『設定集、SS用』殺戮(逆ハー)エンドを迎えた悪役令嬢様も、二度目は一人に絞り込んだ模様です

人紀

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(SS)クリスティーナ、九歳

 こんにちわ!

 クリスはね、クリスティーナ!

 九歳!

 クリスって呼んでね!

 クリスはね、今、おじょ~様のお家にいるの。

 すんごく大きくて、立派で、初めて見た時目が飛び出るぐらいビックリした!

 前のお母さんのお勤め? 先もすっご~いって思ったけど、何だかそんなものも、ポンッっと吹っ飛んじゃうほど、大きいの。

 おじょ~様もとっても綺麗だし、優しいし、立派だし!

 お母さんが前のお勤め先のおじさんに虐められている時に助けてくれた!

 その時は本当に怖くって、ボロボロ泣いちゃったけど、そのおかげでおじょ~様に会えて、クリスとっても幸せだよ!



 だけど、クリスは知ってるの。



 御貴族様? は立派であればあるほど、お相手をする場合はお行儀良くしないといけないって。

 酒場によく来てたボブおじさんは”ちょっと”お行儀良くしてなかっただけで、ぶん殴られて片目を潰されたんだって!

 怖い!

 周りのおじさん達は”まおとこ”をしたとか何とか言っていた。

 ”まおとこ”が何なのかよく分からないけど、お行儀良くしないといけないのは間違いないんだよぉ。

 だけど、クリスは大丈夫!

 ボブおじさんから御貴族様に会った時のお行儀良くする方法を教わっているもの。

 だから、早速実践する事にしたの。

 朝に見かけたお嬢様に、お行儀良く朝の挨拶をしたよ!



「おじょ~様!

 今日も色女っぷりに磨きがかかってやすねぇ~」



 凄いでしょう!

 ボブおじさんからは”色男”と教わっていたけど、お嬢様は女の子だから、”色女”って言ったの。

 クリスは応用おーよーが利くのよ!

 だけど、優しいおじょ~様はクリスがお行儀良くするのを好まないのか、クリスの応用おーよー力自慢まで聞き終えた後、苦いお薬を飲んだ時のような顔で、「クリスは”取りあえず”、普段通りで良いのよ」と言ってくれたの。



 普段通りのクリスが良いと言ってくれるなんて、本当におじょ~様は優しい!



 今までは大体、「静かにしてろ」とか「余計な事を喋るな」とか「もうやめて!」とか言われる事が多かったから、クリス、感動しちゃった。

 だから、おじょ~様に抱きついて、「おじょ~様、好き!」って言っちゃった。

 おじょ~様は「フフフ、わたくしも好きよ」と笑いながら、クリスの頭を撫でてくれたよ!



 でもむろん、優しいおじょ~様はそう言ってくれるけど、人によっては態度を変えなくてはならない事を、クリス知っているもん。



 ボブおじさんも、普段は酒場で舎弟しゃてーさん相手にふんぞり返っていたの。

 何でも、他のおじさんが言うには、ボブおじさんみたいな人をお山の大将っていうんだって。

 お山を支配しているなんて、凄い!

 そんなボブおじさんだけど、奥さんが迎えに来ると、「ごめんなさい、ごめんなさい」とちっちゃくなってたんだよ。

 で、クリスにこっそり、「これが”しょせいじゅつ”だ」ってニヤリと教えてくれた。

 なんでも、面倒な相手を黙らせる高等こーとー技術なんだって!

 凄いよね!

 クリス感動しちゃった!

 だから、奥さんに、「ボブおじさん凄いね!」ってそのことを褒めたら、何故かボブおじさん、殴られてた。



 何でだろう?



 それはともかく、相手によって態度を変える事はとても重要なの。

 おじょ~様は普段通りが良いって事だから、そのままで。

 あと、ミーナさんも優しいし言う事を聞いてくれるし、なんだか弱そうだからそのままで良いとして、おじょ~様のお家の中で絶対に丁寧に接しないといけない人がいるの。



 それは侍女長じじょちょーさんなの。



 普段から、ビシッ! っと言うか、キッ! というかきつい顔をしているお婆ちゃんで、お婆ちゃんが前にいると何となく皆、ビクビクしているの。

 お母さんなんて、しょっちゅう怒られているみたいで、「たった十枚皿を割ったくらいで」とか「男の人にお仕事手伝って貰っただけなのに」とか「モテたことが無いから嫉妬してるのよ」とかいつもブツブツ言っているの。

 よく分からないけど、怖い人ってのは間違いないの。

 多分、このお屋敷の中では、おじょ~様の次に偉いのだと思う。



 だからある日、侍女長じじょちょーさんに呼び出しを受けた時なんて、クリスしっかりと”しょせいじゅつ”をしたの。

「ごめんなさい! ごめんなさい!

