年下の彼氏

人紀

文字の大きさ
4 / 4

その4

しおりを挟む
 遠くに見える信号が、青に変わった。
 でも、全く進む気配がない。
 何か事故でもあったのかもしれない。
「僕、時々怖いんだ。
 もし、僕がこの顔じゃなくなったら……
 老いて、顔に魅力が無くなったら僕の事を、誰も相手にしてくれないのではって」

 わたしは少し驚いた。

 何も悩みがないように見えて、そんな事で悩んでいたんだ。
 他人にとっては、贅沢な悩みだと思うかもしれないが、顔の事ばかり言われ続けると、そんな風に感じてしまうのかもしれない。
「そうね、確かにリョウはカッコイイから付き合ったって部分はあるよ」
「やっぱりそうなんだ」
ってリョウは悲しそうに言った。
 そんなリョウの頭をなでながら、言葉を続ける。
「でも、それだけじゃなかったけどね。
 リョウって優しいじゃない。
 それらを含めて、付き合ってもいいかなって思ったの」
 リョウは何も言わず、話を聞いている。
「でも、カッコイイだけしかないって思うんだったら、それ以外の物を身につけなさいよ。
 内面的なものを磨くっていうのも必要だし、何か特技を作るとか、知識であってもいいし。
 ただ、好かれたいって思っているだけじゃ誰も好きになってくれたり、敬意を払ってくれないわよ。
 ほら、動き出したから」
 わたしは左膝をちょこっと上げて、起き上がるように促した。
 フットサイドブレーキを踏んで解除し、ギアをドライブモードにして車を前に進めた。
 しばらくすると、路肩にハザードランプを点滅させた車が二台並んで止まっていた。
 前の車の左後部にぶつけられた痕があり、数人の男の人が外に出てなにやら話をしている。

 そこを超えると、渋滞していたのが嘘のように、車の流れがスムーズになった。

 わたしはリョウを一瞥した。
 なにやら色々考えているようだった。
 そして、「僕ももっと他の面で好きになってもらえるようにするよ!」と鼻息荒く言った。
 わたしがまず手始めに、車の免許を頑張って取りなさいって言ったら、また、「クミが指導員やってよ」って言い始め、わたしは苦笑いした。

 その時、ふと今まで疑問に思っていた事を思い出す。

「そういえば、リョウは何でわたしの事が好きになったの?」
「え? だって、クミって頼りになりそうだから」
と無邪気に返され、さらに苦笑いをした。

 やっぱり、リョウはお姉さんが欲しかったんだ。

 などと考えていると「あと、顔も可愛いし」と不意打ちされ、赤面してしまった。
 ひょっとして、これは恋愛のテクニックなのかなと思いつつ、リョウを見ると無邪気に笑っていた。

 そんな、笑顔にわたしも思わず微笑んだ。

 そして、なんやかんや言って、わたしもしっかりリョウの事が好きなんだと、自覚した。
 でも、リョウがちゃんとした大人になったら、わたしは捨てられるのかな?
って少し寂しい気持ちになった。

 でも、すぐに思い直した。

 わたしも、もっと、リョウに好かれるように女性を磨かないと、と思った。
「あ、一つだけ特技があった!」
 リョウが不意に声を上げた。
「え? なに?」と訊ねると、
「僕、キス凄い上手いじゃん!」
って、うれしそうに言い出した。

 わたしは、始めキョトンとして、そして、思わず大笑いしてしまった。

「えぇ~!
 上手いじゃん!」
と不満げな声を上げたリョウを一瞥して、今度はハンドルを右手で叩きながら大笑いしてしまった。
「ちょ、上手いよ!
 こうでしょ」
と、運転中にもかかわらず、リョウはわたしの顔を押さえて、キスしようとした。
「あぶ、危ないって!」
 わたしは焦りながらリョウを離そうとしたが、リョウは強引にキスしようとする。

 車がぶれる。

「やめ、やめなさい!」
 わたしは思いっきりリョウをひっぱたいた。
しおりを挟む

この作品は感想を受け付けておりません。

あなたにおすすめの小説

身体の繋がりしかない関係

詩織
恋愛
会社の飲み会の帰り、たまたま同じ帰りが方向だった3つ年下の後輩。 その後勢いで身体の関係になった。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

甘い束縛

はるきりょう
恋愛
今日こそは言う。そう心に決め、伊達優菜は拳を握りしめた。私には時間がないのだと。もう、気づけば、歳は27を数えるほどになっていた。人並みに結婚し、子どもを産みたい。それを思えば、「若い」なんて言葉はもうすぐ使えなくなる。このあたりが潮時だった。 ※小説家なろうサイト様にも載せています。

嘘をつく唇に優しいキスを

松本ユミ
恋愛
いつだって私は本音を隠して嘘をつくーーー。 桜井麻里奈は優しい同期の新庄湊に恋をした。 だけど、湊には学生時代から付き合っている彼女がいることを知りショックを受ける。 麻里奈はこの恋心が叶わないなら自分の気持ちに嘘をつくからせめて同期として隣で笑い合うことだけは許してほしいと密かに思っていた。 そんなある日、湊が『結婚する』という話を聞いてしまい……。

つかまえた 〜ヤンデレからは逃げられない〜

りん
恋愛
狩谷和兎には、三年前に別れた恋人がいる。

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

迷子を助けたら生徒会長の婚約者兼女の子のパパになったけど別れたはずの彼女もなぜか近づいてくる

九戸政景
恋愛
新年に初詣に来た父川冬矢は、迷子になっていた頼母木茉莉を助け、従姉妹の田母神真夏と知り合う。その後、真夏と再会した冬矢は真夏の婚約者兼茉莉の父親になってほしいと頼まれる。 ※こちらは、カクヨムやエブリスタでも公開している作品です。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

処理中です...