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第8話 伏線っぽいアレ。でもあまりに早いアレは大体四天王の中でも最弱の(ウワナニスルヤメロー
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『この世界に潜む同胞へ。
君が住んでいた世界の空は青かったか?
君が住んでいるこの世界の空は本当に青いのか?
金になると命を狙われ、異端として迫害される。
無慈悲にも命を落としてきた同胞も少なくない。
『主神』の意図によって、この世界の礎になっている者も多い。
この世界に潜む同胞よ。
元の世界を望むなら、平穏な生活を望むなら、南大陸『アイスレア』に来てほしい。
元の世界を望むなら、私たちが協力しよう。
平穏に生きたいと願うのなら、我々が同胞諸君を保護しよう。
我々は、この世界に連れてこられた『主神』に抗う者。
ただ、あるがまま、求めるがまま。
アイスレアの魔王』
なんだ、このメール?
主神の意図?アイスレアの魔王?
「……様?サトル様?」
おっと、話の途中だった。
「あぁ、ごめん。続きをお願い」
「わかりました。このダンジョンを狙うダンジョンマスターですが、……どうしてダンジョンを狙うのか、その目的はよくわかっておりません」
「目的?」
「はい。ダンジョンから出ない方、街で暮らす方、案内役の私たちや市民の方々もですが、その根源は『生きる』です」
うん?そりゃそうだ。
死にたくないから学生生活(アタリマエ)に溶け込むし、その生活をより良いものにしようとする。
こうやってダンジョンマスターにな(環境が変わ)っても、自分なりに動いてよりよい生活を手に入れつつある。
……いや、有能すぎるゴブリンたちのおかげなんだけどさ。
「ダンジョンコアの破壊を目的とするダンジョンマスターの共通点としてわかっているのは一つだけ。『どんなことをしてでもダンジョンコアの破壊を目指す』だけ。……己の命も顧みずに」
+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
始めはか弱い存在だった。
それは小動物に喰われては生き返り、喰われては生き返りを繰り返していた。
それにとって死は些細な事だった。
痛みはなく、倦怠感もなく、苦しさもない。
草原に駆け回っていたら急に眠くなるような感覚。
気が付けばまた違う場所に生まれ変わり、その四つ足で世界を回る。
その繰り返し。
ある時、ある場所。
それは新しく生まれ変わった世界を走り回っていた。
ごつごつの岩肌。背の低い木。
あまり見たことのないわくわくする場所だが、柔らかくておいしい草が少ないのが残念。
外が暗くなったので、他の生き物に見つからないように洞穴に隠れる。
痛くはないが、わざわざ死んでやるつもりもない。
と、洞穴には先客がいたらしい。
いつもなら、そっと外へ逃げるところだが、パチパチというなにか赤く輝いているものがあったので、なんだろうと思って近づいてみた。
「おや、珍しい。お客さんかな?」
近くにいた大きな何かが吠えて近づく。
死んで違う景色に変わるんだろうな、そのパチパチを眺めながらそう思ってしゃがみこんだ。
大きな何かはフニフニと動くだけで私の景色は一向に変わらない。
「初めて見る生き物だな。それにとっても人懐っこい」
この大きな生き物はいろいろな鳴き声があるらしい。
「ふふっ、この世界にはいい加減厭き厭きしていたが、私の知らない生き物もいるじゃないか」
大きな何かが吠えるが、その鳴き声は怖いと思わなかった。
と、目の前が少しずつ暗くなっていく。
この大きな生き物、少しずつ私を溶かしていたのだろうか。
でも、こんな死に方なら悪くない。
目が覚めると、目の前には赤く輝くパチパチがあった。
どうやら食べられたのではなく眠ってしまっただけの様だ。
「やぁ、お目覚めかな?」
おおきななにかは相変わらずすぐ横にいた。
「ごめんだけど、少し遠くへ行ってもらえるかな?こんな世界に引っ張ってきた神様(クソヤロウ)に一泡吹かせてやりたくてさ」
昨日と違って少し怖い大きな何か。
死ぬ前の怖さに似ている。
それでもいい。
2回も輝くパチパチを見られたから。
最後の景色にと、輝くパチパチをじっと見つめ続ける。
「………………………………はぁ~~~。ったくもう。この程度でやめるつもりじゃなかったんだけどなぁ。おーい、おちびちゃん。誰も知らないだろうけどさ、あんたは世界の英雄だよ」
怖い感じがなくなった。
輝くパチパチじゃなくて大きな何かの方を見上げる。
「おちびっちゃん。気に入ったんならダンジョンコア(それ)あげるよ。私にはもう必要(いら)ないし」
大きな何かが吠える。
直後、私に何かが入ってくる感覚。
そして、目の前のパチパチがふっと消える。
「へぇー」
大きな何かが嬉しそうに吠える。
「うん、すごいすごい。おちびちゃん、それはもう君の力だ。私は『ダンジョンコアへの命令・権限一切の破棄をここに宣言する』。さぁ、好きなようにその力を使えばいい。私も……うん。これは予想外だったけど、結果オーライだ」
大きな何か……この世界の厄災が嬉しそうに頭をなでてくる。
「ありがとう、おちびちゃん」
そう言って彼女は―――世界の厄災は―――姿を消した。
+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
君が住んでいた世界の空は青かったか?
