結び契る〜異世界転生した俺は番いを得る

風煉

文字の大きさ
25 / 41
第2話

パパ、格好悪いよ

しおりを挟む
その意図が伝わったのか、少し意外そうな顔をしていたので、平穏無事に終わっただけでも驚いているのかもしれない。
そんなことを考えていると、村外れの広場で武器を携えて待機していた狩猟チームの人たちが俺たちを出迎えてくれた。
集団の中にヒューイもいて、俺の姿を見ると駆け寄って抱きついてくる。

「ダイチ! 送り出しに来てくれたの?」
「あぁ、まぁね。 さっきゼンブルさんと話したよ」
「そうなの? どうだった?」
「ヒューイの言ってたこと、全部本当だったよ。 ありがとうな、おかげでゼンブルさんとも仲良くできそうだよ」

尻尾を振り顔を寄せて頬擦りしてくる柴犬に、俺の表情筋はデレデレになってしまう、すっかりこの子に惚れ込んでしまったのだから、番いとは末恐ろしい機構だ。
来ることは伝えていなかったので俺の登場に俄然やる気が湧いているのか、先ほどゼンブルさんとやりとりをしたこと、ヒューイが話していたことが真実だと告げれば、嬉しそうに笑っている。
さて、そろそろ離れないといけないな、何せお義父さんたちのみならず、この場にいる全員から生温かい眼差しを送っているので少し気恥ずかしいな。

「ヒューイ、行くぞ」
「あっ、はい! ダイチ、行ってくるね!」
「あぁ、行ってらっしゃいヒューイ、ゼンブルさん!」
「…………」
「あっーー、頑張ってくださいね、ゼンブルパパ! 獲物、楽しみに待ってますから!」

俺が言うよりも先に、準備を整えたゼンブルさんが声をかけてきたので、ヒューイが自分から離れていく。
ブンブンと手を振ってくれているので返しつつ、行ってらっしゃいと送り出す際にゼンブルさんへも声をかけた。
すると少しだけ残念そうな顔を浮かべたので、どうしたのかと思ったが、そういえば言われていたなと思いだし、改めてパパと呼んで送り出してあげる。
どうやら待っていたようで、顔こそ無表情だが背を向ければ尻尾が飛んでしまうかの如く回転しているのだから、ある意味で分かりやすかった。
見ているだけに留めているヒュペルお義父さんは呆れ、周囲の狩人たちも苦笑しながら森へと入っていくのを俺たちは見えなくなるまで見守る。

「……あっ」
「あいつ、自分で呼ばせておいて耐え切れないなら止めとけよ……。 ダイチ、しばらくそれ禁止な」
「そう、ですね……、ゼンブルパパ、カッコ悪りぃ」

だけどすぐに、俺はやり過ぎたと思い知らされた。
失意の森の樹木はそのほとんどが高さ10mはある巨大なもので、森に入れば空は見えないのだが、下から突き破らんばかりに赤い噴水が俺たちの視界に映る。
まだ村の側だったから良かったのだろうが、恐らくあれはゼンブルパパが鼻から噴射したのだろう、近くにいる村の人たちの声が聞こえてきた。
『ぎゃあぁぁぁっ!? ゼンブルさん!?』、『止血! 早く止血しろ!?』、『ダメだ、止まらねぇ!? どうなってんだよこの出血!?』、『父さん、そんなに嬉しかったんだね?』、『ヒューイくん、そんな冷静に見てる場合じゃないから!?』と、阿鼻叫喚の光景がありありと目に浮かぶ。
ヒュペルお義父さんは、なんだかこの展開をわかっていたようであまり驚いておらず、パパ呼びが絶大な効果すぎるので俺を嗜めた。
同意しつつも、素直に俺はゼンブルパパがあんまりにも格好がつかないなと本音が溢れてしまう。
結局この後、ゼンブルパパの鼻血でみんな血まみれになってしまい、狩りをするどころではなくなってしまった。
なんの騒ぎだと現れた爺様が妙に幸せそうな顔で鼻からドクドクと血を垂らし続けるゼンブルさんを見て、ゆっくりと俺へ視線を向けてくるのをそっと顔を逸らして誤魔化す。
何かを言うわけでもなく爺様はパパを治療し終えると、俺の首根っこを掴んでズルズルと引き摺って連行していき、こっぴどく叱られるハメになった。
何はともあれゼンブルさんとも仲良くなれそうだ、波乱万丈かもしれないけど……。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

