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プロローグ
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この時間になると山脈から吹き下ろす風の冷たさが増すようになった。
日の位置から察するに夕方とよべる今の時刻はおそらくはまだ3時過ぎ。
日が傾くのも早くなったものだ。
収穫祭を終えた今、領民は十分な蓄えに安心している。
少し前までは不安しかなかった冬籠もここ数年はみなが心から楽しむようになっていた。
砦の内側には十分な備蓄と防御がされ、娯楽の用意もした。
領内に点在するそれぞれの居住区での備えも十分に確認はされ、冬期の移動手段に関する新たな試みも成功したと報告を受けている。
皆の憂いはほとんどないに等しい。ようやくここまできたのだなと思うと感慨深い。
父が率いる巡回部隊が王都へと続く幹線街道を検めに出掛けていったのは3ヶ月ほど前のこと。
そろそろ戻ってくる頃合いだ。
今年は例の移動手段を領内ギリギリまで敷設したため、いつもの冬籠前に行う検分行脚より確認の時間の分だけ多くの時間がかかっている。
継母の腹も限界まで膨らんでいる今、今度の出産こそ父には立ち会って欲しいものだ。
マリアンヌはそんなことを考えながら眼下に広がる収穫を終えた芋畑を眺めていた。
「お嬢様~、いつまでそんな危ない場所にいるんですかぁっ?落ちてしまいますよぉ!」
古い戦場遺跡の上からなら領内を広く見渡せる。そのため遺跡の上に立っていたが、足下はぐらつく龍石ばかりなので傍から見ていると大玉にのるサーカスの道化のようにリリーの目には映っている。
龍石は白く儚い色味に加えてところどころ穴も空いている見た目から、その頑丈さをよく知っている領民でも足場としては不安定に見えるのだ。
マリアンヌはわざとその龍石でできた遺跡の上で片足でたつ様子をリリーにみせつけた。
「お嬢様っ!!カイ様見てるんですよ!真似したらいけないんですからやめてください!!」
リリーのスカートの後ろから銀色の可愛い頭がのぞく。
その表情はここからはわからないがおそらくいつもの好奇心いっぱいの瞳でこちらを伺っているに違いない。
「カイ、鍛錬が終わるまではかあさまの真似はしちゃだめだからねっ、っと」
勢いをつけて目の前の枯草広がる坂へと転がるように飛び降りた。その勢いのままリリーとカイルの元へ走り降りていく。
勢いそのままリリーの下からカイを抱き上げ高い高いと振り回した。
「お嬢様おやめください、危ないです!!!」
カイのこととなると殊更心配性になるリリーが私たちの周りでオロオロとしている。
その様子を目の端にとどめながらゆっくりと回転速度を落としカイを地面にそっとおろした。
父のいないカイのため、私はこうやって激しめの触れ合いも積極的に行っている。
「はぁぁ、かあさま、たのし、またして?」
「もちろんいいわよ、わたしの可愛いお芋ちゃん」
そう愛する息子に告げてあの人にそっくりの髪の毛と瞳を覆う瞼にキスをした。
日の位置から察するに夕方とよべる今の時刻はおそらくはまだ3時過ぎ。
日が傾くのも早くなったものだ。
収穫祭を終えた今、領民は十分な蓄えに安心している。
少し前までは不安しかなかった冬籠もここ数年はみなが心から楽しむようになっていた。
砦の内側には十分な備蓄と防御がされ、娯楽の用意もした。
領内に点在するそれぞれの居住区での備えも十分に確認はされ、冬期の移動手段に関する新たな試みも成功したと報告を受けている。
皆の憂いはほとんどないに等しい。ようやくここまできたのだなと思うと感慨深い。
父が率いる巡回部隊が王都へと続く幹線街道を検めに出掛けていったのは3ヶ月ほど前のこと。
そろそろ戻ってくる頃合いだ。
今年は例の移動手段を領内ギリギリまで敷設したため、いつもの冬籠前に行う検分行脚より確認の時間の分だけ多くの時間がかかっている。
継母の腹も限界まで膨らんでいる今、今度の出産こそ父には立ち会って欲しいものだ。
マリアンヌはそんなことを考えながら眼下に広がる収穫を終えた芋畑を眺めていた。
「お嬢様~、いつまでそんな危ない場所にいるんですかぁっ?落ちてしまいますよぉ!」
古い戦場遺跡の上からなら領内を広く見渡せる。そのため遺跡の上に立っていたが、足下はぐらつく龍石ばかりなので傍から見ていると大玉にのるサーカスの道化のようにリリーの目には映っている。
龍石は白く儚い色味に加えてところどころ穴も空いている見た目から、その頑丈さをよく知っている領民でも足場としては不安定に見えるのだ。
マリアンヌはわざとその龍石でできた遺跡の上で片足でたつ様子をリリーにみせつけた。
「お嬢様っ!!カイ様見てるんですよ!真似したらいけないんですからやめてください!!」
リリーのスカートの後ろから銀色の可愛い頭がのぞく。
その表情はここからはわからないがおそらくいつもの好奇心いっぱいの瞳でこちらを伺っているに違いない。
「カイ、鍛錬が終わるまではかあさまの真似はしちゃだめだからねっ、っと」
勢いをつけて目の前の枯草広がる坂へと転がるように飛び降りた。その勢いのままリリーとカイルの元へ走り降りていく。
勢いそのままリリーの下からカイを抱き上げ高い高いと振り回した。
「お嬢様おやめください、危ないです!!!」
カイのこととなると殊更心配性になるリリーが私たちの周りでオロオロとしている。
その様子を目の端にとどめながらゆっくりと回転速度を落としカイを地面にそっとおろした。
父のいないカイのため、私はこうやって激しめの触れ合いも積極的に行っている。
「はぁぁ、かあさま、たのし、またして?」
「もちろんいいわよ、わたしの可愛いお芋ちゃん」
そう愛する息子に告げてあの人にそっくりの髪の毛と瞳を覆う瞼にキスをした。
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