彼女が消えたら

白鳥みすず

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3章

身代わり

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結局その後はまるで忠犬かのように大人しく店の前で待っていた彼を無視して帰った。
僕のやや後ろから話しかけてきて、家はどの辺りなのか、休日の予定はどうなっているのかとプライベートな話ばかり持ち掛けてきた。そんな個人情報を何でわざわざ仲良くもない相手に話さないといけないんだ。
僕は返事すらしてなかったが、彼の姿をちらりと見ると嬉しそうににこにこしていてやはり変なやつだと思った。
…待てよ、このまま帰ったら家まで着いてきて、休日まで家に押しかけられるようになるんじゃないのか。
嫌な汗が頬を伝った。なんだその悪夢は。
夢なら覚めろ、という状況だ。
ぴたりと足を止める。
冗談じゃない。休日まで、彼の相手をするほど僕は暇じゃない。
僕にとって自分の時間は何より大切なんだ。
一人の時間の崩壊を感じた。
「どこまで着いてくるわけ」
「うーん...何処まででも?」
「...。」
冗談に聞こえない。この1週間を振り返ると本気でやりかねないと思ってしまう。
「帰って、一人がいいから」
短く告げると歩調を早める。
「本当に?」
「本当に、心底、心から、帰れ」
僕は彼を睨みながら、言葉を区切って強調した。
段々身体が大きい小学生を相手にしている気分になってきた。
今時の小学生だってこれだけ言ったら引き下がるだろう。
この男は言葉が通じなさすぎる。
「本当に?」
彼は再び同じ言葉を繰り返した。
その顔は笑っていなくて、僕に純粋に尋ねてきていた。
なんだ、こいつ。
人の言うことを全く聞かないし、強引に押し進めてくる。
古本屋での彼の姿は幻だったに違いない。
その時、彼のポケットから音が鳴り響いた。
黒のスマートフォンを取り出すと彼は画面を見つめた。
「分かった、じゃあな」
彼はやけにあっさり納得したように頷くと僕に手を振り去っていった。
逆に面食らって僕は彼の後ろ姿を間抜けに見送った。
何だったんだ、本当に...。
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