 お山の大将、ごめんなさい!」

 ”しょせいじゅつ”が聞いたのか侍女長じじょちょーさんは、口をポカリと開けていたよ。

 そして、「何が、ごめんなさいなの? ……あと、お山の大将って?」と聞いてきたの。

 だから、クリスはボブおじさんのお話をして、クリスの”しょせいじゅつ”自慢をしてあげたの。

「立派だね」「凄いね」って言ってくれると思ったんだけど、侍女長じじょちょーさんは頭痛あたまいたを堪えるように耳の上の方を押さえると、教えてくれたの。

「クリスティーナ、それはボブさんという御方の立場では良いけれど、あなたのような女の子には不適切な対応なのよ」

 何でも、”しょせいじゅつ”は立場や性別によってやり方が変わってくるんだって!

 知らなかった!

 ボブおじさんの様なおじさんのやり方を、クリスのような女の子が真似をすると、”しょせいじゅつ”は失敗してしまうと、侍女長じじょちょーさんは丁寧に教えてくれたよ。

「その辺りは、おいおい教えていくから、取りあえずは普段通り話しなさい」

と言ってくれる侍女長じじょちょーさんに、クリス、感動しちゃった。

 おじょ~様だけでなく、侍女長じじょちょーさんまで、そのままで良いよって言ってくれるとは思わなかったもん。

 ここの皆は凄い!

 すっごく優しい!

 だから、クリス、笑顔で言ったよ。

「うん!

 クリス、普段通りにする!

 ちゃんといつも通りにする!」

 だけど、侍女長じじょちょーさんは、何故か困った様な顔になったの。

 何でだろう?

 不思議に思っていると、侍女長じじょちょーさんはハッとした顔でクリスを見てきたの。

「クリスティーナ、あなた、お嬢様にまでお山の大将とか言ってないわよね!?」

「うん?

 お嬢様はお山の大将って感じじゃ無いから言ってないよ」

「え?

 わたしはそんな感じなの?」

 侍女長じじょちょーさんは何故か、衝撃を受けた様な顔をしたの。

 恐れ多いおそれおーかったのかな?

 だから、クリスが一生懸命、「山を支配してるなんて、凄い!」って言ってあげたら、侍女長じじょちょーさんは「もう良いのよ、ありがとう」ってお礼を言ってくれたの。



 そこから、侍女長じじょちょーさんはクリスにこんな事を言ったの。

「クリスティーナ、お嬢様はとてもお忙しくされていらっしゃるでしょ。

 そんな時は、あまり話しかけてはいけません。

 その代わり、お休みの時はお疲れでなければ側にいて差し上げて。

 お行儀とかは、とりあえず後回しでいいから」

 なんでも、お仕事をしているおじょ~様は、周りが大人の人しかいないから、年が近いクリスがいてあげると、落ち着くんだって。

 よく分かんないけど、それがおじょ~様の為になるなら、クリス、頑張る!

 クリス、酒場のおばちゃんにも接待が上手って誉められてたもん!

 でも、そのことを侍女長じじょちょーさんに一生懸命話したら、何故か心配そうな顔で、「普段通りで良いのよ」と念を押されたの。

 頑張りすぎて、クリスが疲れちゃうのを心配してるのかな?

 侍女長じじょちょーさん、優しい!

 お母さんは怖いとか、酷いとか言っていたけど、クリスの話もちゃんと聞いてくれるし、優しい人だと思うの。

 たぶん、お母さんがちゃんと思ってることを伝えていないのが悪いんじゃないかな?

 だから、クリスが代わりに言って上げたの。

 お母さんが、十枚皿を割ったぐらいで怒らないで欲しいって言ってたことと、男の人に手伝って貰うことを許して欲しいって言ってたこと、あと、モテた事がないからって、”しっと”? しないでって言ってた事を丁寧てーねーにお話ししたの。

 すると、やっぱり優しい侍女長じじょちょーさんは、ニッコリしながら、後でお母さんと話し合うって言ってくれたよ。

 良かったね、お母さん!
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