉には愛情が乗っているから悪い気はしない。それに彼女は学園に入ってからだいぶ思慮深くなったと思う。同年代の友だちが出来たせいだろう。とても良いことだ。

「安心してくれ、可愛いイザベラ。俺は誰に対しても不誠実な真似はしていないよ。美しい物はみんなのモノ。美しい俺も、みんなのモノだから、ね」

 そう言えば、途轍もなく軽蔑した視線を向けられた。

「オリヴァー兄さま。そんなふわふわした、いい加減なこと言っていると、自分の言動を後悔する日が来ますわ」

 そんな不吉な予言めいた言葉を貰ったけれど、別に、俺の考えを無理に押し通そうとは思わない。
 俺は俺だし、イザベラにはイザベラの考えがある。それでいいと思う。



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