君が住んでいるこの世界の空は本当に青いのか?
金になると命を狙われ、異端として迫害される。
無慈悲にも命を落としてきた同胞も少なくない。
『主神』の意図によって、この世界の礎になっている者も多い。
この世界に潜む同胞よ。
元の世界を望むなら、平穏な生活を望むなら、南大陸『アイスレア』に来てほしい。
元の世界を望むなら、私たちが協力しよう。
平穏に生きたいと願うのなら、我々が同胞諸君を保護しよう。
我々は、この世界に連れてこられた『主神』に抗う者。
ただ、あるがまま、求めるがまま。
アイスレアの魔王』
なんだ、このメール?
主神の意図?アイスレアの魔王?
「……様?サトル様?」
おっと、話の途中だった。
「あぁ、ごめん。続きをお願い」
「わかりました。このダンジョンを狙うダンジョンマスターですが、……どうしてダンジョンを狙うのか、その目的はよくわかっておりません」
「目的?」
「はい。ダンジョンから出ない方、街で暮らす方、案内役の私たちや市民の方々もですが、その根源は『生きる』です」
うん?そりゃそうだ。
死にたくないから学生生活(アタリマエ)に溶け込むし、その生活をより良いものにしようとする。
こうやってダンジョンマスターにな(環境が変わ)っても、自分なりに動いてよりよい生活を手に入れつつある。
……いや、有能すぎるゴブリンたちのおかげなんだけどさ。
「ダンジョンコアの破壊を目的とするダンジョンマスターの共通点としてわかっているのは一つだけ。『どんなことをしてでもダンジョンコアの破壊を目指す』だけ。……己の命も顧みずに」
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始めはか弱い存在だった。
それは小動物に喰われては生き返り、喰われては生き返りを繰り返していた。
それにとって死は些細な事だった。
痛みはなく、倦怠感もなく、苦しさもない。
草原に駆け回っていたら急に眠くなるような感覚。
気が付けばまた違う場所に生まれ変わり、その四つ足で世界を回る。
その繰り返し。
ある時、ある場所。
それは新しく生まれ変わった世界を走り回っていた。
ごつごつの岩肌。背の低い木。
あまり見たことのないわくわくする場所だが、柔らかくておいしい草が少ないのが残念。
外が暗くなったので、他の生き物に見つからないように洞穴に隠れる。
痛くはないが、わざわざ死んでやるつもりもない。
と、洞穴には先客がいたらしい。
いつもなら、そっと外へ逃げるところだが、パチパチというなにか赤く輝いているものがあったので、なんだろうと思って近づいてみた。
「おや、珍しい。お客さんかな?」
近くにいた大きな何かが吠えて近づく。
死んで違う景色に変わるんだろうな、そのパチパチを眺めながらそう思ってしゃがみこんだ。
大きな何かはフニフニと動くだけで私の景色は一向に変わらない。
「初めて見る生き物だな。それにとっても人懐っこい」
この大きな生き物はいろいろな鳴き声があるらしい。
「ふふっ、この世界にはいい加減厭き厭きしていたが、私の知らない生き物もいるじゃないか」
大きな何かが吠えるが、その鳴き声は怖いと思わなかった。
と、目の前が少しずつ暗くなっていく。
この大きな生き物、少しずつ私を溶かしていたのだろうか。
でも、こんな死に方なら悪くない。
目が覚めると、目の前には赤く輝くパチパチがあった。
どうやら食べられたのではなく眠ってしまっただけの様だ。
「やぁ、お目覚めかな?」
おおきななにかは相変わらずすぐ横にいた。
「ごめんだけど、少し遠くへ行ってもらえるかな?こんな世界に引っ張ってきた神様(クソヤロウ)に一泡吹かせてやりたくてさ」
昨日と違って少し怖い大きな何か。
死ぬ前の怖さに似ている。
それでもいい。
2回も輝くパチパチを見られたから。
最後の景色にと、輝くパチパチをじっと見つめ続ける。
「………………………………はぁ~~~。ったくもう。この程度でやめるつもりじゃなかったんだけどなぁ。おーい、おちびちゃん。誰も知らないだろうけどさ、あんたは世界の英雄だよ」
怖い感じがなくなった。
輝くパチパチじゃなくて大きな何かの方を見上げる。
「おちびっちゃん。気に入ったんならダンジョンコア(それ)あげるよ。私にはもう必要(いら)ないし」
大きな何かが吠える。
直後、私に何かが入ってくる感覚。
そして、目の前のパチパチがふっと消える。
「へぇー」
大きな何かが嬉しそうに吠える。
「うん、すごいすごい。おちびちゃん、それはもう君の力だ。私は『ダンジョンコアへの命令・権限一切の破棄をここに宣言する』。さぁ、好きなようにその力を使えばいい。私も……うん。これは予想外だったけど、結果オーライだ」
大きな何か……この世界の厄災が嬉しそうに頭をなでてくる。
「ありがとう、おちびちゃん」
そう言って彼女は―――世界の厄災は―――姿を消した。
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