最後は笑顔で

人紀

文字の大きさ
2 / 8

告白

しおりを挟む
 ある日、いつものように深夜の区役所で練習していた時の事だ。
 突然、元彼にストーカーされているとマサミに告白された。
 一踊りして軽い疲労を感じながら床に座り、ソウルからヒップホップ、ハウスやエレクトロまで雑多に流れる曲の中からお気に入りの音を追っている時に、なんてこともないように言われて、俺は驚いた。
 思わず後ろを振り返った俺の腕を引っ張り、今日は来てないみたいとマサミは言った。
 実際、周りには顔なじみのダンサーばかりで、この中に知らない奴が紛れ込むのは難しく感じた。
 俺は心の動揺を隠すようにペットボトルから水を一口飲みながら、チラリと横を見た。
 ビルのガラス越しにマサミの表情を探ったが、普段と特に変わった様子は無かった。

 そいつは高校時代の同級生で、東京の有名大学の医大生だったらしい。

 名前はヤダガミと言って、医大に合格した暁にマサミを捨てたそうだ。

 しかし、よく分からないが、奴は医大を辞めて地元に戻り、マサミによりを戻そうと言ってきたそうだ。

 ふざけた奴だ。

 当然マサミは断った。
 そして、俺と付合っている事も告げたとのことだった。

 それから、奴はストーカーになった。

「プライドが凄く高い人なんだよ。
 独占欲が強く、バカにされることを何よりも嫌ってた」
と、マサミは奴の事をそう評していた。
「だから、大学も辞めちゃったんじゃないかな」
と何故かマサミは悲しそうに呟いた。
「シメてやるよ!
 ストリートの連中に声をかけてさ!
 ボコボコにして引きこもりにしてやるよ!」
 俺は興奮気味に叫んだ。
 周りのダンス仲間達がその声に気付き、なんだなんだといった視線を向けてきた。
 マサミは焦ったように言う。
「ダメだって!
 一緒にいてくれるだけでいいって!
 そしたら、そのうち諦めるから」
 スマホで連絡しようとする俺をマサミは必死で止めた。
 その時、俺は釈然としなかったが、マサミの薄茶色の涙目を見たら引っ込むしかなかった。

 次の日から、俺はマサミの大学やバイト、練習とかの送り向かいをするようになった。

 初めのうちは俺も気合いが入っていた。
 マサミを守るのは俺だと、ナイトになった気でいた。
 マサミといる時、常に周りを警戒していた。
 ちょっとやり過ぎとマサミは苦笑いしていたが、それでもうれしそうだった。

 現れたら捕まえて、マサミの前に引きずり出す。
 そして、懲らしめてやるんだと妄想していた。

 しかし、ヤダガミは俺の前に現れなかった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

離婚すると夫に告げる

tartan321
恋愛
タイトル通りです

つまらない妃と呼ばれた日

柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。 舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。 さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。 リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。 ――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。

【完結】仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが

ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。 定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

元婚約者からの嫌がらせでわたくしと結婚させられた彼が、ざまぁしたら優しくなりました。ですが新婚時代に受けた扱いを忘れてはおりませんよ?

3333(トリささみ)
恋愛
貴族令嬢だが自他ともに認める醜女のマルフィナは、あるとき王命により結婚することになった。 相手は王女エンジェに婚約破棄をされたことで有名な、若き公爵テオバルト。 あまりにも不釣り合いなその結婚は、エンジェによるテオバルトへの嫌がらせだった。 それを知ったマルフィナはテオバルトに同情し、少しでも彼が報われるよう努力する。 だがテオバルトはそんなマルフィナを、徹底的に冷たくあしらった。 その後あるキッカケで美しくなったマルフィナによりエンジェは自滅。 その日からテオバルトは手のひらを返したように優しくなる。 だがマルフィナが新婚時代に受けた仕打ちを、忘れることはなかった。

10年前に戻れたら…

かのん
恋愛
10年前にあなたから大切な人を奪った

最後に一つだけ。あなたの未来を壊す方法を教えてあげる

椿谷あずる
恋愛
婚約者カインの口から、一方的に別れを告げられたルーミア。 その隣では、彼が庇う女、アメリが怯える素振りを見せながら、こっそりと勝者の微笑みを浮かべていた。 ──ああ、なるほど。私は、最初から負ける役だったのね。 全てを悟ったルーミアは、静かに微笑み、淡々と婚約破棄を受け入れる。 だが、その背中を向ける間際、彼女はふと立ち止まり、振り返った。 「……ねえ、最後に一つだけ。教えてあげるわ」 その一言が、すべての運命を覆すとも知らずに。 裏切られた彼女は、微笑みながらすべてを奪い返す──これは、華麗なる逆転劇の始まり。

「地味ブス」と捨てられた私、文化祭の大型スクリーンで王子様の裏の顔を全校生に配信します

スカッと文庫
恋愛
「お前みたいな地味女、引き立て役にもならないんだよ」 眼鏡にボサボサ頭の特待生・澪(みお)は、全校生徒が見守る中、恋人だった学園の王子・ハルトから冷酷に捨てられた。 隣には、可憐な微笑みを浮かべる転校生・エマ。 エマの自作自演により「いじめの犯人」という濡れ衣まで着せられ、学園中から蔑まれる澪。 しかし、彼女を嘲笑う者たちはまだ知らない。 彼女が眼鏡の奥に、誰もが平伏す「真実の美貌」と、学園さえも支配できる「最強の背景」を隠していることを――。 「……ねぇ、文化祭、最高のステージにしてあげる」 裏切りへのカウントダウンが今、始まる。 スクリーンの裏側を暴き、傲慢な王子と偽りのヒロインを奈落へ突き落とす、痛快・学園下剋上ファンタジー!

処理中です...