【本編完結】転生したら、チートな僕が世界の男たちに溺愛される件

表示されませんでした
BL
ごく普通のサラリーマンだった織田悠真は、不慮の事故で命を落とし、ファンタジー世界の男爵家の三男ユウマとして生まれ変わる。 病弱だった前世のユウマとは違い、転生した彼は「創造魔法」というチート能力を手にしていた。 この魔法は、ありとあらゆるものを生み出す究極の力。 しかし、その力を使うたび、ユウマの体からは、男たちを狂おしいほどに惹きつける特殊なフェロモンが放出されるようになる。 ユウマの前に現れるのは、冷酷な魔王、忠実な騎士団長、天才魔法使い、ミステリアスな獣人族の王子、そして実の兄と弟。 強大な力と魅惑のフェロモンに翻弄されるユウマは、彼らの熱い視線と独占欲に囲まれ、愛と欲望が渦巻くハーレムの中心に立つことになる。 これは、転生した少年が、最強のチート能力と最強の愛を手に入れるまでの物語。 甘く、激しく、そして少しだけ危険な、ユウマのハーレム生活が今、始まる――。 本編完結しました。 続いて閑話などを書いているので良かったら引き続きお読みください

愛を知らない少年たちの番物語。

あゆみん
BL
親から愛されることなく育った不憫な三兄弟が異世界で番に待ち焦がれた獣たちから愛を注がれ、一途な愛に戸惑いながらも幸せになる物語。 *触れ合いシーンは★マークをつけます。

竜の生贄になった僕だけど、甘やかされて幸せすぎっ!【完結】

ぬこまる
BL
竜の獣人はスパダリの超絶イケメン!主人公は女の子と間違うほどの美少年。この物語は勘違いから始まるBLです。2人の視点が交互に読めてハラハラドキドキ!面白いと思います。ぜひご覧くださいませ。感想お待ちしております。

【完結】冷酷騎士団長を助けたら口移しでしか薬を飲まなくなりました

ざっしゅ
BL
異世界に転移してから一年、透(トオル)は、ゲームの知識を活かし、薬師としてのんびり暮らしていた。ある日、突然現れた洞窟を覗いてみると、そこにいたのは冷酷と噂される騎士団長・グレイド。毒に侵された彼を透は助けたが、その毒は、キスをしたり体を重ねないと完全に解毒できないらしい。 タイトルに※印がついている話はR描写が含まれています。

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 毎日19時に更新予定です。

獣人将軍のヒモ

kouta
BL
巻き込まれて異世界移転した高校生が異世界でお金持ちの獣人に飼われて幸せになるお話 ※ムーンライトノベルにも投稿しています

この世界は僕に甘すぎる 〜ちんまい僕(もふもふぬいぐるみ付き)が溺愛される物語〜

COCO
BL
「ミミルがいないの……?」 涙目でそうつぶやいた僕を見て、 騎士団も、魔法団も、王宮も──全員が本気を出した。 前世は政治家の家に生まれたけど、 愛されるどころか、身体目当ての大人ばかり。 最後はストーカーの担任に殺された。 でも今世では…… 「ルカは、僕らの宝物だよ」 目を覚ました僕は、 最強の父と美しい母に全力で愛されていた。 全員190cm超えの“男しかいない世界”で、 小柄で可愛い僕(とウサギのぬいぐるみ)は、今日も溺愛されてます。 魔法全属性持ち? 知識チート? でも一番すごいのは── 「ルカ様、可愛すぎて息ができません……!!」 これは、世界一ちんまい天使が、世界一愛されるお話。

処理中です...