異世界領地経営記

ITSUKI

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第9話 最近、うちのゴブリン達がゴブリンを見るような視線で俺を睨め付ける件

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この世界にやってきて91日目。
ルーティアの説明である程度この世界について把握した。
今日から本格的にこの世界へコンタクトを取っていく……つもりだったのだが。

当初の予定では、ゴブファームで大量生産した食料を見返りに、戦力のある周辺諸国に一大生産地として戦力を援助してもらおうと考えていた。

しかし、目立つ格好で物売りは悪人ホイホイになるだろうと却下ボツ。匠の技で仕上げた運搬用荷台ブキはお蔵入り。
この世界の駆け出し行商人は、劣化版『ストレージ』のアイテム袋を担ぎ、その身一つで移動するのだとか。

意見を出し合った結果、俺は異世界から部屋ごと転移した元商人の転移者ということに。

転移してきた際にテイマーとサモナーのスキルを取得。
商売の予定でたまたま大量に食料や異世界の種を所持していた。

テイムと召喚サモンでゴブリンを使役し、森の中を開拓し自給自足の生活を開始。

ルーティアとカノンは不作で村から逃げ出した旅人。

手持ちの食糧がつき進退窮まっていたが、たまたま出会った俺が宿と食事を提供した。
一命を取り留めた彼女らは、その恩を返すために暫く俺の手伝いと護衛を申し出た。

暮らしぶりも悪くなく、そのまま開拓地に腰を据えようか検討中。

近くに危険な魔物の気配もないため、そのまま一緒に暮らして森を開拓じている。

留守にしてコアが壊されたら一巻の終わりのダンジョン。
外に出るにしてもそうそう壊されることがない程度の強化は必要とのこと。

そんな体でしばらくはこの場に居座り、SPを貯めてダンジョンを強化することに決まった。


「というわけで、まずはお二人の住居を作っていきたいと思います」

「はいっ!(……コクリ)」

「というわけで、はいこれ」

「えーっと、これはなんでしょうか?」

「電動チェーンソー」

お手軽充電タイプ。お値段なんと3万SP。

エンジンやモーター、目立つなと注意されたばっかりだって?
充電タイプは俺の部屋うちがなきゃ使えないからいーんだよ。……多分!

いざとなったら目の前にあるダンジョン跡から出てきた遺物だって言い張るし!

ダンジョンを外に広げるにあたって、別の洞窟を作れることも確認している。

近くに充電できる洞窟環境を作ってその奥は余剰SPを作って広い迷路を作っていく予定だ。

説明書きによると、電動はガソリンタイプより性能が低いらしい。
それでも小さめの木なら切り倒せるとの事。

ボタン一つでオンオフできるので詳しくない俺でもなんとか操作できそうだ。

追加で3台ばかし購入して、試しに電源を入れたところ動いたので早速作業を始める。

―――ウイイイイイイイイイイイイイイイイィィィィィィィィィィィィィィィン

静かな森に聞きなれない音機械音がこだまする。

流石は職人のゴブさんたちだ。
説明書を片手に何とか使い方を説明するとすぐさま数本切り倒した。
俺の出番は一切ない(キリッ

「そういえば、智様の使役するゴブリンって本当にゴブリンですか?」

しらんがな。

「戦闘力はゴブリン……よりちょっと強いくらい。脅威ではない」

さいですか。

「多分ゴブリンだと思う。ゴブリンしか召喚してないし」

(多分……なんですね)

(……多分)

そりゃあ、あれだけ職人のような動きを見せつけられればねぇ。
そうこうしているうちに樹齢数十年もありそうな木が、新たに1本切り倒された

充電が切れたのでそこからは伐採以外の作業を頼んだが、かなり速いペースで簡易な小屋が建つのではないだろうか。
ゴブたちは、新しく出した(多分)本格的な大工道具できれいな丸太に成形している。

ダンジョンの範囲は外にも広げられ、俺は伐採した枝や丸太・開墾で出土した石や岩をタップ1つで回収していく。

石や岩、丸太がひょいひょい消えていく様子を見てルーティアが

「これが……ダンジョンマスターの力、ですか」

と漏らしていたが、半分以上はゴブたちの力だ。

外にある土地をダンジョン化しても、洞窟と違い操作一つでなんでもカスタマイズできるわけじゃなかった。

土の下に埋まっている石や岩、生えている木や草は回収できなかったし、ダンジョンを外に広げられる範囲は俺のいる周囲1m程に限られる。

ダンジョン化できる範囲は歩くだけで増やせるが、そこにある木や石など邪魔なものをゴブたちが掘り起こしインベントリに回収しないと、ダンジョンの様に使えない。

デメリットばかりに思える地上のダンジョン化だが、SPを使わずにダンジョン化できるメリットもある。

手間はかかるが整地までできれば洞窟と同様カスタマイズできるようになるので、開拓もそう難しい事ではない。

とりあえず、急いで二人が暮らす建物を完成させるのが第一だ。

「……何か?」

「いや、なんでもない」

6畳間、布団が一つ、男が一人に美少女2人。いろんな意味でヤバイ。

男のダンジョンマスターには女性が、女性のダンジョンマスターには男性が選ばれる。もちろん、見た目がいいのも前提で。

つまりはそういう事を織り込み済みらしいが、こちとら今まで塾に、朝夕課外に、シケ対にとここ6年ほぼ勉強漬け。

勿論ベッドの下のマストアイテムは所持しているしイメージトレーニングもばっちりだが、年頃の女の子にどう接したらいいのかわ か ら な い。

かといって、ゴブたちみたいに外に追い出すのも忍びないし、俺が外で寝るのも無理。
以前試したが洞窟の中ですらまともに眠れなかった。

テントのような簡易施設でもいいから今日中に二人の住処を仕上げてしまいたいのだ。

「ギアッ(さっさと手ぇ出せばいいのに)」

「ギッ(言ってやるな)」

「ギギッギギィ(リーダーがあれじゃあ、私たちも子作りできないじゃない)」

「ギィギィ(ポリシーに反するが少し作業を遅らせるか)」

「ギッ(そうだな)」



初日は順調そうに見えた開拓だが、翌日以降農作業に相当数のゴブがとられ彼女らの住処はなかなか完成しなかった。

太陽が緑に見えるようになってそろそろ死ぬんじゃね?と思った頃、一気にペースが上がりようやく完成。

しばらくの間、何故かゴブたちの態度がやたら悪くなったんだけど、解せぬ。
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